2016年4月21日木曜日

ハトカンさんを囲むランチ

ハトカンさん93歳。
私がオーケストラに入団した時のコンサートマスターだった。
先日電話があって懐かしい声が聞えた。
声の張りも口調も記憶力も全てが変わりなく、驚くほどの健在ぶりを示している。
つい先頃まで沖縄に在住、奥様を亡くされて東京に戻った。
沖縄時代、私たちが遊びに行ったことがあって、その時一緒だったメンバーに声をかけて集まった。

ハトカンさんは足が悪くて歩行困難というので、なるべくお宅の近くのホテルでランチをすることにした。

当日は風も弱く暖かい絶好の散歩日和。
待ち合わせ場所のレストランに近づくと、外の日の射す場所に後ろ向きに座っている白髪頭が見える。
「あれ鳩山さんじゃない?」
その日は暖かいと言うよりも暑い位の、けっこうな日差し。
帽子も被らずこんなところで、熱中症になったら大変なのに。

ほとんどお変わりなく、足以外のどこも私よりずっと達者なのには驚かされた。
記憶力の確かなこと、人の名前や年代などスラスラと出て来る。
最近は住んでいるマンションのコミュ二ティー・ルームでコンサートをしていることなど、楽しそうに話す。
なんでもお世話をしてくれる人がいて、それが元総理大臣の事務所で働いていた有能なひとらしく、マンションの管理人も理解のある人で実現したコンサートらしい。

それやこれ、そしてアメリカでの修業時代、アメリカでもコンサートマスターとして仕事をしていると、ボストンでシャルル・ミュンシュに声をかけられた事など、次々と話しは尽きない。
あっという間の2時間が過ぎた。

足以外のどこも全く90代とは思えない、いやいや、私たちの誰よりもお若い。
私などは、えーっと、あの、ほら、あれ、と言う意味不明な会話が増えたのに、鳩山さんは「**の時は西暦の何年?」なんて訊くから、慌てふためいて計算することになる。

食事が終って皆名残惜しそうに帰って行った。
私はハトカンさんに付き合って、ホテルに隣接したデパートの楽器売り場に行った。
マンションのコンサートで使うキーボードを選びたいと言うので。
楽器店でスタッフと相談している合間、ハトカンさんは展示品のキーボードでスラスラと弾き始めた。
指は驚異的に回る。

「鳩山さん、ピアノもお上手」と言うと「僕はね、2歳の時からオルガン弾いていたんだよ」
神童は出発点が違う。

そのうちマンションのコンサートを聴きにきてくれと言う。
人生の最後の最後まで音楽と共に過ごし、活き活きと生活を自ら切り開く、人生の達人。
音量調節の出来るキーボードがあれば、マンションの自分の部屋で夜中まで弾けると嬉しそうだった。

映画、小津監督「東京物語」でヴァイオリンソロを弾いているのがハトカンさんです。
youtubeで聴けます。
小津安二郎映画音楽集 東京物語で検索。
「東京物語音楽」こちらをクリックして下さい。















4 件のコメント:

  1. 神童転じて神爺となる。

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  2. 神爺るものは救われる。

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  3. 鳩山様がお元気とのこと、よかったです。 
    落ち着いたら改めて、鳩山さんに会いに伺いたいと思っています。 
    ありがとうございます。

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  4. 鳩山さんはnyarcilさまと沖縄でお目にかかったことを、懐かしげに話していました。記憶力の良さにはびっくりです。

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