ルーテル市ヶ谷ホール
ヴァイオリン ロロンス・カヤレイ ピアノ 菊地裕介
シマノフスキ:ソナタニ短調 作品9
フォーレ:ソナタ第2番ホ短調 作品108
フランク:ソナタ イ長調
堂々たる体格の彼女がヴァイオリンを構えると、まるで分数ヴァイオリンを弾いているように見える。
豊かで正統的な音楽性、素晴らしいボウイングから生まれる微塵も妥協を許さない音。
正確な音程。
ヴァイオリン演奏のお手本のような演奏だった。
使用楽器はカール・フレッシュが愛用した1742年製のピエトロ・グァルネリ。
味があると称して様々な工夫をこらす演奏もあるけれど、彼女の場合、真っ向から楽譜に立ち向かっていくという印象を受ける。
特にフランクのソナタはフランス音楽というよりも、ドイツ音楽のような構成のがっちりした頭脳的な演奏だった。
実は私はフォーレのソナタは1番と勘違いして聴きに行った。
今日のプログラムは2番だった。
1番の冒頭の、ピアノが湧き上がってくるような部分がくると思っていたら全く別の旋律だったから、あ、1番ではないとびっくり。
びっくりしてそのまま熟睡してしまったので、4楽章しか聴いていない。
迫力のあるしかも美しい音で終始引き付けられた。
今回彼女の演奏を聴いて、反省しきり。
なにかと色を付けたくなるフランス音楽、こんな風に楽譜をきちんと再現することこそが演奏家の使命ではないかと。
大柄な彼女は、G線の高いポジションもなんなく簡単に指が届く。
これは本当に羨ましい。
腕の短い私はG戦のハイポジションは非常に無理があって、音程の安定にも欠ける。
楽々と悠然と弾いているので、ヴァイオリンって本当はすごく易しい楽器ではないかと思わせてしまう。
共鳴体である体の大きさも響きに関係あると思う。
私の豊かなところはお腹だけ。
お腹の上に置いて弾く演奏法を発明しないといけない。
ピアニストは今大変活躍している菊地裕介さん。
お名前は存じ上げていたけれど、聴くのは初めて。
素晴らしく達者だけれど、決してヴァイオリンの邪魔をしない。
それでいて、主張がはっきりしているバランスの良さ。
お見事でした。
会場に行く前に市ヶ谷駅近くで腹ごしらえ。
ウニとイクラの冷製パスタ。
初夏の気持ちの良い夕方に良く似合うメニュー。
一緒に行ったのはピアニストのSさん。
今年秋の演奏会の会場の抽選に行ってもらって、彼女は頑張って最高のクジを引き当ててくれた。
なんだか運が強いなあ。
しかも最初のクジはちょっと残念な順番だったのに、会場側のミスがあってもう一度やり直しの時に幸運をつかんだらしい。
話を聞いて唸った。
私ならへなへなと運を掴みそこなうと思うのに、さすがに冷静で意志が強い彼女だけのことはあると思った。
役立たずの猫には荷が重かった。
ニャーニャー言ってないで練習しようと、今日のカヤレイさんの演奏を聴いて決意を新たにしたけれど、たぶん3日坊主で終わりそうな。
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