2017年11月16日木曜日

最後だ詐欺

今から13年前、私はオペラシティーのリサイタルホールで「最後の」コンサートを開いた。
そのときには本当にこれが最後だと思った。
その後、やむを得ない事情で猛烈に仕事をして、気がついたらあれから13年・・・
ここから綾小路きみまろの口調で・・・シミは増え白髪も生えて生き残り。
その間新しい楽器にご縁があって、音の幅が広がった。
楽器が私を育ててくれたから、もう一段階楽器のレベルアップをしたいけれど、経済的に無理なので我慢している。

今年また「最後の」コンサート。
この度は練習もかなり辛かったから、もう懲りたと言いたいところだが、しかし雀百までなんとやら。
どうしても楽器が手放せないに違いない。
赤い靴を履いてしまった女の子が死ぬまで踊り続ける「赤い靴」という映画があった。
モイラ・シェアラ主演。
長い階段の下で、彼女がブルーのドレスを来て佇む姿が鮮明に思い出される。
見たのはほとんど子供の時だけど。

その頃のことは良く覚えているのに、最近は数秒前のことすら覚えていない。
これは自己防衛のためかもしれない。
これ以上新しい知識は入れるなよという、拒否反応かも。

私は20年ほど前に放送大学を卒業した。
音大付属高校から音大に進んだので、あまりにも一般的な知識がない。
それで普通の大学で勉強してみようと思ったので。
放送大学は入るのは簡単、でも授業内容は難しい。
仕事を最優先にゆっくりと履修していったので、卒業まで10年かかったけれど、お陰で少し音楽以外の本も読めるようになった。
今、仕事も終え、好きなヴァイオリンだけ弾く生活になったので、今度は大学院にいきたくなった。
大学は2つ卒業したので、あとは大学院に行くしかないでしょう。
大学院でなにを学ぶかということはまだ決めていないけれど、なんであっても私にとってはとても新鮮なのだ。
本当に世間知らずで子供がそのまま年取ったみたいなところがあって、なんでも自分の知らない分野へ分け入ってみたい。

知識を詰め込むのが悪だと言うような風潮が一時期あった。
自分の頭で考えろとか。
でも考えるだけで知識がなかったら、道標のない砂漠を歩くようなもの。
知識は頭が柔らかいうちにできるだけ詰め込むのがよろしい。
ところが、ゆとり教育なんていう馬鹿なことを考えたバカ(失礼!)がいて、可哀想に、その頃私の生徒なども受験のために塾に通う羽目になってしまった。
学校でちゃんと教えていれば、塾に行く時間をヴァイオリンの練習に当てられるのに。

で、これから大学院へ行っても、昨日勉強したことがなんだったか思い出せないなんていう事態が待ち構えていることを薄々感じている。
要するに無駄なんじゃないかと。
ハリー・ポッターの原書購読が5巻まで完了。
残った6.7巻を今年の12月から再開しようと思っているので、そちらに全精力を注がないと完読する前にボケるか死ぬかしてしまう。
だから、そちらに専念すれば良いのだが、気が多くて一つの事を突き詰められない。
あちらに手を出し、こちらを齧り。
読みかけの本が積みあげられている。

入院でもすれば読めるのになあと、不穏なことを考える。
でも本当に入院するような病気だと、本なんか読んでいられないことは知っている。
以前1ヶ月半の入院生活をした。
入院と決まった時、しめた!これで本が読める、と思った。
家から本を持ってきて枕元に積み上げて、読むつもりだった。
でも病気のときはしんどくて読むどころではなく、結局落語を聴いていた。
イヤホンで聴いているから、一人でニヤニヤしている気味の悪い患者になってしまった。
入院となってしめた!と思うくらいだから、たいていのことでは落ち込まないのが私の強み。
これは他人から見れば「変な人」
いいのよ、変な人と思われても。

最後と言えば生き残った1匹の猫、コチャ。
タマサブロウ、モヤ、ナツメが立て続けに天国へ旅立ってから、我が世の春を謳歌している。
こんなに表情豊かな子だとは思わなかったのに、今では生き生きと遊んでいる。
人も動物も自分の置かれた状況によって、これほど変わるのかという見本。
猫は基本的に単独行動を好むので、他の猫との軋轢がある多頭飼いは可哀想なのかもしれない。
最後の1匹になって幸せになったコチャ。
他の猫に遠慮して、随分我慢をしていたものと思われる。

演奏会の疲れがとれたら、又なにか計画したくなると思う。
これが「最後」とか言って。
オオカミ少年みたいに誰も信用しなくなって、聴きにきてくれなくなったら、本当にお終い。
でも友人知人たちはみなさん優しいから、倒れるまで見届けてくれそうな気がする。

最後と言えば、落語にイタチ最後ベエという名前がでてくるけれど・・・ああ、私の話は最後にかならず下品になるのが特徴です。
でもイタチなら最後ベエではなくて最後っp・・・これこれ、それ以上はやめなさい。





















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