2020年11月16日月曜日

コチャの秘密

コチャは推定年齢19才。拾われて不妊手術をしたのが18年前だから、少なくともその数ヶ月前に生まれているわけで。近所を散歩していたときに目の前を横切った若猫、いきなり私の足元にゴロンと倒れ込んできた。仰天して慌てて家に連れ帰り、その日から飼い猫になった。

当時うちでは3~4匹の猫が常時いる環境で、時には5匹超え、最後に拾われた彼女はいつもミソッカス、唯一の雄猫の玉三郎が私にベッタリと張り付き、すごい噛み癖のあるジャコと陽気で人懐こいナツメと賢く優しいモヤの3匹のメス猫もいたのに誰ともつるむことなく、孤独で気難しく一人押し入れに隠れて生活してきた。目立たず騒がず孤高の猫の立場を貫いていたので、私もあまり干渉しないでいた。

数匹の猫はほとんど同じ時期に拾ったものだから、最近次々と時期を同じくして死んでしまった。そして最後に残ったのがコチャだった。それまでほとんど構ってもらえなかったから接し方がわからない。で、私は今まで構わなかった分、思い切りかわいがった。最初は戸惑っていて抱っこしても体を固くして突っ張っていたのが、だんだん力が抜けてきた。今では私の姿が見えないと探し回って鳴く。家中と言っても全く広くないから私がいるのは気配でわかりそうなのに、傍に行ってやらないといつまでも呼んでいる。目が少し悪くなっているかもしれない。

そのコチャが突然痙攣を起こしたのが数日前の午前2時ころ。いままで飼った猫たちは全くそういうことはなかったのでびっくり仰天して、夜間の救急病院へ連れて行った。検査の結果はどこと言って悪いところはない。しかも病院についたときには発作はすでに治まっていていつもの鳴き声で抗議している。獣医師が言うには、内臓はどこと言って問題はないけれど、脳腫瘍や脳炎の疑いがあるから検査入院させましょう。そこまでの検査ですでに高額な治療費がかかっていたので、お断りした。猫にそれほど高い治療費をかける気はない。自分にだってかける気はない。

コチャはというともう普段と変わらず早く帰ろうと私を急かす。そうだね帰ろうね。

家に帰ったコチャはむしゃむしゃと餌を食べ、いつもの3倍位の食欲で出すもの全部平らげた。はてな?いつもこんなに食べないのに・・・月曜日になるのを待ってかかりつけの動物病院へ相談に行った。

そこは古くからの知り合いの病院で、先々代の先生からうちの猫たちはお世話になっている。おじいちゃん先生、長男先生と次男先生、今は長男先生の息子さんとそのお嫁さん先生。いったい何匹の猫がここで治療を受けたか数えられないほどだった。

痙攣を起こして救急病院へ行ったことを話し、もらってきたデータを見せると「別に悪いとこないよね、あっ、膀胱穿刺してる」と先生。おしっこの検査をするために採取したらしいけど、押せば出るのにとも言う。痛かったでしょうねかわいそうに。これでいくらかかったの?治療費の金額を聞いて笑っていた。今度からここへ行きなさいと渡されたパンフレットは以前にも紹介された夜間動物病院。今回そこへ行かなかったのは、コチャが痙攣しているのを見て命に関わると思ったから。一刻も早く治療をしてもらうためだった。

痙攣している時間を訊かれたから5分くらいと言ったら笑われた。そんなわけないよ、せいぜい30秒くらいでしょう。でも私にはとても長い時間に思えたのだ。5分も続いたら死んじゃうよ・・・だそうで。

その次の日にはコチャはいつもよりずっとたくさん餌を欲しがった。いつもは食が細くレトルトの少量の餌も半分残すほど。それをぺろりと3個平らげカリカリもかなりの量を食べた。それはやはり痙攣して体力をたくさん使ったからで、痙攣が終わってから床に置くとぐるぐる回るのは目が回って一時的に平衡感覚が損なわれるからだそうなのだ。回転するのは平衡感覚を取り戻すためだと。

脳波の検査やMRI検査などは、次にもし発作が起きてからでいいでしょう。今元気ならそれほど心配はいらないと言われて胸をなでおろした。

今まで発作を起こしたことはなかったの?と訊かれ返答に詰まった。そういえばコチャのことはほとんどわかっていなかった。いつも押入れに隠れていたし、他の猫は必ず部屋のどこかにいて私の目が届いていたのに、彼女だけはたまに餌を食べに出てくるだけ。密かに私の目の届かないところで痙攣していたかもしれないと考えると、不憫な思いがこみ上げる。最初の出会いがそもそも、私の目の前でゴロンと地面にひっくり返ったのだって、もしかしたらそういうことだったのかもしれない。

彼女は私の愛情を独り占めしている今が一番幸せなのかもしれない。人間で言えば今92歳だそうで今まで目をかけられなかった分、目一杯可愛がってあげよう。長いこと押入れの中で一体何を考えていたのかしら。体調不良になると押し入れに隠れてしまうので、よくわからなかった。コチャ!はっきりものを言いなさい。気分が悪かったり寂しかったら玉三郎みたいにうるさくつきまとっていいから。







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