2016年11月8日火曜日

東北の秋

チェロフェスタは出演者が溢れかえって、時間オーバー。
私たちの出る幕はなく、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲を一楽章だけ弾いて終わりにした。
あまりにも長時間の会だったので、もはや集中力も途切れがちだった。
時間が足りなくなって、新幹線に乗るために途中で演奏放棄して大慌てで帰る人もいる。
後片付けに走り回る人たちをしり目に、とっとと会場を後にした3人組。
水沢から一ノ関に向かう。
6時半ころ一ノ関のホテルにチェックインして、ホテル裏の居酒屋へ向かった。

一ノ関駅周辺は人影もまばら、冷たい夜気が迫ってくる。
一昨日、出かける前に見た天気予報では仙台の気温20度。
初めはダウンジャケットを着て出るつもりで用意してあったのに、急遽薄めのコートに変えてしまった。
その薄いコートの下はブラウス一枚。
芯から冷えてしまった。
ホテル裏の居酒屋のドアを開けると、思いがけないほど大勢の人がいる。
中は温かい。
お店のご主人はどこかで忙しく働いているらしく、姿が見えないのでどうしようかとまごついていたら、カウンターの常連さんらしい女性が、入っていいですよ、好きなところにお座りくださいと、店主のようなことを言う。
そのうち店主が現れて、お世辞もないけれど不愛想でもなく、感じの良いおやじさん。

さっそくお刺身を頼みビールで乾杯。
そこから一気に次の日からの遊びモードに入った。
料理は味も良く素朴で、ご主人の人柄の良さが店中を穏やかに温かくしている。
いいなあ、こんな店。
さっきのカウンターの女性が、私たちの注文を取り次いでくれたり、面倒をみてくれた。

ご機嫌でホテルに帰り、それぞれの部屋からカップを持ち寄って一部屋に集まってコーヒータイム。
確かに女三人よれば姦しい。

次の朝は、明るい日差しが溢れ風もなく、絶好の観光日和。
レンタカーを借りに行くと、受付の女性が親切に案内してくれた。
その人のお勧めで、猊鼻渓舘の森アーク牧場に行くことにした。
猊鼻渓は、数年前高校のクラス会で川下りを楽しんだ所。
とても良かったので、今回、他の人にも楽しんでもらおうと思ったけれど、私たちはいつも楽器を持っているので、それをどうするかが悩みの種だった。
車の中に楽器をおいていくのは、温度の上昇や盗難などが心配でできない。
かと言って、ボートにヴァイオリンを抱えていくのはもっと危険。
うっかりチャポンと水に落としたらと、想像するだに恐ろしい。
チケット売り場で楽器は預かりますよと言われたけれど、それはとても心配。
結局、川下りは諦めて、近くの店で和紙の紙漉き体験をすることにした。

楮と三椏の枝の皮をはいで細かくしたものに、さらに熱を加えて和紙の原料にするらしい。
大きなバケツに入っているドロッとした液体を柄杓で掬って、細かい網目の平らな木枠の上にまんべんなく流し込む。
水が下に落ち繊維が残って、何回もかけ流していると、膜が全体に広がっていく。
ある程度の厚みが出たところで、次の段階は色付け。
色のついた液体を好きなようにかけて、そこに楓の葉やコスモスの花などを載せて、もう一度白い液体で上から固めて出来上がり。
これを天日干しして出来上がったものを、郵送してくれる。
約一週間ほどで届くというので、楽しみにしている。
川下りは残念だったけれど、自分の手で漉いた和紙がどんなふうに出来上がってくるかワクワクする。

そこからかなりの距離の山道を走って、館の森方面へ。
お目当てはファームでのランチ。
紅葉はもう終わりに近く、時折、真っ赤に色付いた葉が見えるだけ。
それが青空に映えて、思わず歓声が上がるほどきれい。
本当にたどり着くのだろうかと心配になったころ、美しい丘陵地帯にある牧場が出現した。
駐車場の入り口に一人の女性が立っていて、パンフレット片手に滔々と説明してくれた。
休日ならともかく、ウイークデーには来る人も少ないので、やっと来た客と話すのが嬉しいようにみえる。
広い敷地には、こぎれいな山小屋風の食堂や売店が立ち並んでいる。

ランチは豚肉のハーブ焼やカレーライス、トロトロに柔らかい三枚肉の角煮など、とても美味しかった。
豚や羊などの他にハーブティーもそこで栽培しているので、葉の量も自分でたっぷり淹れられるので、特別美味しかった。
レストランの庭の前に羊の放牧場があって、緩やかに下る牧草地に顔の黒いかわいらしい羊さんたちも、ちょうどランチタイム。
美味しそうに干し草を食べていた。

以前イギリスのコツウォルズに行ったときに見たような、なだらかな景色が眼下に広がっている。
日本の東北の景色は、イギリスより繊細で優しい。

すっかりお腹もいっぱいになって、美味しそうな加工肉やパンなどの売り場でしばらくお土産探し。
試食したウインナーソーセージが、とても美味しい。
パンも野菜も美味しそうで、あれもこれも欲しかったけれど、荷物が増えるので断念した。

一ノ関へ戻るルートは西に向かうので、夕日が眩しい。
カーブを曲がったとたん明るい陽光が目に飛び込んできたりすると、一瞬目が眩む。
これには参った。
サングラスの用意がなく、帽子のひさしで陽をよける。

夕方の新幹線で東京へ帰った。
さすがに疲れが出て、私は爆睡。

私たち女性3人、世間の人はもう悠々自適で毎日のんびり過ごしている年だというのに、重たいキャリーバッグを引きずってあちこち飛び回っていられるのは、全国の音楽仲間のおかげ。
良く食べ良く飲み良く笑い、楽しんで楽器を弾く。
これが生きるパワーとなっている。
足が痛いの記憶が飛ぶのとか言いながら、東北地方にまで徘徊しておりますが、お許しを。







































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