2017年7月1日土曜日

テノール

この話、私の面白い体験なので、ここに何回も書いたし、人にも度々話したから又か!と思う人もいるかもしれないけれど、もう一度。

昨日の投稿でコンサートが終わって急いで帰るのは・・・で連想した。

ドレスデン歌劇場が来日して横浜でも「魔笛」が聴けるというので、楽しみにして出かけた。
まだみなとみらい線ができない頃というか、まだ東西ドイツを分断する壁があったころのおはなし。

オペラを堪能してプログラムを胸に抱きかかえて、桜木町の駅まで歩き始めた。
横浜県民ホールは海のそばで、コンサートの後はいつも歩いた。
横浜県民ホールの脇にバスが何台も停まっていて、そこに早く出番の終わった人たちが乗り込んでいる。
コーラスの人たちなどは衣装も簡単で、カーテンコールが終われば早めに帰り支度ができる。
手を振ると向うからも手を振ってくれる。
県民ホールのすぐ傍にシルクセンターがある。
シルクセンターを通り過ぎ信号待ちをしていると、血相を変えた外国人がこちらめがけて走ってきた。
私の胸に抱えたオペラのプログラムを目ざとく見つけたらしい。

「シルクセンター・・シルクセンター」と言うから「シルクセンターはそこの信号わたって」とかなんとかまずい英語で教えて、ああ、そうか、この人オペラの出演者でバスに乗り遅れそうなんだと解釈。
早めに終わったからバスの出発までにそのへんをぶらついて、さて帰ろうとしたら方角がわからない。
バスが出てしまったら亡命したと疑われてしまう。
亡命でなくても迷子になったら、言葉のわからない日本でどうしようと急いでいるらしい。
「そうか、バス(に乗るの)ね?」思わず日本語で。
すると「ノーノ―、テノール、テノール」
はあ?テノールって?
ぽかんとしながらシルクセンターめがけて走っていく男性を見送った。

しばらく考えて、彼は私の言った「バス」と言う言葉に反応したのだと思い当たって、大笑いした。
私が、あなたはバス歌手なのね?と言ったとらしいと彼は思った(らしい)
自分はテノール歌手であると言ったのだ。
もちろん彼にとっては笑い事ではなく、そんなことを言っているひまはないのに、なんでこんなことを訊くのかと思ったことだろう。

後でベルリンドイツオペラの打楽器奏者に「バスってドイツ語で何というの?」と訊いたら、「ブス」と答えた。
なるほど、BUSはドイツ語読みでブス。
答えた人は、私の顔を見ていたから思わず口に出てしまったということも考えられる。
真意はその後確かめてはいないけれど。












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