ザルツブルグ出身のハーゲン弦楽四重奏団は、元々は4人兄弟で結成された。
そのうちの一人がソロ活動に専念するために抜けて、今はライナー・シュミットが第二ヴァイオリンを受け持っている。
プログラムは
ハイドン「日の出」
ベートーヴェン「セリオーソ」
シューベルト「ロザムンデ」 と、大変なサービス精神。
これだけ揃えると、たいてい題名につられて入場者が増える。
こんなに定食みたいなプログラムでなく、1曲くらいは小難しい曲を入れてもよかったのにと思うけれど、基本中の基本のハイドンの素晴らしさに圧倒されて、せっかくの転寝タイムがなくなった。
このプログラムは演奏する側からいえば、大変難しいのではと思う。
長さの関係からか「ロザムンデ」を最後にもってきたので、真ん中の「セリオーソ」の迫力の方が勝ってしまった。
それでも夜のコンサートでこれから眠るのだから、穏やかにシューベルトが最後でもいいかなと聞きほれた。
4本の楽器は何れもストラディバリウス作品の「パガニーニ」だそうで、日本財団からの貸し出し。
ああ、うらやましい、私にも誰か貸してくれないかな。
ハイドンの日の出の冒頭から、完璧な和音。
ヨーロッパの響きは彼らの生まれ育った土地の中に息付いているので、日本人の感覚ではなかなか出せない。
音程は合っているのだけれど、根底にズシリと来る和音にならない・・と思っていた。
ところが最近、ある地方のコンサートで弾いている日本の若者の弦楽四重奏団の音を聞いて、びっくりした。
この人たちの音はヨーロッパ人の音に近い。
日本人はハモってはいても質感が違うというか、単に音程の良しあしでないヨーロッパ特有の音に欠けていると常々思っていた。
日本人の若者は、すでにその感覚を身に着け始めている。
留学経験とか教師の人種とかもあって、最近の若者は同じような響きが出せる。
最初の曲で眠れなかったので、今日は起きて聴くことにした。
いつもはシューベルトで目が覚めているのは稀なのに。
「セリオーソ」は迫力があって、特に面白かった。
会場は武蔵野市民文化会館小ホール
この会場では度々コンサートを聴いた。
以前は古い内装だったけれど、修復した後初めて行ったら椅子が良くなって、客席数を少し減らし床の傾斜を少し急にしたという。
そのため、後ろの席でも舞台がよく見えるようになった。
三鷹駅や吉祥寺駅から遠くて、たいていの人はバスを利用する。
プログラムが終わると拍手もそこそこに帰る人が目立つのは、そのせいらしい。
バスに早く乗りたい、混んだバスには乗りたくないから真っ先にバス停に並ぼうとか。
気持ちはわかるけど、もう少し余韻を楽しんで散歩しながら帰るのもいいのではないかと思う。
武蔵野市は緑が多く町がきれいだから、家族、友人同士やカップルならゆっくりと感想を言い合いながら歩くのも乙なもの。
弦楽四重奏ほど完璧なアンサンブルはない。
この響きを聴いてすぐに町の喧騒に入っていくのでは寂しい。
私は横浜の県民ホールでのコンサートが終わると、たいてい桜木町までバスに乗らず歩いて帰った。
今は東急線の駅がそばにできたけれど、以前は桜木町がJRと東急の最寄り駅だった。
横浜は特に好きな街だから、途中でアイスクリームを食べたリ、潮風を感じながらぶらぶら歩いて、コンサートの音をなるべく長く耳に保つ。
オペラならアリアを口ずさんだり。
終演後の楽しみも音楽のうち。
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