2017年7月12日水曜日

樫本大進  アレッシオ・バックス

東京オペラシティコンサートホール

モーツァルト ソナタト長調
ブラームス  ソナタ第1番ト長調「雨の歌」
シマノフスキ 神話Op.30
グリーグ   ソナタ第3番ハ短調

樫本大進を初めて生で聴いたのは、スマトラ沖地震チャリティーコンサートのときだった。
各オーケストラからの選抜メンバーと小澤征爾、飯守泰次郎などの錚々たる指揮者陣とソリストたちの中に、まだ若かった彼がいた。
私はすでにオーケストラに所属していないフリーの野良猫だったけれど、なんとなくいつもそういう場面でのお呼びがあって、なぜかステージにいるというめぐり合わせでオーケストラの演奏に参加していた。

会場は日比谷の東京フォーラム。
会場の入り口がわからないでウロウロしていたら「nekotamaさんですよね、お久しぶりです」
丸顔の男性がニコニコしている。
じっと顔を見ているうちにだんだんかつての面影が見えてきた。
N響の木管楽器奏者のNさんだった。
一緒に入り口を探して無事会場入り。
やれやれ。
会場に着くと懐かしい顔ぶれがそこかしこで挨拶を交わしている。

そのときに樫本少年(?)が弾いたのが「タイスの瞑想曲」だったと記憶しているが、最近脳が怪しいので曲目はさておいて・・・
それまで録音などで聴いてはいたけれど実際に聴くと、ゆったりとスケールの大きいバランスのとれた演奏。
すでに大家の風格があった。
ほとほと感心した。
日本人は弦楽器の演奏に向いているのかもしれない。
有名な国際コンクールで上位入賞、優勝する人が多い。
彼もその一人だけれど、なにか持っている風が違うといった感じだった。
とらわれない、奇をてらわない、気負わない、心にどっしりとした根が生えている。

今日は東京オペラシティー、コンサートホールの3階正面からの鑑賞。
最初のモーツアルトは、蕩けるような音から始まった。
ピアノとの掛け合いが、まるでオペラの二重唱を聴いているようで、得も言われず美しい。
「フィガロ」の伯爵夫人とスザンナの二重唱を思わせるような、ソプラノの声の響きのように聞こえる。
これは参った!
おいおい、これはオペラだぜ!
ブラームスは雨の歌だから、この季節にピッタリ?
シマノフスキーの「神話」はキラキラした表現やミュート、ハーモニックスなどで多様な色彩的なおもしろさがあって、これも弾いてみたい曲になった。
私がこの曲を今回初めて聴いたのは、勉強不足といえる。
まだまだ知らない曲が多い。

終曲はグリーグ「ソナタ3番」
ダイナミックで少しエキゾチックで、北欧の空気が伝わるような。
アンコールはグルック「精霊の踊り」
あまりにも美しい音で、最後の余韻が消えるまで会場は静まりかえっていた。

樫本氏の演奏は随分よく聴いているけれど、今日の音は格別だった。
調弦を何回もしていたのは梅雨時のせいだったか、日本の今時の気候は弦楽器には大敵だけれど、前回聴いたサントリーホールの時よりもコンディションは良かったような気がする。
会場が良かったかもしれないし、私の座席の位置も良かったかもしれない。
ピアノもヴァイオリンも非常に透明感があって素晴らしかった。








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