ロンドンアンサンブル小田原公演の下稽古。
ロンドンから2日前に到着したフルートのリチャードと奥さんのピアニストの美智子さんが、まず顔を見せた。
すぐにヴァイオリンの志帆さんも交えて、チェロのトーマスなしで軽く下稽古・・・のはずなのに、始めるとカリカリと頭にきやすい我々は、初めから夢中になってしまう。
美智子さん夫妻はテンポのことで揉め、私は「喧嘩はおうちに帰ってからやって」と仲裁に入るフリして、煽り立てる。
私が夕方から仕事に出かけるので、時間は正味3時間半。
お茶も飲まず、積もる話もせず、ひたすら弾き続けた。
志帆さんは先日関東学院大学の定期演奏会で、チャイコフスキーのソロを弾いたばかり。
あまり準備が出来ていないと言いながら、持ってきた昼食用のお弁当も食べずに弾いている。
美智子さんは体調不良で、ヒースロー空港に行くタクシーの中で酔ってしまったそうで、少し痩せたようだ。
けれど、夫婦喧嘩が出来るようだし、リチャードの意見を強引にねじ伏せる時には、パワー全開。
チェロがいないからバランスが分からないけれど、やはり室内楽は面白うございます。
とにかく指揮者がいないのが良い。
指揮者が居ると我々楽隊は身動きとれない。
もう少しここをゆっくりなんて思っても、指揮者に強引に棒を振られたら、絶対服従する。
でないと、オーケストラは成り立たない。
昔ホルンの名手、ザイフェルトという人がいた。
指揮者のカラヤンと彼の意見が衝突して、カラヤンが「俺はカラヤンだ」と言ったら「俺はザイフェルトだ」と言い返した伝説がある。
世界的に有名な彼の演奏を聴いたのは、一橋大学の講堂だった。
天窓の辺りに鳩が飛んでいて、ホルンの、のどかな響きを背景に、まさに一幅の絵画の中に溶け込んだようで、実に良いコンサートだった。
ちなみにチェンバロは小林道夫せんせい。
記憶が曖昧で、チェンバロではなくてピアノだったかもしれない。
こちらは時間に追われて悠長にしていられない。
モーツアルト、ベートーヴェンはなんとかなるけれど、エルガー「エニグマ」は私は初めてお目にかかるので、十分な下準備はしたはず。
なのに、実際合わせてみると最後の方は置いてけぼり。
どんどんテンポが上がって行く。
そこは古狸だから、要所要所で見繕って最後はピタリと終る。
しかし、途中がきちんと分かっていないことに気がついた。
今日は初めから譜面を見直してチェックする。
やっとこれなら次の練習ではついていけるかも、というところまで漕ぎ着けた。
私が出かける時間が来ても全部の練習が終らなく、志帆さんのソロ「ポギーとベス」の練習が残ってしまった。
自宅の鍵を美智子さんに預けて、私は一足お先に仕事に飛んで行った。
全く休憩無しの3時間半、ヴィオラを弾き続けたので、今朝は少々寝坊をした。
次の練習は1週間先で、チェロのトーマスが来るから、もう少し楽に出来ると思う。
うちのレッスン室はまあまあの広さがあるけれど、トーマスが来ると突然小さな部屋になってしまって、人がひしめき合う感じになる。
楽器も人も大きい。音も大きい。
日本のチェリストも上手いけれど、トーマスの音を聴くと全部吹き飛んでしまいそうな気がする。
さて、小田原公演の宣伝です。
12月15日(火)18時開演 小田原市民会館小ホール
モーツアルト「フルート四重奏曲 第4番 イ長調 K.298」
ドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 作品104 第1楽章」
ベートーヴェン「ピアノ四重奏曲 変ホ長調 WoO36 第1番」
作曲者不明尺八 古典本曲「手向け」
ガーシュイン「ポギーとベス」ハイフェッツ編
エルガー「エニグマ変奏曲作品36」
ドヴォルザークの伴奏とエルガーの原曲はオーケストラ。
それを5重奏曲に編曲した。
編曲と尺八演奏 リチャード・スタッグ
リチャードが尺八を持って袴姿で登場すると、観客席が喜ぶのがわかる。
このアンサンブルの、恒例の演しもの。