6人兄弟の長兄が、時々自宅で兄妹会を催してくれる。
長姉は先年亡くなったので、今日は近所の姉2人とその連れ合い、長兄など、全部で7人集まった。
兄は歳をとって耳が少し不自由になったほかは、いたって元気で益々狸に似てきた。
先日その兄に似ていると言われて憤慨した私は、あまり側に寄りたくないけれど、そこはご馳走に釣られてやはり参加してしまう。
サラダ、焼き鳥、鶏肉とチーズの揚げ物、そしておこわのお弁当が今日のメニュー。
義姉はとてもお料理上手で、以前はよくお煮染めなども作ってくれたのに、このところ腰を痛めてメニューが簡単になってきた。
かつては色とりどりのお料理が、テーブル狭しと並んだものだったが。
飲み物もビールをコップ一杯ずつ飲むと、皆気がすんでしまう。
一升瓶がずらりとカラになっていく、かつての家族会が嘘のよう。
長姉の連れ合いの義兄は、酔っぱらうと、私の姉に捧げるベッサメムーチョを高唱したものだったけれど、2人とももういなくなってしまった。
焼き鳥などをつまみながらしばらくビールをのんでいた。
それではご飯にしようかと、兄がお弁当を配り始めた。
「あれ、一つ足りない、nekotamaちゃんの分を買うの忘れた」
私はビールでお腹がくちくなっていたから、「え~っ」と思いながらも「いいよ」と応えると、姉が笑いながら「また~、ほら、末っ子いじりが始まった」
なーんだ、兄の冗談か。
いつもそうやって兄姉から長年、悪戯をされてきた。
子供のころから、ぬいぐるみより面白いとかなんとか言われ、からかわれ続けたから、こんないじけた人間になってしまったのだ。
石鹸をチーズと言って騙されて食べさせられたり、紐を蛇だと言って追いかけ回されたり。
1番のいじめは、私は拾われた子で、赤いおべべを着て橋の下で泣いていたから、拾ってきたというものだった。
嘘だということは分かっている。
わかっているけど、悲しくなってメソメソ泣き始めるとわーっと笑って、嘘嘘、冗談だからと言う。
それなら初めから言わなければいいのに。
しかもこともあろうか、母までその冗談に加担するのだった。
友達に訊くと、皆たいがいそう言われて育ったという。
今でも子供にそうやって言って、からかうのかしら。
ワケがわからん。
本当に悲しかったのだから。
それでも兄がいなかったら、私はヴァイオリンをやっていなかった。
兄は最近まで趣味でチェロをやっていたけれど、耳が遠くなって大きな楽器を運ぶのも辛くなったと言って、チェロはやめてしまった。
もっぱら絵を描いている。
今日の漬け物は、厳重な管理の下に漬けられた蕪とキュウリ。
兄はぬか床を作るところから初めて、温度、湿度、塩分濃度などを計算して漬けるのだそうだ。
だから、すごく美味しい。
この兄の妹がこの私。
まるっきり大雑把でいい加減で、同じ両親から産まれたとは思えない。
そうか、私は拾われた子だった。
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