2015年12月13日日曜日

ヴォルフガング・ダヴィッド & 梯 剛之 デュオ・リサイタル

ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ3番」
フォーレ「ヴァイオリン・ソナタ1番」
ベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ7番」

ヴォルフガングとは、たぶん両親の思いの込められた名前なのではないかと思う。
その後がアマデウスだったら言うこと無し。
虎ノ門 JTホール

梯さんは盲目のピアニスト。
ヴォルフガングさんはタケシが楽譜を見ないなら、自分も見ないと言って、すべて暗譜で弾く事にしたという。

協奏曲は暗譜で弾くけれど、ソナタの場合はたいていピアノもヴァイオリンも楽譜を見る。
室内楽だし、両者がメロディーを受け持ったり伴奏に回ったり合の手を入れたりするから、暗譜をするのは大変難しい。

練習を重ねると殆ど覚えてしまうかも知れないけれど、それでも細かいやりとりなどは暗譜ではとても怖いはず。
しかし、両者とも本当に隅々まで、ジグゾーパズルを埋め込んでいくように、音を繋げていく。
しかも音色に透明感があって、細かい動きがそれぞれしっかりと聞こえてくる。
素晴らしいコンサートだった。

剛之さんとは毎年八ヶ岳音楽祭でお目にかかる。
お父さんは元N響のヴィオリストで、毎年この音楽祭にヴィオラのトップとして参加している。
そして剛之さんもお父さんと一緒に八ヶ岳に来て、コンサートを開く。
宿泊先の食堂で出会うと、私たちと一緒にご飯を食べる。
彼は非常に冗談の好きな明るい青年なので、ステージで見る求道者のようなストイックな姿と重ね合わせるのが難しい。

一時期、苦悩に満ちた表現をすることがあって、心配になる位だった。
音の響きを模索して、一つ一つ、塗り込めるように弾くのを聴くと、胸が締め付けられる感じがした。
たぶん音を追究するあまり、出口が見付からないでもがいていたのだと思う。
それがあるときから急に軽やかになり、おや、と思ったことがあった。
その後は初心に返ったかのように、素朴で飾らない音楽を淡々と弾くようになって、それはそれですごく良かった。

そして今日は、見事に洗練されて花開くような華麗さも加わって、名手の域に達したようだ。
それはヴォルフガングさん(この名前が素敵なので彼をそう呼ばせてもらう)との共演のたまものではないかと思う。
同じ感性を持った2人の出会いが、見事な会話になって聞えてくる。
言葉では言い表せないので、是非この2人の演奏を聴いてみてください。
すぐれた室内楽奏者が集まると、楽器を越えた響きを作り出す。
今日はまさにそんなケースで、一緒に行ったピアニストのSさんと感激しながら帰ってきた。
彼女とのフォーレのソナタは、半分で棚上げとなっている。
来年は本気で弾こうと話し合ってきた。
それにしてもヴォルフガング・剛之の半分でも弾けるかどうか。

ヴォルフガングさんが、剛之さんの本来の明るい性格を、引き出してくれたのかもしれない。
お互いに得がたい相棒を見つけたようだ。
楽しげに楽器で対話する2人を見ていると、来年こそちゃんとヴァイオリンを練習しようと・・・ね。いつも思う。
























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