2015年9月7日月曜日

不思議

今日はトリオのステージリハーサル。
昨日合宿から帰って楽譜を探したら、私にしては珍しくきちんとファイルしてあって、そのまま持ち出せば良いようになっていた。
午前からの練習だから、急いで探すといけないので一昨日家を出る前に、そうして置いたのは我ながら出来すぎ。
私はなんて几帳面なんでしょう!

それでで昨日帰宅してから一応目を通しておこうと、ファイルを開くと、中から3冊の楽譜が出てきた。
出版社は違うけど、全部同じ曲。
はて、どの版を使っていたっけ?
最初に開いた楽譜はほぼまっさら。
練習の時に書き込んだ鉛筆の跡がない。
次の版もきれいなまま。
もう一枚はコピー譜で・・・これも殆ど使った形跡がない。

え!まさか、この曲は今まで何回弾いたかわからないくらいなので、楽譜が鉛筆の書き込みで埋まっているはず。
それなのに、こんなきれいな楽譜ばかり。
謎は深まるばかり。
たしかこのページには指使いが沢山書き込んであったのに、書き込みがない!

出発の時間は刻々と迫っていたので諦めて、書き込みのない楽譜を持って行くことにした。
自分の記憶がどんどん消されていくような焦燥感を覚える。
別に指使いが書いて無くても大丈夫なのだけれど、チェロと同じボウイングをしないといけないところが書いてないと、お互いに焦ってしまう。

ボウイングとは何かと質問されたことがあるので、説明すると
弦楽器は弓を往復させて演奏する。
弓の一番手元から先へ弾き下ろしていくのを、ダウンボウ、弓の先端(手元から一番遠い部分)から上へ向かって押し上げていくのをアップボウ。
同じフレーズを弾く場合、同じ弓の使い方をするのが普通で、例えばヴァイオリンはダウンボウで、チェロはアップボウで同じフレーズというのは普通は考えにくい。
同じ方向に動かすために、最初にお互いに相談して決めておく。
それからある音と音を滑らかに繋げて弾く、あるいは音の間を切って短く弾くとか、そんなことも全部決めておかないといけない。
練習の時に決めて書き込んでおくけれど、真っ新な楽譜を初見で弾く場合、人それぞれのクセや好みがあって、完全にボウイングを合わせるのは難しい。

例えば、ダウンボウで弾き始めたらチェロがアップボウで弾いて違ってしまうと、お互いに慌てて相手に合わせようとする。
そこで2人でアタフタするので、決めたことは書いておかないといけない。
その書き込みが無いと非常に不安になる。
オーケストラではコンサートマスターと各セクションのトップが、あらかじめ決めたボウイングを楽譜に書き込んで送ってくれる。
その楽譜を見て練習しておくので、最初の練習から弓使いが合う。
そうしないと、人数が多いので大変なことになる。

以前オーケストラの隣に座った男性が非常に敏感な人で、私とボウイングが違うと、次に同じフレーズが出てきたとき、私が使ったボウイングに合わせてくれる。
ところが私も非常に敏感なので、私の方はその男性のボウイングに合わせてしまう。
それでお互いにいつまでいっても相手が使ったボウイングになるので、平行線を辿ったことがある。
その時は書き込みのない楽譜でお互いに初見だったから、そんなことになってしまった。

その人は今や偉い先生になっているけれど、その当時は学校出たての坊やだった。
それで先輩である私を立ててくれたのだけれど、私はずっと年下でも彼の腕が私よりずっと上だと知っていたから、お互いに気を遣いっぱなしで疲れた。
2人とも相手の出方をうかがって、この次はどう出るかな?と横目で見ながら弾いていた。

こんな話しはともかくとして、いつも使っている楽譜はいったいどこへ行ってしまったのか、それが我が家の不思議なところ。














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