2017年2月22日水曜日

悪雪身につかず・・ゴーグルにつく

志賀高原から帰ってきました。
さぞスキーを堪能したと思われるかもしれないけれど、滑ったのは二日だけ。
初日は午後からゲレンデに出ると、そこはマイナス9度。
風も強く日差しはない、薄暗い世界。

それでも今シーズン初めてだから、寒さをこらえて鼻水をすする。
厚手の手袋をはめても、指先はじんじんする。
今回「雪雀連」のスキー講習会の日に私は予定が入っていて参加できないので、その前のプライベートレッスンの組に割り込ませてもらうことにした。
いつもたった一人で先生の講習を受けているNさんはかなりの高齢になって、あまり長時間滑ることがないので、彼女が休んでいる間に私がレッスンを受けさせてもらう。
初日は彼女が寒さと視界の悪さを理由に休んだため、私は一人で講習を受けることになった。

夕方になって風も強く厳しい寒さの中で、一番緩やかなゲレンデで基礎練習。
頭の場所、立つ姿勢、スキーの板の立ち位置、手の形、腕の位置等々、それはもう細かく悪いところを指摘される。
こんなに寒くてつらいのに、その上お小言が波のように押し寄せてきて、言われる方もつらいけれど、言う方もなんてご苦労なことかと同情する。
ほんの少しの油断も見逃さず、ガンガン締められて脳内は酸欠。
今年初めてのスキーなんだから、もう少し見逃してほしいものだと思うのに。
その日の雪は湿っていたけれどなんとか我慢できた。
日が暮れるころやっと勘を取り戻す。
時々オーケーが出るようになった。

次の日は、本来のメンバーであるNさんと一緒にレッスンを受けた。

この日の気温は前日より高い。
スキー場で暖かいのは本当に有り難くない。
今まで何十年、毎年志賀高原に来ているけれど、今回のコンディションの悪さは春スキーなみで、湿った雪が強風でゴーグルに貼り付くとそのまま落ちないものだから全く前が見えなくなる。
例えれば春のシーズンも終わりという頃のべたついた雪なのに、やたら降雪量が多くて圧雪しきれない雪がゲレンデの周りに積もっている。
いつにないこの悪雪には少しがっかり。
志賀高原のサラサラとしたパウダースノウはどこへ?

視界が悪いので滑る時にはゴーグルを少し上げて、裸眼で見ないと怖くて前に進めない。
ゴーグルをずらすと雪が目に飛び込んでくる。
これは危ないし、雪目になると病院で治療しないといけないかもしれない。
それでも見えなければ全く滑ることができないので、背に腹は代えられない。
とにかく我慢して滑っていると、Nさんは「私は休んでるわね」とさっさと休憩。
その分先生の圧力が私にかかってくるけれど、ここはレッスン独り占めをラッキーと喜ばないといけない。
ふだんの講習は5~8人くらいでの集団で受けるため、ほかの人が注意されている間じっと待っている。
ほかの人の滑りを見ていると、自分の滑りがどうだったか忘れる。
一人なら集中できる。

寒さよりも視界の悪さに音を上げて、それとリフトが終わるので16時ころ終了。
最後の待ち合わせ場所に行くときに、もうゲレンデの端まできたからと油断したのが運の尽き。
ゴーグルに貼り付いた雪のせいで、雪だまりが見えず突っ込んでしまった。

後から来た先生が私が転んでいるのを見つけてくれたから助かった。
もうゲレンデには人もまばらで、変な角度で足が曲がっているために、自分では起き上がれない。
板を外してもらってようやく立ち上がって、休憩場所に行って迎えの車待ち。
強風で雪が坂の下から上に登って行ったわよと、ずっと休憩所にいたNさんが言う。
Nさんはいつでも長時間の休憩をとるため、食堂の人たちに覚えられて、漬物の差し入をしてもらったり挨拶をされたり、時には先生がどこにいますよという情報をもらったりしているらしい。
今回も「もうすぐ先生降りてきますよ」と言われたそうだ。

雪が悪く風が強い。
最悪の滑り初めとなったけれど、やはり楽しい。

ホテルに戻って階段の上り下りに、さっきひねった膝が痛む。
その夜一晩湿布したら、治ってしまったけれど。

次の日は強風でリフトも止まり、道路も積雪のため下から来られないお客さんもいたようで、ごうごうと除雪車の音がひっきりなしに続いた。
窓ガラスが全部凍り付いて、外が見えない。
リフトが動かなくては諦めるほかない。
午後になってやっとたどり着いたという人たちは、それでもにこにこしている。
白樺林の雪景色は、どんなに苦労しても来て見る価値はある。
枝に粉砂糖を振りかけたように雪がまとわりついて、午後の遅い時間になってようやくチラッと見えた青空に映えている。
天気が回復したようだ。
少し散歩をと思って外に出る。

車の屋根の雪下ろしをしている隣のロッジの人に、リフトどうしたかしらと訊くと、やっと動いたみたいですよ、でも、もう時間がねと言って笑っている。
雪景色はいくら見ても飽きない。
私たちの泊まっているホテルは数年前に一度廃業。
がっかりしていたら、オーナーが変わって再開した。
建物は古くぜいたくな設備もなく、取り立てて愛想が良いわけでもなく、でもここへ来るとただいまと言いたくなる。

夜中に窓から空を見上げると大きな星が輝いていた。
朝になると上天気。
山の頂上までくっきりと見える・・・けれど、私は一足お先に山を下りた。
バスの窓からは周囲の山がくっきりと見える。
白樺林が朝日にキラキラと輝く。
この上天気もつかの間のことらしい。
早くも次の低気圧がまたどっさりと雪を運んでくるという予報。
今年はどこもかしこも雪だらけ。

人は自然のまえでは素直になる。
雪に困っても、雪に文句は言わない。
雪が積もると、どんな場所でも一種の神聖さを身にまとう。
田んぼの中から鳥居が頭少し出している。
そのまわり全部、神様の居場所のようになる。

今シーズンはおそらくもうスキーには行かれない。
珍しくシーズン一回のペース。
また夏に来ようと思う。
おかしいことに、夏に来ると道がわからない。
去年蛍を見に志賀高原を訪れたときに、方角がわからなくて笑った。
やはり雪がないと私たちにはぴったり来ない。




































2 件のコメント:

  1. うわぁ、すごいなぁ。雪風が轟轟吹き荒れる中をスキーするなんて。
    nekotamaさんは度胸がある!

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  2. 度胸よりも愛嬌が必要とわかっているけど、そちらはとんと持ち合わせがなく😿山は一歩間違えるとひどいことになるので、怖いですよね。

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