2017年2月26日日曜日

若い人たち

去年まで教えていた音楽教室の生徒たちがぞろぞろやってきた。
弦楽アンサンブルのメンバーの一人が結婚するので、披露宴で演奏するのだという。
練習をみてほしいという。
うちの狭いレッスン室にひしめき合いながら、チャイコフスキーの弦楽セレナーデのワルツを練習した。

とても熱心な人たちで、いつも感心するのは、常に前向きな姿勢。
アマチュアだからいろいろなレベルの人たちなので、当然よく弾ける人もいれば、はじめのうちはついてくるのがやっとの人もいた。
それでも粘り強い練習の結果は、いつも大変満足のいくものだったから、今回も楽しみにしている。
最初始めた頃、ついてこられないのではと思った人でも、今や、中心的な存在として毎回コンサートに出演している。

このグループの何がいいかというと、上手い人がつけあがらない。
少し技術的には難しいと思う人をバカにしない。
練習をいやがらない。
一緒に進む姿が清々しい。

とにかく性格が明るくて仲が良い。
性格が暗いことを決して悪いとは言わないけれど。
人をバカにしたり貶めたりする人が一人でもいれば、雰囲気はガラリと悪くなる。
不思議にそういう人が一人もいないことが、このグループの最大の長所。

それぞれ意地っ張りもいれば生意気もいるけれど、みんな可愛い私の小鳥さんたち。
ピーピー賑やかでよく笑う。
若い人たちといると、わけなく私も同じ年代に逆戻りする。
かつて若い人たちで構成されているオーケストラに、エキストラで行ったことがある。
平均年齢はたぶん30歳、いやもっと若いかも。
昔、オーケストラで同期だった人のお子さんがいたくらいだから。

その時にコンミスから、nekotamaさんは私たちと全く一緒なんですね、と言われた。
同じようなことに同じように反応する。
私は世代の垣根がないから、どの世代とも違和感なく話せる。
これはほかに取り柄のない私の、最も強い武器かもしれない。
たとえば80歳越えていても、20歳台でも何の垣根もない。
自分自身の年齢を忘れてしまえば、いいのだから。
あ、でも子供は苦手。
自分が子供の時から子供は苦手だった。

縦割り社会で生きてきた人は、年齢が上なら頭を下げ、下なら胸をそらす。
そんなことはなんの意味もないので、私は社会に出たとたん、たくさんの年上の友人に恵まれた。
年齢差もステータスも取り払って一個人としてみれば、友人になれるかなれないかはすぐにわかる。
ただし、好き嫌いは激しいから誰でもいいというわけにはいかない。
年齢差は関係ないというだけのことで。

一番嫌なのはずるい人。
卑怯な人。
これは許せない。
気性が激しいとか、すごく変わっているとかいうのは、むしろ長所として尊重する。

今日来た若者たちは、わがままだったり反抗的だったりしても、ずるい人がひとりもいない。
真っ向から立ち向かってくる。
一緒にいると、血が騒ぐ。
私の長い演奏経験からアドバイスをしても聞く耳持たないときもあるし、頑固に自説を曲げないこともある。
かれらは私ほど演奏経験もないし音大出たわけでもない。
それでも自分の思ったことは、はっきりと主張する。
それは本当にいいことで、ハイハイと返事ばかりよくて、お腹の中で舌を出すようなことはないと思う。
家庭の環境も良かったかもしれない。
よき友人に恵まれたからかもしれない。
単に素直だけではなく、自分の意志をもっているのが素晴らしい。

教師の私にも、彼らは堂々と意見を述べる。
中にはわかってないなと思える言葉もある。
それを覆すときには私は権威がないから、ほかの偉い人の言った言葉で対抗しないと信じてもらえない。
例えば高名な指揮者がこういったのよと言えば、たいてい納得する。
おっちょこちょいのあの先生がこう言ったけれど、それは名演奏家の言葉を借りたのだから本当だろうと。
私ももう少し頑張って偉そうに振舞わないと、いつまでも人の言葉でしか勝負ができないのが残念なところ。
偉そうにするのは本当にいやで、自分を外側から眺めていると、偉そうにふるまってしまったときには嫌悪感を覚える。
若い頃の私はとても生意気だったから、ずい分わかったようなことを言ったけれど、今思い出すと恥ずかしくてきゃあ~!と言いたくなる。
でも生意気は若者の特権。
年を経て自分がそれほどの実力はないのだとわかると、モノが言えなくなってしまう。
若いのに生意気でなくてどうする。
生涯生意気でも構わない。

私は実際偉くはないのだから、やんちゃな猫ボスとして子猫ちゃんたちの頭に君臨しよう。
すぐに玉座から引きずり降ろされるのは目に見える。
でも、この子たちは優しいから「先生には困ったものだわ」と言いながら許してくれるに違いない。

練習後、チェロの男性が、超絶難関の資格試験に見事合格したというので乾杯。
ワインと持ち寄ったつまみで楽しくわいわい騒いで、あっという間に引き上げていった。
演奏の成功を祈る!























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