2020年3月23日月曜日

多頭飼い崩壊

近所に空き地がある。
そこに猫が、多いときには20頭超え。
春になると赤ちゃん猫がよちよち歩く。
それはそれは可愛らしいけれど、近所の人たちはたいそう迷惑らしい。
何回も行政に訴えがきたそうだ。

その子達は今にも崩壊しそうなアパートの1階の住人が適当に餌をやって、ドアに穴が空いているので自由に室内から外へと行き来している。
そのボロアパートが今度取り壊されることになったらしい。

昼間、階上の住人の女性が思いつめた顔をして訪ねてきた。
その人は無類のネコ好きなうえ、最近までヨーロッパで仕事をしていたので、考え方があちら風。
立ち退きを迫られたアパートの住人が、その猫たちをどうするのか心配でたまらないらしい。
海外では動物愛護の法律が日本の比ではなく充実しているという。
役所が猫の保護から里親探しまでするし、里親がいなければ保護施設で飼育するという。
日本の法律はおかしいと、訴えられた。
私に言われても困るけれど、日本では動物は器物扱いだから時々無性に腹が立つこともある。
自分の飼っている動物にひどいことをしても、日本では罰を受けることはないのだと思う。
あくまでも自分の物を壊したのだから、別に良いではないかと。
親から虐待されている子供でさえも、ちゃんと保護してくれない日本のお役所。

上の階の住人のOさんは行動的で、何回も役場に足を運び、動物愛護協会に掛け合い、なんとかしたいのになにも動かないので苛立っていた。
そして「もうお宅しか無い」と訪れてきた。

昼過ぎ、区役所の職員が来るので一緒に行ってほしいというので、出かけた。
アパートのドア前で二人の職員とOさんと私の4人で何回も声をかけるのに、住人は出てこない。
猫のことで近隣から苦情が頻繁に来るのだろうし、区役所の職員となると、厄介なことになると思ったのだろう。
区役所の人がドアをノックして呼びかけても出てこない。
中で音がしているので居留守なのはわかっている。

それで自分たちが交代で、私達は猫の心配をしているのであって、決して猫に危害を加えないことなど訴えかけた。
10分ほども呼びかけて、やっと住人が顔を出した。
私が自宅まで猫のケージを取りに家に戻っている間に、事情がわかったらしい。
飼い主は、猫が何匹いるのかオス・メス何匹いるのか、年齢すらわからないまま、好きなように家に出入りさせていたという。
暖かい日はそとの草むらに好きなように寝そべり、お腹が空けばドアの破れ目から室内に入って餌をもらう。
ある意味猫は気ままで好き勝手にできて、最高の生活だったと思う。
避妊も去勢もしていないから、子供が次々に生まれる。

そのうち猫たちは散らばっていつの間にか数が減る。
けれど、又子供が生まれるの繰り返し。
今、我が家の駐車場に餌を食べに来る白黒の猫は、明らかにそこの出身。
現地に戻っていくと、飼い主は仕事に出かけるといって自転車で出かけていった。
するとその脇を白い猫が伴走していくのがなんとも言えず可愛い。
本当に可愛がっていたのだと思うけれど、自分のキャパシティーを超えた飼い方は近所迷惑になるし、今回のように引越し先には連れていけないとなると、一体この人は猫たちをどうするつもりだったのだろうと思う。

可愛いし、寒さや飢えに苦しむ猫を見れば手を差し伸べたくなる。
本当に優しい人なのだと思うけれど、これだけの数を一気に野良にしたら大変な苦労が猫たちの行方に待ち受ける。
運の良い子はだれかに引き取られるけれど、大半の子は猫取りに捉えられ悲惨な最後を遂げる。
うちの猫の行きつけの動物病院に電話をすると、手術を引き受けてくれた。
こういう場合、役所からと獣医師会から助成金が出るらしい。
手続きのやり方を訊くと、3月いっぱいまでに3匹、年度初めの4月に残りの数匹を手術すれば、まだ助成金が潤沢にある時なので、ちゃんと貰えるとアドバイスをしてくれた。

女の子の手術は値段が高いので心配していたけれど、これで随分助かる。
ことがトントンと運んで、今まで心配で曇っていたOさんの顔が一気に明るくなった。
生真面目で優しい人なのだ。
日本では優しいと住みにくくなる。
それにしても動物に関する法律は本当にひどい。
























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