2020年3月28日土曜日

ノラ猫捕獲

近所の空き地に大勢猫が屯している。
日差しを浴びてのんびりと毛づくろいしたり、それぞれの個体が近すぎず遠すぎず、グループごとにうまく付き合っている。
よく観察すると、一匹の白黒の猫に女の子が二匹。
これは母親とその娘たち。
雄猫とメス猫のカップル。
若い雄猫が5匹くらいと、ガタイの良いボスねこ。
毎年シーズンには子猫が生まれてチョロチョロと走り回っている。

先週のこと、上の階に住む女性Oさんが私を訪れた。
「もうほかに頼むところがなくて」と言いながら。
友人たちは皆反対するばかりで、頼れるのはお宅だけなんです、と。
話を聞くと例の空き地の猫に関することだった。

空き地の奥に古いアパートが建っている。
建っていると言ってもようやくのことで、と頭につけたいくらい老朽化している。
そのアパートに男性が一人で住んでいる。
その人が猫たちに餌をやっている。
その人は餌だけやって、他のことは一切面倒を見ない。
そのため、メス猫はシーズンごとに子供を産んでしまう。
フンの始末もしない。
近所から苦情が出てもどこ吹く風、猫たちはのんびりと幸せそうにしているから、可愛がられているのはわかる。

その古いアパートが取り壊されることになった。
新しい建物が建つらしい。
そうなると猫たちは行き場を失う。
それを聞きつけた上の階に住むOさんが、心配のあまり気が狂いそうになって駆け込んできたという経緯なのだ。

なんとかメス猫に不妊手術を施して子供の数をへらそうと様々に奔走したらしい。
区役所に訴え、動物の保護団体などに紹介してもらったりしてもはかばかしい返事は得られない。
結局自分で猫を捕獲して獣医師のところまで連れて行かないといけない。
これが日本の役所の動物の扱いなのだ。
野良猫の捕獲はとんでもなく難しい。
長い時間をかければ、我が家の駐車場に来ている猫のように触ることもできる。
けれど、根っからのノラの警戒心たるや、一瞬の油断も見せない。

餌をやっている男性にはなついているから、彼がやってくれなければ手の出しようがない。
しかし彼は、猫をそんな目に合わせるのはものすごく嫌なのだ。
Oさんは思い込んだら命がけみたいな性格だから、連日男性に電話をして叩き起こしたり、ドアを叩いて外に呼び出したりしている。
さぞや迷惑なことだろうと男性に同情する。
とにかく捕獲してくださいと頼むと、気弱そうなその人は網があればできると言うから、釣具屋さんに行って、頑丈な釣り用の網を買って持っていった。
けれど、彼は全く乗り気ではないのだから、やってくれない。

Oさんは、その間、日本の動物の扱いがひどすぎると息巻いている。
ドイツでは!(彼女はドイツで長年仕事をしてきた)動物はちゃんと管理されて、役所に電話すれば保護してくれる。
日本はひどい!

日本の動物保護は確かにひどい。
けれど、仏教の考えでいけば、人間と動物は同等。
私は無宗教だけれど、どちらかと言えば仏さまに親しみが湧く。
彼らには彼らの社会があって、人は口を出すべきではない。
だから、自然に任せて弱いものは淘汰される。
特にその空き地にいる猫たちはのんびりして幸せそうなのだ。
欧米の考えは、全ては人間が自分たちの力の及ぶ限りは管理する。

私は猫の世界に口出しする気はない。
たとえ苦労したとしても、猫にとってはそのほうがずっと幸せだと思っている。
しかし、Oさんがあまりにも一生懸命なので、気の毒になってうっかり手を貸してしまった。

うちの歴代の猫たちご愛用のケージを貸し出した。
少しずつ餌をやったりして気が緩んだ猫が、ケージの奥においた餌を食べようと入っていった。
そこで扉をガチャン!
捕獲成功!

その前に近所の獣医師にお願いして、捕獲器なるものを貸してもらうことになっていた。
実物を見にいったら、いかにも恐ろしげで金属の扉がガチャンと閉まる音を聞いたら、トラウマになりそうだったのでお返しした。

うちの猫がお世話になっている病院で今日手術をしてもらった。
私は猫といえども子供を産む権利があると思っている。
人間社会に生きる以上やむを得ないけれど、どうにも悲しい。
私が今まで保護した数しれない猫たちは、手術すれば当然我が家の飼い猫になった。
私は今の年齢からすると、猫より早く逝ってしまうと思う。
その段階で飼主を失った猫は悲惨なことになるから、もう新しい猫は飼わないようにしている。
それで手術後は元の空き地に戻すことにしたけれど、これはなかなかつらい。
根っからのノラは人になれるのが遅い。
我が家には今一匹の老猫がいる。
御年18歳。
その猫が野良猫の侵入でどうなるかも考えると恐ろしい。

彼女は多頭飼いの我が家にいて、常にミソッカスだった。
ほかの猫を避け、私にはなかなか甘えられず、押し入れで暮らす毎日。
他の猫がいなくなってようやく一人になって、思う存分私に甘えられる。
こんな日が来るなんて。
顔付きがどんどん優しくなって、甘え声を出すようになった。
そんなところに若い野良猫が入ってきたら、又押し入れに逆戻り。
悪くすれば寿命も短くなってしまう。

今日手術が済んで治療費をOさんに伝えたら、ドン引き。
彼女はわかっていなかったのだ。
どれほど動物病院の治療費が高いか。
補助金が役所から出るにしても、到底足りない。
今までの勢いは急速にしぼんで、ここまででおしまいにしましょうと言う。
それなら初めから大騒ぎしなければいいのに。
やたらと騒いで餌やりの男性を引きずり回し、私に様々な交渉を丸投げし、日本の制度をくさしていたのだ。
お金が惜しくてやめるくらいなら、最初から手を出さなければいい。

近所にも沢山の猫を保護している家がある。
私も病気の猫は必ず保護して治療して飼ってきた。
結局コロナウイルス騒ぎでOさんは自宅勤務していたので、暇ができて猫の騒ぎにつながった。
月曜日から仕事があるから、もうできないと言う。
私だって何十年も普通以上に仕事しながら、夜中に猫を病院に連れて行ったり、高い治療費を泣く泣く払ってきた。
それができないなら、最初から猫の保護するなんて言わないほうがいい。

手術の済んだ猫を引き取って、もとのアパートのドアの破れ目から室内に入れた。
猫はさっさと引っ込んだけれど、今日は一日室内にいてほしいと思った。
外では傷口に泥がついたリしかねない。

やっと騒ぎが終わったのでOさんとお花見をすることにした。
駐車場に椅子を出して紅茶とケーキで、猫捕獲成功祝の慰労会をした。
目の前の道を近所の人が通る。
ゴミ収集車のドライバーが会釈をする。
ヤマトの配達員が通ったから、うち?と尋ねると、いえ違います。
あと何匹か保護対象の猫がいるけれど、大騒ぎで疲れ果てて昨日は寝込んでしまった。

目が覚めると喉が痛い、咳が出る、だるい。
やや、コロナか?
外出を控えてぐっすり眠ってしまった。
目が覚めたら、気分が良い。
喉の痛みも消え、検温したら全くの平熱。
良かった。
食べ物が美味しい。
隠れコロナもいるそうだから油断はできないけれど、ここ数日は外出もほとんどしていない。
野菜を買いにスーパーへ行ったくらい。

姪が化粧品畑にいるので、マスクが手に入ったから届けると言ってきた。
五枚だけで申し訳ないけど、と言いながら。
やっと手に入った貴重なマスクだから、大事に使おう。
ほかからもマスクいる?とメールが来た。
皆さん自分で使いたいところなのに、こうして分け合ってくれるのがありがたい。
私なら穴掘って埋めて隠しちゃう。
それで後で掘り出そうとすると、どこに埋めたかわからなくなる。
そのうち芽が出てマスクの木が伸びる。
たわわにマスクが実ったから売りに出すころには、とっくにコロナは終わっていて、全く売れない。
たいていそんなことになるから、沢山あれば分けて感謝されるほうが良いかな。
堪え性がないから、並んで買うなんてとうてい我慢できない。
これが食料品だったらとっくに餓死して、周りの人を喜ばせることになる。

















































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