2017年4月6日木曜日

旧友

オーケストラで弾いていたころ、とても気の合う人がいた。
たぶん彼女は私より少し年下だけれど、セカンドヴァイオリンのトップ奏者だった。
素敵な演奏をした。
カルテットやデュオなど、様々なアンサンブルを一緒に楽しんだ。
私がオケをやめて、もう何十年も経ったころ、彼女の還暦のお祝いに思いがけず誘われて、8人くらいだったかしら、会食したことがある。
他の人は現役ばかりで、私だけ風来坊。

とても懐かしい再会だった。
その後彼女のご主人が亡くなって、その葬儀での再会、これは悲しかった。

最近突然の電話。
ハルボルセンの「パッサカリア」を一緒に弾いてほしいという。
この曲はヴァイオリンとヴィオラのデュオ。
彼女はヴァイオリン奏者だけれど、生徒がこの曲を弾きたいというので急遽ヴィオラを練習して弾いた。
発表会で生徒さんがコケてなんかすっきりしないので、一度プロと弾いてみたいと言う。
プロと言っても、私は去年仕事をやめたから今はセミプロ。
しかも彼女は優れたヴァイオリン奏者だから、私がヴィオラを弾いた方がいいんじゃない?と言ったら、でも一度ちゃんとヴィオラパートを弾きたいというから、久しぶりに合わせることになった。
私が相手では果たして「ちゃんと」弾けるかどうか。
とにかくすっきりしたいのよと言う。
困った!すっきりさせてあげられなかったら、どうしよう。

若い頃、彼女とプロコフィエフのデュオソナタを一緒に弾いた。
とても素敵な曲なのに演奏される機会はめったにないらしく、演奏会でプログラムに載っているのをみたことはない。
プロコフィエフ特有の音とリズムで、かなり難しくはあるけれど本当に面白いから、これをチャンスにもう一度一緒に弾いてもらおうかという下心で快諾した。
彼女は暗雲たれ込める未来にまだ気が付いてはいない。
魔の手がそこまで伸びているというのに・・・

私はオーケストラに11年いたけれど、10年目くらいにファーストヴァイオリンを弾くのにほとほと飽きて、どうしてもセカンドヴァイオリンを弾かせてほしいと団側に掛け合った。
なぜかというとベートーベンの「第九」に、それはそれは美しいメロディーがセカンドヴァイオリンによって演奏される部分があって、それが弾きたくてたまらない。
練習の時にはこっそりとそこを弾かせてもらっていた。
コンマスの意向もあってなかなか許可が出ないので、もうやめると脅したらやっと許可が下りて、彼女の隣で弾くことになった。
言うまでもなくずっと気が合う存在だったから、それからは楽しくてたまらない。
晴れて第九を弾いた時には天にも上る気持ち。

それと同時になんという難しさ!
ベートーヴェンは内声を弾くととてつもなく面白い。
その代わり、モーツァルトの「魔笛」とかベートーヴェンの「田園」などにセカンドの難所が。

指揮者の故朝比奈隆さんが練習が終わると事務所に行って、セカンドヴァイオリンの1プルトの2人が怖いと言ったそうだ。
練習の時朝比奈さんが注意をしている間も、二人でひそひそ話している。
それで注意を聞いていないかというとちゃんと聞いていて、指定通りに弾く。
しゃべっていても聞いているので、怒れないらしい。

元々許可が中々下りなかったので、時々元のファーストの席にもどされる。
そのうちなし崩しに元の席が多くなった。
結局セカンドヴァイオリンは1年くらい弾いただけで、その後はファーストばかり弾いていたから少しも上手くならなかった。
ほとんど覚えていない。
セカンドヴァイオリンは、曲が良くわかっていないと難しい。
ヴィオラとの連携がうまくいかないと辛い。
ファーストはのんきにメロディーが弾けるから、音が高くても楽。

せっかくセカンドヴァイオリンに席をもらったけれど、あまり弾かせてもらえなくて間もなく私は退団してしまった。
それからはフリーで仕事にも恵まれたけれど、同じ釜の飯の仲間たちとはいまでも交流があり、一緒に弾いたことのない後輩たちとも付き合いが広がっている。
オーケストラは言うなれば家族みたいなもの。
しばらく会わなくても、絆が切れない。



















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