2017年6月2日金曜日

力まないで

まだずっと先の話し。
8月17日 北軽井沢ミュージックホールでコンサートを開く。
今回は北軽井沢ミュージックホールフェスティバル参加ということで、去年までのルオムの森でのコンサートの場所が、ホールに移った。

ショスタコーヴィッチのヴァイオリンデュオをプログラムに入れた。
この曲は初めて弾くけれど、こんなに素敵にかわいい曲をショスタコーヴィッチが書いたとは信じられなかった。

ショスタコーヴィッチと言えば交響曲5番。
初めて弾いた時には暗くて重くて好きにはなれなかった。
ヴィオラ泣かせの曲で、ヴィオラのソリの部分にくるとハラハラして手に汗にぎった。
なぜかというと、私たちがオーケストラに入りたての時代にはヴィオラ奏者はあまり上手な人はいなくて、いつ音程が崩れるかもしれないので。
ヴァイオリン側から聞いているので、早くその部分が終わってほしいと思った。
今の時代、ヴィオラは立派なソロ楽器と認められ、ヴァイオリンが下手だからヴィオラに転向するのではなく、ヴィオラの音に魅せられてヴィオラ奏者になる人が多い。
私も、もう少し体が大きかったらヴィオラ奏者になりたいくらい、ヴィオラが好き。

ヴィオラジョークと言う自虐的なジョークがネット上にあって、一時期それがガクタイたちの評判になっていた。
ヴィオラ奏者が書いたものらしい。
例えばショスタコーヴィッチの5番では、緊張のあまり弓が震えてしまう人も多くて、ヴィオラ奏者はスタッカートを一弓で弾ける・・・・とか。
それはヴァイオリンでもチェロでも同じで、あの有名な斉藤秀雄氏も弓が震えて弾けなくなってしまう方だったらしい。
大きな声で言うとファンに暗殺されるので、この部分は声に出さずに読んでください。
私の運弓法の先生の故三鬼日男氏から聞いた話ですから。

昔の奏法はとかく無理があって、様々なやらなくてもいいようなことをやらされた。
今の奏法は本当に自然で体に力が入らないから、最近の若者で弓が震える人はあまり見かけない。
昔の日本では先生たちも見よう見まねで外国の名人たちの弾き方を外側から観察して、こうした方が、ああしないといけない、などと試行錯誤したと思う。
それが外国に簡単に行けるようになると、直接現地の先生に学んでくるから、最近の日本人はとても自然体で難しいテクニックも難なくこなす。
音大の学生さんたちだって、私たちの時代だったら名人に思われたかも。
そのくらいレベルが上がっている。

ピアノの世界も同じ。
日本のピアノ演奏の初期のころ、日本の大先生がドイツへ留学して、あちらでほんの一時期はやっていたハンマーのように鍵盤をたたく奏法を学んで帰ってきた。
その奏法はドイツではすぐに消えてしまったらしい。
けれど、日本に帰った大先生はそれを生徒たちに伝え、それ以後脈々とハンマーでたたくような奏法が日本では主流になってしまった。
その方は大御所だったからお弟子さんたちも同じようで、その派はいまだに鍵盤をひっぱだいているのを見かけることがある。
最近は奏法が改善されて、皆さんあまりたたかなくなって響かせるようになった。

ヴァイオリンも同じ。
かつての先生からは、右手の人差し指で弓を弦に押し当てて圧力をかけるようにさせられた。
それをすると、弦は共鳴することをやめてしまう。
手元では大きな音がしても、遠くへ飛ばない音になる。
外国から来たソリストたちは近くで聞くと音が小さいのに、ホールの隅々にまで響かせるのを不思議に思った。
そういうことだったのかと、今思えば納得する。
力任せの奏法は年をとると無理が来て、早くから演奏をやめてしまう人も多かった。

話はどんどん逸れるけど、私は9月に古典音楽協会の定期演奏会でソロを弾く。
バッハ「ブランデンブルグ協奏曲第4番」
この曲は途中にヴァイオリンのとてつもなく早いパッセージが続く。
曲全体の速さから言うと信じられない音型で、その場所を全体の速さで弾くことは私には不可能だと最初は思った。
それで曲全体を少し遅めのテンポで弾いていたけれど、どうしてあのバッハがこの音型を書いたのか不思議に思っていた。
今まで2回本番をしているけれど、その都度、猛烈に練習をしてやっとやり過ごしてきた。
こんな早いパッセージをどうやって弾いているのかCDなどを聴いても、皆普通に弾いている。
それにあの大バッハが、弾けないテンポのパッセージを書くわけがない。
youtubeを見ていた時、ソリストがそこの部分になると顎を外して弾いているのを見て、ああ、これだ!と思った。
それは古楽器の人たちの演奏だった。
元々顎あてなどはない楽器だから肩に軽く載せて弾く。

それでもその部分になると顎をはずす。
これは超リラックスのしるし。
私もそこへ来た時、まず全身の力を抜いてみた。
そして、笑ってしまうくらい簡単に弾けた。
脱力こそが最高のテクニックだったのだ。

ここまで来たら話がどんどん違う方向に来たので、とりあえずもとい。

ショスタコーヴィッチ「2つのヴァイオリンとピアノのための小品」は、ほんの短い曲が5曲つながっているけれど、それぞれが2分くらいで長くても3分。
だから全体で10分くらい。

1)プレリュード 2)ガボット 3)エレジー 4)ワルツ 5)ポルカ

当時のソビエト連邦で、ブルジョワ的と非難されなかったのだろうか。
おしゃれで、なによりも短いのが良い。

北軽井沢は交通の便が悪い。
軽井沢からバスかタクシー。
車がないとたいへん。
泊まるところも少なく、林とキャベツ畑ばかり。
だからこそ自然が残っている。

軽井沢近辺で避暑の方たちは、たまにはこちらへ足をお運びください。
とくに8月17日は素敵な?イヴェントもありますからね。
ミュージックホールを覗いてみてください。

そろそろ練習が始まる。
ショスタコーヴィッチだけ昨日集まって練習してみた。
簡単な曲だけど、弾いていてとて楽しい。
この曲を入れて良かった。
今月後半には現地まで行って、ホールで音響を確かめる予定。
屋根がトタンで、雨が降るとバタバタと雨の音がするそうだ。
それもまた面白い効果を生み出すかもしれない。















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