2019年7月8日月曜日

ブートキャンプと言うけれど

もう辞めたはずなのになにかとご縁のつながっている音楽教室「ルフォスタ」
渋谷の宮益坂上信号近く、青山通りに面した黄色いビルの中にある。
もう何年になるのか、初代のオーナーだった小田部ひろのさんが起ち上げた。
いつも仕事で神経をすり減らしているおじさんたちのオアシスを作りたいという理念に賛同して、ほんの数人の講師が集まってスタートした。

それはそれは面白かった。
小田部さんは顔を合わせるといつも「どうやったら楽しくできるでしょうね」と相談を持ちかけてきた。
ああしよう、こうしようと、知恵を出し合ってことを進めてきた。
ときには意見が合わず、しょっちゅう喧嘩をしたけれど、喧嘩ができるほどの仲の友人はあとにもさきにも彼女しかいなかった。
残念なことに若くして亡くなった彼女を見送ったあと、私も風船がしぼむようになってしばらくして教室を辞めてしまった。

そのときに教えていた生徒たちが未だに私を引っ張り出そうと画策してくれる。
そろそろおとなしく家にいようかと思うけれど、誘われるとホイホイ出かけるところがおっちょこちょい。
毎年アンサンブルの合宿を発表会の前に計画、地獄の特訓が始まる。
発表会の前の数回の指導と合わせて年2、3回は彼らと楽しく過ごしている。

日曜日、雨の中集まったメンバーとは本当に長いお付き合いなのだ。
アマチュアのこういう団体ができると、必ず支配的な人が現れて牛耳り始めるのが世の常。
それがこのグループにはいない。
いつも話し合いで穏やかに解決していく。
もちろんリーダー的存在はいるけれど決して高圧的ではなく、何事も相談し合って、練習が終われば仲良く酒盛り。
音楽に関しては、全員が努力を惜しまないので、私も彼らとなんとか成果をあげたいと張り切ってしまう。
その結果、時々鬼のようになるらしい。

昨日もビールで乾杯しながら、nekotamaズ・ブートキャンプとの名前を頂戴した。
そんなに厳しくはないぞと心の中でつぶやく。
ここのメンバーは教室に入ってきたときはかなり教えるのに手こずった。
とてもアンサンブルどころではなく、自分の音すら聞いているのかどうか。
練習が始まってみると、一体何を目的として集まっているのか理解不能。
全く基礎ができていないので、一から、例えばイスの座り方とか、練習に鉛筆を持ってくるようにとか、様々な常識を教え込む。
人の言葉を聴いていない。
練習中おしゃべりを始める。
途中で練習を止めても気が付かないで弾いているなど、問題噴出の連続だった。
練習後のビールが目的で集まっているとしか考えられなかったけれど、そのうちにどんどんやる気を見せ始めてからの彼らの進歩は目覚ましかった。
やればできるじゃん!とnekotamaはつぶやく。
トップクラスの頭脳集団なので、理解し始めれば話は早い。

去年の合宿で、私は連れ合いの臨終の知らせを受けて途中で帰宅してしまった。
そのことをずっと申し訳ないと思っていたので、今年はとことん付き合いますよと言ったら「怖い」と言われてしまった。
それがブートキャンプと言われる練習になったようだ。
時々生徒に言われる。
「こんなに諦めない先生には会ったことはない」と。
何回も同じことを言うのは、自分もいや。
教わる方もうんざりだとおもうけれど、どうしてもうまくなってほしいからつい口を酸っぱくする。

今回発表する曲は、モーツァルト:ディヴェルティメント K.136
あまりにも有名なこの曲を、私は今年の北軽井沢のコンサートの冒頭に置いた。
私は去年の家のゴタゴタで、ヴァイオリンを弾くことが一時期できなくなっていた。
そのツケが回ってきて、他の曲には影響があまりなかったけれどこの曲が弾けない。
どうしても思うようにならないので、モーツァルトの難しさを思い知らされた。

今回の練習が始まったとき、あ~あ、とため息が出そうだった。
しょぼい!モーツァルトの輝きが全く感じられない。
しかし、ほとんどろくに休憩もしないでの特訓の成果は目覚ましかった。
最後に録音してみたら、なんと感激!
うまくなったねえ、あなた達。
全員の頭をナデナデしたくなったよ、私は。
























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