2019年7月29日月曜日

ヤドカリ

レッスン室の冷房が壊れたので練習はリビングでしようかと考えたけれど、猫が怯えるといけないから部屋を借りることにした。
近所の貸し部屋、実は兄の家。

この家には狭いながらも音楽室がある。
娘がピアノ教師をしているので、家を新築したときに彼女のために作ったもの。
防音も行き届き、楽譜もきちんと整理されている。
何よりも感心するのは、例えば本棚の全集物を収めてあるコーナー。
全集を収めて空きがあると、それに合わせてそのサイズのものを探して収める。
だから僅かな隙間もなく、きっちりと並んでいるという具合に。
壁には兄が作った額縁入りの名作曲家の絵。
バッハ、ベートーヴェン、モーツァルト、シューベルトがきちんと並んでいる。
傾いていたり、そんなことは一切ない。

ピアノの上にはものが一切置かれていない。
ホコリもなくピカピカに磨かれている。
上等なソファーにだらしなく脱いだものを置いたりもしない。
全てがきちんと整理されて、心地よい空間を生み出している。
けれど、私がそこへ入るやいなや、なんとなくだらしない雰囲気になるのはどうして?

以前ハンガリーのヴァイオリンの名手タマーシュ・アンドラーシュが私のレッスン室に来ていたとき、他のひとの練習が入って空き時間ができたので、どこか個人で練習できるところはないか?と言うから兄のところに連れて行った。
兄はひどく喜んで、お寿司を取ろうか、お茶はどうかなどと大歓迎している。
でもタマーシュは練習したいのだから、困惑している。

とにかくなにもいらないから練習させてあげてと言って、置いてきた。
たぶんその後も兄は彼にまとわりついて迷惑がられたと思う。
その後、タマーシュが言うには「お兄さんの家はとても綺麗だ」
悪かったわね、私のところが汚くて。
その話を兄にしたら「nekotamaのところはまっすぐに物をおかないからいけない」

私の両親は、母が整理整頓の名人、父は自分が楽しい事しかしない。
その母に似たのが兄で、父親そっくりなのが私。
兄は2年前、連れ合いに先立たれ一人暮らし。
家中ピカピカでチリ一つ落ちていない。
台所にきれいに洗われたまな板があったから「料理はするの?」と訊いたら「もちろんやるよ。でも一度S食品のフリーズドライの味噌汁を買ったら、その後定期購買しろとうるさくてね。しかたなく買っているけど、たまに自分で作ると、ああ、美味しいって思うんだよ」
へ~え、私は自分で作るとまずくて、フリーズドライのものが美味しく感じるんだけど。

チェロを練習していた兄を追い出して練習させてもらった。
練習が終わって兄を探すと画室で絵を描いていた。
これもひどく上手い。
どうして同じ兄弟に生まれ、これほどの差が付くのか。
一箇所だけ誰もがそっくりと言うところがある。
顔が似ているって・・・これは許せん。
あんなたぬき顔とこの絶世の・・・~、どこが似ているんじゃ!!!







3 件のコメント:

  1. nekotama様
    軽井沢の別荘でバイオリンを奏でる優雅なマダム、のはずですよね。あはは。
    nekotama様のブログ、面白いやら、羨ましいやら、はらはらするやら。
    とにかく身体に気を付けて、マイペースで行きましょう。(お互いに、ですねえ)

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  2. nyarcilさま。
    一つ訂正です。
    軽井沢ではなく「北軽井沢」です。
    本家軽井沢は泣く子も黙る立派な別荘地、北軽井沢はキャベツ畑と森だけ。
    その差は月とスッポン、ちょうど兄と私のことみたいです。

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  3. 追記
    すっぽんと言われて北軽井沢の人たちがしょんぼりするといけないので言いますが、私は北軽の森に惚れたんですよ、念の為。
    キャベツ美味しいし。

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