吉本興業の芸人が、闇営業(なんてひどい言葉)でいわゆる闇社会の人の誕生日パーティーに行ってクビになったという。
そもそも吉本がきちんと抱えている芸人に給料を払っていればこんなことにはならない。
売れない人は仕事の他にアルバイトをしないと生活できないなら、もっと自由に仕事を取らせてあげる。
そうでなければ人として最低限の生活ができるだけの給料をはらう。
それもしないらしいから、他の仕事に行ったからとクビにする権利はあるのだろうか。
食べずに餓死しろとでも?
家族を養えず、家で妻子にどれだけ肩身の狭い思いをしているのか考えると涙が出そうになる。
依頼主が闇社会の人だとは知らなかったのですか?
現場でそのことを訊かなかったのですか?
お嬢さんのレポーターの質問に、鼻から紅茶を吹き出しそうになった。
私達もオーケストラがどん底だったとき、スタジオの仕事をやって生活していた。
これを「しょくない」と言った。
子供が生まれたばかりのお父さんはミルク代を稼がないと、奥さんに逃げられてしまうようなそんな状況で、仕事がきたらどんな仕事かなどとは確かめないで行く。
たとえ現場に行って相手がその種の人だと悟っても、受けた仕事はやらないといけない。
そもそも、放送局内にだってヤクザやその親戚はゴロゴロいる。
えらそうに闇社会などと言っている人の身内にだっている場合もあるでしょうに。
今のその手の人達はカモフラージュされた企業にいることが多い。
仕事に行って「あなた堅気の方ですか?」なんて訊く人いる?
随分以前のことだけれど、我が家に仕事に来たペンキ屋さんはYAっちゃんだった。
ある日表ですごい声で怒鳴り合いが始まった。
びっくりして飛び出すと、私道を隔てたお隣のご主人と顔を突き合わせて怒鳴っている。
どうやらペンキ塗りの道具が私道にはみ出ていたのを、お隣さんがベンツで轢いたらしい。
二人の男の間に割って入った私は「喧嘩するなら多摩川の河原かなんかに行ってやってください」
どうやらお隣さんはその手の社会の親分だったらしい。
「待ってろよ、今組の若いもん連れてくるからな」
突然現れたおばさんを持て余したらしく、捨て台詞を残して行ってしまった。
私はペンキ屋に「今日はもう帰ってください」と言って帰した。
その後四つ辻の真ん中に仁王立ちしている親分を見つけたので、私はペンキ屋が帰ったことを言おうと近寄っていった。
玄関を出るときに気がついたのは、なんで今日はこんなに車が沢山停まっているのかしら?
親分のそばまで行くと、その車のドアが一斉に開いて中から人が大勢出てきた。
あら、なに?この人達。
「ペンキ屋さんは帰りましたから、お引取りください」
親分と車から出てきた人たちが帰ったので、はた!と気がついた。
今の人達、いわゆる「組の若いもん」だったのだ。
へえー、ほんとにこんな世界があるのだ。
その後警察が出て一件落着。
ペンキ屋は次の日から、のんきに我が家の壁を塗っていた。
親分にはそのことがあってから挨拶をされるようになった。
ある雪の降る日、楽しそうに空を見上げて雪を眺めている親分に遭遇した。
聞けば新潟の人らしい。
どこをどうしてこんな稼業になったのか、元はいい人みたいなのに。
母に報告すると「ああ、あの子ねえ(ペンキ屋)おとなしいいい子だったけどねえ」
母にとってはだれもがあの子、どんな稼業でもいい子か悪い子にしか区別できないみたいだった。
吉本興業自体はちゃんとした会社かもしれないけれど、興行と闇社会はむかしから深い関係にある。
歌手も地方興行ではかならずお世話になると決まっていたから、いまだにこの世界とは切り離せないのでは?
故人だけれどある超一流歌手なんて、その手の親分との深いつながりは誰でも知っている。
けれど、彼女は国民的歌手として、誰からもそのことは追求されなかった。
末端にいる貧しい芸人たちに責任を取らせるのは本当に可哀想。
やっとありついた仕事がその手の人達の集まりでも、彼らに責任があるのだろうか。
まして知らないで行ったことでそんなに非難されることなの?
偉そうにインタビューしているレポーターのおねえさん。
あなたがその立場だったら訊きますか?「あなたは闇の人?」なんて。
むしろ事務所がちゃんと仕事を回してあげればいいのに・・・というのは甘すぎるのかなあ。
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