2019年8月21日水曜日

雷様と共演

私はずっと晴れ女だった。
それまで降り続いていた雨が、本番になるとピタっと収まるという奇跡の人だった。
しかし、私の運は尽きたらしい。
昨日は北軽井沢コンサートホールフェスティヴァルに出演。
メンバーに新たに若手(?)二人加わり、ピアニストは諸隈まりさんをお迎え。
モーツァルトのピアノ協奏曲があのトタン屋根のホールに響き渡った。

本番前は時折穏やかな雨が降るくらいだったのが、始まるととんでもない土砂降りとなった。
さすが自然派の私達も参るほどの吹き込み方で、シャッターを半分おろしてもらった。
ときおり雷までなった。
穏やかな私はいつも晴天に恵まれる。
でも今回は3人の新人がいるから、そのうちの誰かが雷まで呼んだらしい。
犯人は誰だ!

それでもコンサートは粛々と進む。
プログラムにモーツアルトが多いのは、楽器の編成が少なく、それでもどんな大編成のオーケストラも凌ぐ魅力ある作品をと思うと、それはモーツァルトしかない。
ピアノ1台でもオーケストラでも、モーツァルト効果は世界中の人から愛される。

リハーサルのときは時々雨がやんだり降ったりを繰り返していた。
会場もどこもかしこも湿度マックス。
楽器は絞りたいほど濡れて、調弦に四苦八苦する。
弦を張るためのペグが全く動かなくなった。
弓の毛もいつの間にか伸び切ってしまう。
しかも雨が降るとトタン屋根に当たってやかましい。
やっとやんだと思うと、その途端セミの大合唱が始まる。

初めてこのホールに登場したヴァイオリンのメゲちゃんが「外と同じ」とつぶやく。
だから言ったでしょう、びっくりしなさんなって。
この悪条件にも関わらずパワー全開のゆかりちゃんの檄が飛ぶ。
ピアニストのまりさんはどんなときのもおおらかにニコニコ。

本番は流石に緊張と思いがけない落とし穴の連続だったけれど、聴いてくださった方たちからは盛大な拍手を頂いた。
しかし、客入りはいまいち。
平日のお盆明け、新学期の始まり(このへんは早いらしい)ときては、集客はままならない。
これほどのメンバーと練習量とには見合わない入りだけれど、東京から仲間が沢山来てくれた。
その人達をノンちゃんの家に集めて打ち上げをすることにした。

前もってホール近くのハコニワ食堂に注文、料理を大皿に盛ってもらうことにした。
骨付きの大きなハムと冷蔵庫にありったけのチーズなど、食べられるものは食い尽くす。
前夜、軽井沢のY子さんが美味しい花豆のおこわを届けてくれたので、それも評判が良い。
しかし、宴会に参加できなかったのが、この私。

終演後、車に荷物を積むために会場脇の階段を降りようとして踏み外した。
なぜか顔から落下。
なぜか鼻は無事で顎と口を怪我。
歯に当たった口の中が切れた。
左の顎を強打したので私は耳をやられては困ると、瞬間的に考えた。
考えたのはそれだけ。
起き上がると、鼻の下と口から血がでていた。
しかし、私は猫!
にゃんパラレと起き上がってみると、打撲以外の怪我はなく手足は無事。

周りが大騒ぎしているけれど、本人はケロリとしている。
騒ぎ過ぎだよ、君たち。
そのお陰で私は行きたくないと頑張ったけれど病院へ連れて行かれてしまった。
救急病院は草津に近い山中。
ヴィオラのイモアン運転の猫運搬車に乗せられて行った先の病院には、当直の若い女性医師がいた。
生真面目でまるで十代の少女のように化粧っ気がない。
症状を訊かれても申し訳ないけれど、大した怪我ではない。

手足を伸ばすー問題なし。
頭は?ー痛くない。
目の検査ー問題なし。
気絶は?ーするもんですか。
顎は?ー少し痛いけれど・・・

顎の骨が骨折しているといけないからCTをとりましょう。
でも今は医師がいないので、何時にできるかわかりません、どうしますか?
もちろん待っていられない、今家で宴会の最中なので。
私は大丈夫なのにまわりが行けというから来たので、早く帰らないと皆さん帰ってしまうから。
真っ暗な山の中を帰宅すると、人数が減っていた。

イモアンは空きっ腹を抱えて付き合ってくれたけれど、自宅に待機している猫が心配だからと言って帰ってしまった。
私はなにか食べたくても口の中を切っているので、流動物しか入らない。
唇が腫れてきた。

女性医師は生真面目で冗談が通じない。
看護婦が私の冗談に笑ってくれるのに、顎の骨が折れていたら顎を切開して金属の板を入れてつなぎますとか説明する。
でも、それだけ喋れれば心配ないでしょうと言って、放免された。

怪我をしてもうろたえないのは、子供の頃からのこと。
親の目が届かないので少しの怪我では報告もしなかった。
自分で傷口を洗い、怪我の症状が変化するのを観察した。
それで大抵の怪我は最終的には治るもの、大げさな治療はいらないとの結論に達していた。
人の体は素晴らしい自然治癒力を持っている。
今回も周りが大騒ぎするので、それにびっくりしたくらいだから。

コンサートは下準備が大変。
ステージに立ってしまえばまな板の鯉だけれど、準備段階ですっかり疲れてしまう。
早朝浅間に別れを告げて猫が泣いて待っている家に帰った。
昼中爆睡した。
猫はニコニコ!


























































2 件のコメント:

  1. 大丈夫ですか!?
    心配ですよ。何かあったらご連絡ください。

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  2. ありがとうございます。
    本当に大丈夫です。
    それにしても歳をとってからバランス力の衰えに驚いています。
    ちょっと振り返っただけなのに世界が回るとは。

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