最近は夕飯を食べると眠くなって早めに寝てしまう。
それで夜中に目が覚めるようになった。
いつものことで午前2時ころ目が覚めた。
台風が関東に上陸するというし、私の家の前には川が流れている。
局地的な豪雨がこの地域に降ったら簡単に氾濫するのではと思うけれど、この川は大きな雨水管が地下に埋められているため、そこに大量の水を流すことができる。
この管が埋められる前、川沿いの家は毎年の床上浸水で台風の翌日は畳が土手に干されていた。
建て替える以前の私の家は浸水に備えて床が高くしてあったものの、大雨の日は玄関にひたひたと水が押し寄せてきたこともあった。
玄関ドアを開けたら目の前が湖のようになっていて呆然としたことも。
幸い床までは水が入らなかったけれど、兄が心配して見に来たときは膝上まで水に浸かっていた。
「トイレの水や汚水が混じっていて汚いので歩いたらだめ」というと初めて気がついたらしく「ひゃあ」とかなんとか言いながら、慌てて帰っていった。
姪からメールが届く。
そちらに非難警報が出ているけど大丈夫?
非難?なんじゃそれ。
早速叔母さん目線で、非難とは避難のことかい?と嫌味の返信。
突っ込まれると思っていたから変換直したはずなのに、変ね、と姪の返信。
せっかく心配してくれたのに、可愛げのないこと。
夜中に目が覚めると盛大に風の音が聞こえる。
カーテンを寄せて隙間から覗くと、お隣さんの庭木が90度もしなっている。
若木でしなやかかもしれないけれど、私は木がそんなに曲がるのを見たことが無い。
雨が横殴りに降っているから、相当な風速だと思う。
しばらく情景を眺めていた。
家の内外が軋む音、外では救急車のサイレンが響いているけれど意外と静かなのだ。
私の家はブロックの一番北側にあって、南側が家々で守られている。
台風のときはたいてい南西の風だから、そのへんからの風はほとんど当たらない。
以前からの経験で、建て替えたときには1階は駐車場にした。
水が出ても車なら移動することができる。
寝る前に停電に備えて懐中電灯を3本用意した。
万一停電が長引くと電池切れもあると思うし。
中々停電にならないから、台風情報をテレビで見ながら紅茶を淹れて、しばらく起きていた。
外は大変なことになっているのに、実感がわかない。
そのうちフッと電気が消えてテレビも消えた。
早速備えてあった懐中電灯を点けてみる。
意外と明るいもので、小さくても十分部屋を照らしてくれる。
この時間帯はよく起きていて、本を読んだりする。
けれど懐中電灯では本を読むほど明るくはないから、他にすることもない。
その上気がついたのは、エアコンも消えてしまったのだ。
これはまいった。
私は暑さにはめっぽう弱い。
去年は3回も熱中症にやられたので、暑さが去るまではエアコンは昼夜を問わずつけっぱなし。
氷水を何回も飲む。
氷をとるとき気がついた。
冷蔵庫!
ぎっしりと詰まった冷凍食品は大丈夫かしら。
肉の塊はなどは中々溶けないけれど、チャーハンやドライカレーなどのご飯物やパンなどはしばらくすると柔らかくなってきた。
それならフライパンか電子レンジで調理してしまおうと思って、はたと気がついた。
それも全部使えない。
溶けるに任せるっきゃない。
暑いから眠ることができない。
少し風を入れようと思って玄関ドアを開けたら、セコムの警報が鳴り響いた。
停電でも機能するんだ。
玄関外の共有部分の非常灯が明々と点いていたので、びっくりするとともに安心した。
とにかく暑い。
熱中症になったらいやだなあと思っているうちに、外が明るくなってきた。
風も収まってきたらしく世の中が静かになってきた。
けれど、気温は上がってくる。
結局午後まで電気は復旧せず、でも熱中症にはならずに済んだ。
その頃になるとセコムから電話があって、ご無事ですか?と。
明け方セコムの機能は停止、非常灯も消えた。
子供の頃、停電するとろうそくの灯りで影絵をして遊んだ。
遮るもののないだだっ広い古い家は、雨や風のほしいまま。
雨戸の隙間からひゅうひゅうと吹かれ、巨大な杉の木に落雷したり、台風は夏の恐ろしいお客さんだった。
今は丈夫な壁やサッシのお陰で、それほど恐怖を感じない。
子供の頃の恐怖の夜、台風が過ぎた次の日の朝は抜けるような青空だったような気がする。
今は台風が過ぎてもなにかカラッとしない。
決定的になにかが違うような。
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