2019年9月2日月曜日

大人の付き合い

私が以前所属していた渋谷の音楽教室「ルフォスタ」は大人の疲れたおじさんたちのオアシスとなろうという目的のもとに、数人の講師が集まってたちあげた。
最初は3~4人の講師にショボショボの受講者。
しかし、あれよあれよという間に100人越え200人近くのオアシスを求める人達がひしめきあって、毎日が笑いに包まれた教室となった。
待合室には酒盛りをする人が待ち構えていて、行くと「いっぱいいかが」なんてことも。
レッスンが終われば講師も生徒も見境なく盛り上がって、夜中まで話しが弾むなんてことも。
それは初代オーナーの太陽のように明るい性格を反映していた。
しかし好事魔多し、彼女は若くして病魔にさらわれていってしまった。

私は一緒に戦った戦友をなくしたショックで、しばらくして教室を去ることになった。
けれどもその頃の生徒たちが未だに事あるごとに私を引っ張り出してくれる。
個人レッスンはやめたものの、発表会直前の弦楽アンサンブルの指導だけは毎年私の担当になっている。
1年に数日だけなら私も引き受けられる。
教室をやめたのは先程の理由の他に、毎週決まった曜日に行かなければいけないのが苦痛だったこともある。
決まったことを決まった日に・・というのが大の苦手なのだ。
教室の発表会と自分のコンサートが重なったりしててんやわんやするなんてこともあったから、体力、気力ともに限界でもあった。

フリーになってからはとても充実した勉強もできたし、なによりもスケジュールがたてやすくなって長い旅行にも行ける。
それでやめたのを後悔することはないし、もとの生徒たちがなにかにつけて遊んでくれるから教室とは縁が切れていない。

今月16日、渋谷の伝承ホールで発表会が行われる。
この弦楽アンサンブルができたのが12年前だそうで、「だそうで」というのは私には時間の経過がわからない。
もうそんなにというか、まだそんなにというか、とにかく年月の経過にはほとんど無関心だけれど、このアンサンブルの良いところはメンバーがほとんど変わらないということ。
アンサンブルの中心人物はG氏、彼を敬愛するメンバーが本当に仲が良く、それでも練習時には喧々諤々、意見はしっかり述べ合う。

発表会の弦楽アンサンブルの曲目はモーツァルトのディヴェルティメントK.136。
はじめの頃にこの曲をやったときはひどい出来栄えだったけれど、それから10年以上経過して練習の成果を問うことに。
前回の練習時に録音したら中々の出来栄えだったから安心しているけれど、ステージには魔物が棲むから結果はおわってからでないとわからない。

昨日手紙が届いた。
音楽教室での初めての私の生徒からで、当時の楽しかった思い出が綴られていて、こんなタイミングでこの手紙がとどいたのもなにかのめぐり合わせかなと。
しかも、もうひとり、やはりこの教室で教えていた生徒からお茶のお誘い。
教師と教え子と言っても相手は立派な大人だから、話していても面白い。
一方的にこちらが教えるのではなくて、お互いに影響を受け合う。
というか面倒見られっぱなし。

毎年夏に越後湯沢で合宿をするのだけれど、今年は都内で一日中練習をする「都内合宿」になった。
10時から17時近くまで、みっちりと練習が続いた。
終わってから、自由が丘のイタリアンでワインを飲みながら盛り上がって、いつまでも年代を超えた友人ができるものだなあとしみじみ思った。
もう教師と生徒というより、同じ音楽を作り上げる仲間としか見えない。
最近かれらも長年やっている経験から、様々な意見を言うようになった。
初期にはなにを言っても通じないこともあったけれど、いまや自分たちで考え、試し、決定することもある。
成長したなと思う。
全員が高IQの集団だから、そのうち私の出番もいらなくなることを期待している。

年取って仕事ができなくなったらこのアンサンブルに混ぜてもらって、トチトチとヴァイオリンを弾かせてもらうかもしれない。
しかし、その頃には彼らはいっぱしの腕前となって、肩たたきされないように、ようし、婆さんも頑張るっきゃないか。

15日、代々木上原のムジカーザでブラームスのソナタ1番。
27日、東京文化会館小ホール、古典音楽協会定期演奏会でヴィヴァルディの協奏曲「愛」を演奏します。












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