2020年9月4日金曜日

浅間牧場へピクニック

 昨日はやや曇り空だったけれど、今朝は目が覚めたら素晴らしいお天気。今9時半の時点で雲一つない晴天。今「くも」と入力したら変換予想で「くも膜下出血」と出た。なんじゃこれは。縁起でもない。午後から雨の予想もあるというので晴れているうちに浅間牧場に出かけることにした。軽井沢のY子さんがお弁当を作ってきてくれるそうで、私はキャベツとパプリカをレンチンしてドレッシングであえて待っていた。

それにしても暑い!湿度が高いので余計感じる。

今年の暑さで思い出すのは、今から約30年ほど前。私はそのころ仕事で悩んでいた。今でこそ人前で弾くのはうれしいし練習さえ完璧にしてあれば、それほど緊張しない。しかし、そのころは私は弓を持つ方の右手が震えるという悪癖があった。時によるとオーケストラの中でそのことが原因でやめてしまう人がいるくらい、一種の職業病となっていた。たぶん私たちは基礎的な技術を学べなかったのだと思う。当時は教師も弟子も技術的には手探り状態で、日本の技術教育がいかに遅れていたか、そういう人が多かった。その中の一人がこの私だった。

自分で悩みぬいた末、様々な練習をしては失敗したり、静かな長い音を出すときは白い音符の2分音符や全音符を見るとか顔が青ざめることもあった。今の人たちは最初から良い技術を教えられ、物おじしないためにそういう人は、まず、いないと思うけれど。戦後のどさくさでちゃんとした技術が教えられない教師も中にはいたということで、時々無理に変な形での運動を教えられたものだった。まして私の様に最初からヴァイオリン弾きになるつもりのない子供にとって良い教師に巡り合えるはずもなく、見様見真似、ほとんど独学と言ってもよいほどのひどさ、それでいざステージに立つと緊張して腕が硬くなり震えてしまう。ただし、海外の一流オーケストラでも弓が震える話は聞くから、技術だけでなくメンタルのせいかもしれない。

そんなことで悩んでいたので私は瞑想を始めることにした。なんとかメンタルを強くしないとこの悪癖は治らない。長いセミナーを受けてようやく震えは収まった。瞑想を始めたその年の夏は、今年の様に異常に暑かった。一般家庭に今ほどエアコンが普及していなくて、私の家もそのうちの一つ、ある時瞑想をしていたら意識は瞑想状態に入っているのに暑さはちゃんと感じる。これを通り過ぎれば暑さも我慢できるのだと思うけれど、まだその域に達していない。すると私の中からもうひとりの私が抜け出て部屋のドアを開けに行ったのだ。

そこで本当にドアが開いたのならオカルトだけれど、実際は開かなかったからまだまだ修行が足りなかったようだ。よく言う幽体離脱?瞑想を始めて2回ほど体験をしたことがある。瞑想をしている自分を上から見下ろしている自分。あらあら、足が開いているじゃない、みっともない、なんて思っている自分がいた。わたしの場合どこまでも色気がないのが残念なところ。

私の人生でとても役に立ったのが瞑想だった。心がいつもざわついていて毎日の仕事があまりにも忙しく、自分を見失うことが多かった。そんなときに瞑想状態に入った時の心の静けさを思い出すと胸からつかえが落ちるようだった。その後の仕事でも世間の風は強かったけれどなんとなく乗り越えられた。音楽事務所の社長によく言われた。「nekotamaさんは打たれ強いねえ」自分の息子くらいの人たちと仕事をしているとなかなかシビアな場面になることが多い。彼らにしてみれば、私がいつまでも仕事をやっていることが自分たち世代の仕事を減らしていると思っている。椅子が一つ空けば若者が一人仕事にありつけるのだ。

そろそろ引退なさったら?なんて言われることもあった。それでも仕事は来る、私に頼むのは今までの実績があるからと自負してありがたく引き受けることにしている。今やっと仕事から離れてこうしてピクニックを楽しめるのも、その時々を精一杯に生きたから、しかし、幽体離脱したもうひとりの自分は言う。あなたねえ、お気楽で使いやすかったのよと。自分の力量を知っているから威張らない、ギャラについて文句は言わない。遅刻しない。使いやすいよね。

さて、本題の浅間牧場へのピクニックは大正解。気持ち良い風が吹き抜ける牧場は日差しが強く牛さんたちはほんのわずかの木陰に丸くなって集まっている。一面の草原で木が少なく、日差しは容赦なく照り付ける。丘の上のあずまやに数人人が集まっている。ここしか日陰がないから、私たちもちょっと失礼して腰掛けさせてもらった。空はすでに秋の色、雲が沸き立って間もなく雨になりそうな。Y子さんのお弁当はおかずが少しずつ、いろいろな種類が入っていて、おいしかった。特に野沢菜の漬物を炊き込んだごはんが最高!こういうところで食べるのは久しぶりだけれど、本当に良い。

コロナでこういうことを再認識した人が多いようだ。私たちもずっと以前に忘れてしまったほんの小さな幸せを今自分の手に取り戻そうとしている。


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