2020年9月7日月曜日

アンサンブル・フリーク

こんな森の中まで来てくれたのは弦楽アンサンブルのメンバー。悲しいことに今回は全員とはいえない少人数になってしまったのは、もちろんコロナウイルスのせいで公共施設が使えなくて練習場所の確保ができなくなったこと。この弦楽アンサンブルとその関係者からは感染者は出ておらず、彼らは非常に良識のある人たちなので予防には協力的。だからと言って絶対安全とは言い切れないけれど、少なくとも感染を怖がるということがまず大事なのではと思う。

自分は絶対に感染しない、感染するのは怖くないなどという人はちょっと敬遠したい。私は最初のクルーズ船の報道を聞いた時から怖かった。これはただ事ではないと思った。決して近寄ってはならないとも。

森の中の家の今回の訪問者たちは元気溌剌、私が以前講師をしていた音楽教室の教え子たち。同じメンバーでこれほど長続きするのは珍しい。途中で多少のメンバー交代があったけれど、ほとんどの人たちが辞めないでいる。なにか決定するときも全員が意見を言える雰囲気なのが長続きの理由かもしれない。

自宅から車で来る人、新幹線で軽井沢からレンタカーに乗り合わせてくる人などがニコニコ集合。それと追分に住むヴィオリストの友人も加わってくれて、このノンちゃんの家に音楽が鳴り響いた。この家は吹き抜けと木の壁で、とても良い音がする。ノンちゃんはこの家で小さなコンサートを開くのが夢だった。けれど、ノンちゃんが生きているうちは私は忙しく仕事をしていて、ノンちゃんの夢をかなえてあげられなかったのが悔やまれる。

家中の窓を全開にしても、どこからも苦情はこない。森の動物はびっくりしていたかもしれない。みなマスク着用。鬱陶しいけれど仕方がない。今回流れてしまった発表会で弾く予定だったドヴォルザークの弦楽セレナーデがメインで、今年弾けなかった分の楽章と来年予定していた分を合わせて初見で譜読みしたり、出来上がった楽章を通して弾いて彼らの力量がたいそう上がったことを示した。

以前だったら初見はおろか譜読みしてきても、最初はガチャガチャ。私の言う「この世のものとは思われない音」で、終始した。今はこうして初見でもなんとか曲がまとまって通して弾ける!これはたいした進歩です。個々人の技術が上がったのと、アンサンブルを心から愛する気持ちの表れ・・と言いたいところだけれど、彼らの目的は練習後の飲み会にあるような気がしないでもないこともあるかもしれないかも、むにゃむにゃいやはや・・・・飲むために弾く、それでも良いのです、音楽やワインを愛するのは生きることを愛すること、人生の質を豊かにすることと通じるので。

彼らは音楽も人生も愛することに長けていて、鬼教師の罵詈雑言を耳をスルーさせる技術にも長けている。一般社会ではエリートクラスなのに、こんなことでなぜ叱られなければいけないのか、疑問に感じることもなさそうな。たぶんそういう我慢強さが彼らをエリートに仕立て上げたのかもしれない。みんな偉い!

午後からたっぷりと弾いて、近所の食堂のテイクアウトのお弁当が夕飯。大いに飲んだあとは大騒ぎしながら暗い森を抜けてホテルに帰っていった。懐中電灯の光で照らしても足元が覚束ないほどの真の闇。都会で暮らしたらおそらく絶対にお目にかかれないほどの。もっとも闇ではお目は役立たない。

楽しそうだなあ。取り残された私はしょぼん。うるさいので押し入れにずっと隠れていた猫はニコニコ。

次の朝はもう一度昨日の復習と次の楽章の初見、驚いたことにその後、3つの楽章を通して弾いた、弾けてしまったのだ。今回、彼らは遊びにきたのだと思っていた。けれど、目的はレッスンだったらしい。私はレッスンをしないで一緒に楽しく弾いていたけれど、彼らはそんな時間の無駄はしない、あくまでもエリート族の態度なのだ。あらま、それは失礼しました。それならいつもよりずっと手ぬるかった。ビシバシしごけばよかった。しかし、フィンランドのようなと言われるこの美しい森の中で、教師の理不尽な言いがかりを聞きたいとは物好きな。

シメはバーベーキューと思っていたらあいにくの雨で、家の中で焼き肉に早変わり。大勢で食べるご飯は美味しい!!!!








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