2016年10月13日木曜日

森からのお誘い

今年ほど雨が続いた夏を私は知らない。
秋になっても毎日雨続き。
やっとここ数日青空が見えた。

夏のコンサートの後もいくつかの本番をこなして、思いのほか疲れていることに気が付いた。
もう若くはない。
疲労がズシリと体の底に溜まっている。
見た目は小柄で若造りだから、帽子を目深にかぶって顔を隠せば年はごまかせる。
体型でばれるかも、う~ん。
顔を隠して背筋を伸ばし、しゃきしゃきと歩けばなんとか年齢詐称もできるけれど、内部から来る相応の経年劣化には対抗できるわけではない。
ひどいのは脳の中がぐちゃぐちゃ。
疲れて、そろそろ森が恋しくなって来たら、北軽井沢へのお誘いの電話。

今年も八ヶ岳音楽祭に出演する気でいたけれど、この春、音楽監督からの出演依頼に、なにか気がのらずお断りしてしまった。
とてもありがたいけれど、もうオーケストラで弾く気にはなれない。
あまりにも人が溢れ音が溢れ、なにかしんどい。
しかも目が悪くなって楽譜が見えない恐怖と戦うのは、もうたくさん。
八ヶ岳で演奏した後で北軽井沢に回るというのが、ここ数年のパターンだった。
北軽からもみんなで聴きにきてくれた。
今年は私が出ないので、聴きに行くのは中止になった。

あれほど好きだったオーケストラがこんなに気持ちの負担になるとは、夢にも思ったことがなかった。
たぶん今まで好きだった人に醒め始めると、こんな気持ちなんだろうなと想像する。

少し病んでいるようだから、森の木々に癒されてこよう。
土曜日に出発、しばらくはヴァイオリンを弾いて美味しいものをいただいて、ぼんやり森を眺めてくるつもり。
私の居候先は人形作家のノンちゃんの家。
紅葉の季節にはカラマツの葉が夕日に輝いて、ハラハラとおちる。
そのきれいなことといったら、夢の中にいるような。
お隣さんの高級レストラン顔負けの料理をいただいて、お酒を飲み長細いカラマツの葉の降るのを眺め、静かな時を過ごす。
いつもは賑やかな話題満載の食卓が、この時には皆無口になる。
若いころには味わえなかった、至福の時。
歳をとるのも悪くはない。

先日の北軽井沢のコンサートの前夜祭で、お隣さんが美味しいローストビーフをごちそうしてくれた。
有名レストランも顔負けの、素晴らしさに皆おどろいた。

今日は何を食べようかと冷蔵庫をあさっていたら、ビーフの塊が出てきたのでそのことを思い出した。
そこで私も作ってみようと思い立った。
お隣さんのようにはとても出来ないけれど、追分に別荘のあるヴィオリストのKさんが作ってくれた、焼かないローストビーフなら私にも出来るかも。
それがとても美味しかったので、真似してみよう。

まずフライパンで肉の表面を焼く。
全体に焼き色が着いたらフライパンから取り出して、ジップロックのビニール袋に入れ、熱いお湯を張った鍋へ放り込む。
沸騰しない温度だから煮るわけではない。
そしてしばらくお湯につけて出来上がり。
このやり方を聞いたときには、すごい!と思った。
彼女のローストビーフは中がほんのりピンクで、とても美味しかった。
同じようにできるかな?

なにごともいい加減な私のことだから、鼻歌交じりにお肉の表面を焼いてからお湯に放り込む。
Kさんはお湯の温度は何度で何十分とか言っていたけれど、もとよりそんなことは覚えてはいない。
時々熱いお湯をつぎ足す。
その後は、お湯に浸けたことすら忘れてしまった。
これがよかったらしい。
出来上がったロースト(?)ビーフは中がほのかにピンクでとても柔らかく美味しくできた。
偶然に出来上がったので2度と同じものは作れない。

お隣さんがこれを聞いたら、ホントにいい加減なんだから!と叱られそう。
頭の出来が違うのだから、許してほしい。

さっきノンちゃんから電話があって、今年はまだ紅葉していないとの悲しいお知らせ。
雨が多すぎたからね。
11月初めに東北に行くので、そこに期待しよう。
とても寒いというから、暖炉でまきを燃やすのが楽しみ。
































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