2017年3月23日木曜日

ナマケモノの勧め

私の家の最寄り駅は、各駅停車しか停まらない。
一つ先の駅は、広大な工場の跡地に高層マンションが何棟も立ち並ぶので、何本もの線が乗り入れる特急の停車駅となって新駅もできた。
それで、どこへ行くのも便利だけれど、それらの線を使うには最寄り駅から一駅乗らないといけない。
それで最近は健康のためにも、その一駅をなるべく歩いていくようにしている。

ほぼ三十分ほどなので往きか還りか、どちらか片方を徒歩にする。
その時の時間と天候によって決める。
夏の炎天下は辛いから夕方になる帰りに歩くとか、早朝なら歩くとか、還りはバスに乗るとか色々。

最近、往路を歩いて買い物に。
帰りはバスで帰ることにしていたけれど、その近所で少し買い足すものがあった。
それで駅から離れたので、そのまま家に向かえばいいかと思い復路も歩くことにした。
それがいけなかった。
いつもの倍歩いたので、途中足が耐えられないほど痛くなった。
それでも駅からは離れてしまったので、もう一度駅に向かう元気もない。
トボトボと足を引きずって途中のベンチで休み休み、やっと家に帰る頃に踝が腫れてきたのがわかった。
その日は湿布して、次の朝は少し痛みが引いたけれど、まだ少し腫れているようだ。

一時期、一日一万歩かないといけないなどと言われていた。
テレビや雑誌などで盛んにそういうことを言うので、そんなものかと思っていたけれど、明らかに一万歩では疲労が激しい。
それで自分は根性がないと思ったけれど、半分に減らしたことがあった。
一万歩も歩くと、その日一日なにもできない。
毎日続けると、疲労のために体調を崩してしまう。
元より意志薄弱を自認しているから、そういう時にはすぐにやめてしまう。
楽しくなければ続ける意味がない。

最近ではほんの二十分歩けばいいということになったようだ。
コロコロと言うことが変わるので、こちらはどうしてよいのやら。
歯磨きにしても、以前は食後三分以内、三分間、一日三回と言われていたのが、最近は食後すぐに磨くのはいけないということになってきた。
私は原始的だから歯磨きもいい加減、磨きたくなったら磨く。
それでも虫歯もなければ入れ歯もない。
すべて自歯で、すこぶる健康。

学者さんたちは一生懸命研究しているかもしれないけれど、知識のない私たちは正しいか正しくないかの判断は自分でしなければ、そのように翻弄されてしまう。
結局自分が一番心地よいことが良いのではと最近思う。
毎日食事に気を遣い健康のために運動して、健康オタクになるとがんじがらめ。
結局神経が疲れるから、なんにもしないのがベスト。

歯を食いしばって走っている人をよく見かける。
早朝公園に行くと、たいてい2、3人はそんな人に出会う。
心筋梗塞を起こさないように祈る。

以前オリンピックの出場権をめぐって騒動があった。
結局、野口みずき選手が出場したものの、練習のし過ぎで故障。
彼女の気持ちは痛いほどわかる。
自分が選ばれたことへの責任感でがんじがらめになって、どんなに練習をしても不足しているとしか思えない。
疲労がピークに達しているのに練習をやめることができない。
体は悲鳴を上げているのに、心は満足できない。
そんな状態だったのだと思う。

怠け者の私も、長い演奏経験のうちにはそんなことも何回かあった。
いくら弾いても満足できない。
やめないと筋肉を壊すとわかっていても、やめられない。
演奏会当日、音が出なくなってしまうこともあった。
オーケストラ入団当初、山のような楽譜を抱えて毎日譜読み。
読んでも読んでも、新しい曲がせまってくる。
一晩寝ないで練習したら、本番で目が見えなくなって上手く弾けなくて、それはそれは落ち込んだことも。

頑張らなければいけないときも確かにある。
けれど、人生長い。
長すぎるほど生きた今だからこそ言えるけど、そんなに急がなくてもずっと続けていればいい。
時には頑張ることは必要だけれど、急がない方が良いということが最近やっとわかってきた。
ただし、そういう生き方をすると世間の評価は低くなることは否めない。
自己満足するか、世の中での評価を高くするかは自分次第。
私は世間的には過去の人になっているのに、演奏している今の自分が一番幸せ。




















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