相続のための最終的な書類が揃い、あとは金融機関を回って通帳の凍結を解いてもらうだけとなった。
法定相続情報証明と遺産相続協議書と全員の印鑑証明書、被相続人の通帳と印鑑、相続人の通帳と実印、それだけあれば完璧。
その頃私はなにがなにやらわからない状態で、一体それがどういうもので、どこにいけば手に入れられるのかわからなかった。
あたふたしているうちに日がどんどん過ぎていった。
とりあえず、税理士の言うように遺産相続協議書を作ってしまった。
これは遺産の分け方を相続人全員で協議して、決まったことを記すもの。
賛成が得られれば署名と実印を押して貰えるけれど、異議を唱える人が多いと聞いたから、もめたらどうしようかと、それも心配の種だった。
これがまず最初の躓き。
万一ほかに相続人が見つかったら、あれほど苦労したのが水の泡。
もう一度最初からやり直しとなると、又実印をもらうのに走り回らなければいけなくなる。
税理士が言う「それは大変だあ」状態になる。
大変だじゃ無いでしょう。そうなったらどうするつもり?と訊きたい。
夜中に目がさめるとそのことが心配で眠れない
まずは相続人の数を調べ名前を特定していく仕事から始めるのが筋だったのに、いきなり最終段階の書類を作ってしまったのだった。
それがドキドキ・ハラハラの原因になった。
親戚と言っても自分の血筋ではないから、情報が入らない。
戸籍謄本に私の知らない兄弟や姉妹の名前が載っていて、もし、その人達に子供がいたら相続人の一人となるわけで、全員の戸籍謄本が集まるまではしんどかった。
今住んでいる住所に本籍が無いと、本籍のある役所に頼んで謄本を取寄せないといけない。
その場合は委任状をもらって電話で請求できるのだけれど、まず委任状をもらい、役所に電話して・・それだけで1週間は軽く過ぎてしまう。
やっと集まって銀行に持っていくと、これではまだ足りないと言われる。
それならいっぺんに全部言ってくれればいいものを。
何回も書類集めに奔走するはめになった。
もうだめと思ったら、知人から助言をいただいた。
それが法定相続情報証明。
それは相続人全員の情報を一纏めにした書類で、法務局で出してもらえる。
疲れ果て、税理士にこういう書類を作りたいと言ったら「ほう、そんなのあるの」
頼むから、寝言言わないでちょうだい。
あなたが私の相続手続き引き受けるって言ったのよ。
それで司法書士を紹介してもらって、やっと一筋の光が射してきた。
この人が今までわからなかった親戚の戸籍も取り寄せてくれて、法定相続情報証明が出来あがった。
その元となった謄本の量が分厚いので驚いた。
たった1家族の2代ほど前に遡っただけなのにこの紙の量。
それだけの量がたった2枚にすっきり収まった。
法定相続情報証明と遺産相続協議書を持ってゆうちょ銀行に行った。
窓口の太ったおっさんが、私が持ってきた書類の量が異常に少ないのを見て、この人は書類を持たないできたと思ったらしい。
「ゆうちょ銀行からの手紙が届いてませんか?そこに何と何を持ってくるように書いてあったでしょう。届いていませんか?」
「ええ、届いていますよ、その手紙を持ってこないといけなかったの?」と私。
おっさんはなおもしつこく「届いていませんか?なにと何を持って・・・」と延々と言うから、こちらはポカーン。
なにを言ってるのかしら。
「だからここに全部ありますよ」
遮ってファイルをわたすがなおも喚く「とどいていませんか」「なにとなにを・・・」「とどいていませんか」「なにとなにをもって・・」
壊れた機械のように。
とにかく持ってきたものを渡すと「確認に時間かかりますよ」ですって。
何言ってるの、確認の結果が全部この書類に書かれているのに。
待つこと30分、大汗かいておっさんはどこぞに電話している。
なるほど、法定相続情報証明を知らない銀行員がいると聞いていたけれど、そのおっさんもそのクチだったのかと納得。
去年施行されたもので、まだ世の中にあまり知られていないそうなのだ。
面白いからしばらく観察していると、ばたばたと窓口にきて「失礼しました!」
それからは何回も彼の口から「失礼しました」
「それで?なにを確認していたの?」私も人がわるい。
これも数回繰り返す。
もう1時間以上過ぎてしまった。
それからすっかりおとなしくなったおっさんとずっと経過を見守っていた案内嬢に丁寧に挨拶されて、アメまでもらって帰ってきた。
アメでごまかすなよ。
勉強しなさいよ。
常に世の中変わっている。
ほかの金融機関では、すぐに対応してくれた。
まさに水戸黄門の印籠。
これで一つ問題は片付いた。
さて次にも厄介な問題が次々と待ち構えている。
これだから人生面白い。
これは私も知りませんでした、「法定相続情報証明制度」。
返信削除2017年から始まったのですね。
nekotama様、いいお知り合いがいてよかったですね。
nyarcil様でもご存じないですか。
返信削除お父様が弁護士の女性が教えてくれたので、本当に助かりました。
そのお父様が亡くなって彼女が相続の手続きにいったら、銀行員も弁護士ですら知らないひとがいたとききました。