2019年4月20日土曜日

工事の恩恵

私は小さな家で生涯を過ごすつもりでいたのに、私の怪しげなガクタイ稼業を心配した親がわたしの家を小さなアパートに作り変えてしまった。
これが今、私の負担となってのしかかってくる。
遺産相続したら沢山のローンがついてきた。
今でも二部屋しかない貸し部屋のオーナー。
これがまあ、儲からないこと!

それでも仕事を引退してからは多少のお小遣いとなるので助かっていたけれど、それを上回るメンテナンスやリフォームに追われ、もはや赤貧洗うが如き状態。
ここ数年、家賃を上回るメンテナンス費が覆いかぶさってくる。
築20年、壁のタイルにヒビが入りコーキングはガビガビ、屋上の塗料はヒビが入らないうちに塗り替えないと水漏れの原因となる。
と、業者に脅かされて、それもそうだと仕事を依頼したら、目が飛び出るような出費がここ毎年続く。
安価ではないが仕事はきっちりしてくれる業者なので安心して任せているし、今やっておかないと、この先ボケてからでは遅い。
今はぼけていないということをアピールしているのですが、そう思っているのは自分だけということもありそうで。

店子が出た後のリフォームは完璧にするので、いつでも喜んで借りてくれる人がすぐに見つかる。
入ると長く借りてくれるので、家族同様になる。
出た人たちが懐かしがって花の季節に訪れてくれることも。
コンサートに来てくれる人もいる。
これは大家としては嬉しい。
今もネコ好きな店子さんたちが、わたしの留守のときには野良たちに餌をやってくれる。
うちの猫の餌やりも引き受けてくれる。

以前は一階に住んでいたので玄関を開ければ、近所の人に会うことも多かった。
けれど、改築して2階に住むようになると、途端に近所の人と話す機会が減ってしまった。
今回壁と屋上のメンテナンスのために足場が組まれて、駐車場はゴミの山。
粗大ごみに出すために整理をしていたら、いろいろな人が立ち止まる。
豆柴のサクラちゃんが、胡散臭そうにわたしの猫臭い手を嗅ぎ回る。
ビーグルやジャックラッセルテリアも顔なじみ。
私を見ると興奮して大騒ぎする柴犬もいる。
飼い主がどうしたんでしょうねと訝るくらいだから、これは前世の因縁があるに違いないと思っている。

毎日我が家の前の道を掃除してくれる奥さんが、大きな声で話しかけて来る。
その人は毎朝、散り始めたサクラの花びらや、秋には落ち葉などをせっせと掃いて道はいつもきれい。
訊いたら今年90歳だそうで、顔はツヤツヤだし声に張りがあって、とてもそうは見えない。
若い頃からスポーツをやっていて、今でも卓球やボウリングに通っているという。
あなたもやりなさいよ、たのしいよー、とさそわれたけれど、あいにく私は球技が苦手なのだ。
でも行ってみようかな。

卓球も苦手、ボウリングとなるとからきし。
ボールが重すぎて、ドタドタとレーンに運ぶとボトンと手からボールが落ちてゴロゴロ、ストン、見事にガータ。
ゴルフをやれば下を向いているうちに気持ち悪くなる。
なにが面白くてボールを飛ばしているのか。
私は自分が飛んでいるのが好き。
雪の斜面を転げ落ち、ドボンと海に飛びこみ、馬の背中ではねとび、自力を使わずに自分が飛び跳ねられる他力本願のスポーツ大好き。
生まれてからこのかた、他力を頼みの綱と生きてきた。
その姿勢がスポーツの好みにも表れる。

声の大きい奥さんは、とにかく身体を動かすことねと言って帰っていった。
耳が痛い。

工事のために水が必要なのに、うちの駐車場には水栓がない。
それでお隣さんの水道を借りることになった。
挨拶に行くと、しばらく見ないうちにすっかり年をとってしまった奥さん。
あちらから見ると私もそうだと思う。
しばらく立ち話。
駐車場に車を停めている人たちも、工事の日程に合わせて車の移動をお願いする。
なにやら面白そうに付き合ってくれる車主たち。
こんなことでもないと近所付き合いが過疎になる。
周囲の家の人達は相変わらず親切で、行くと歓迎してくれるのが嬉しい。

近所には高層ビルが林立し、あっという間に人口が増えて、最寄り駅は毎朝パンク状態らしい。
そんなに沢山の人がいても、高層ビルに住んでいたら孤独な人が増えるかも。
下に降りていって活動できる人はいいけれど、籠もってしまったら・・・だいじょうぶなの?

そうそう、球技は苦手だけれど、玉突きは面白いと思う。
ただ身長が足りないので、それがハンディになるかも。
どこかで教えてくれるところはないかしら。











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