2019年12月5日木曜日

素敵な高齢化

熱海でのコンサートが終了、今月はあとひとつ本番を控えているけれど、山場は超えた。
先日は音友ホールのコンサートを聴きに行った。
このホールは音楽之友社のホールではあるけれど、音友が作ったにしては音響が気に入らない。
こういう音が好きな人が中にはいるかもしれないけれど、私はどうもあまり好きではない。
やたらに高音がキンキン響くし、客席の床がフラットなので後ろの席はステージがほとんど見えない。
日本の音楽界を牛耳っている雑誌の持っているホールなのだから、もう少し良いものを作ればよかったのに。
私は口は出すけどお金は出しませんよ。
だって持っていないもの。
素人考えだけど響きが今ひとつなのは、多分ステージの背景に使ってある反響板の素材のせいではないかと思う。
見かけはとても良いのに。

ピアノはベーゼンドルファー、深沢亮子さんの演奏は久し振りに聴く。
私がオーケストラで弾いていた頃はよく協奏曲の伴奏をした。
美しい人が弾くモーツァルトはいつも素敵だった。
今はかなりのご高齢と思うけれど、相変わらず上品で美貌も健在。
プログラムの最初に彼女のバッハ。
その後は恵藤久美子、中村静香、安田謙一郎諸氏のデュオやソロなど、深沢亮子と室内楽の仲間たちと銘打ったアンサンブルはそれぞれ楽しく、ベテランぞろいのメンバーの力量を見せられた。
この方達は私とだいたい同世代。
彼らの方がほんの少しお若い。
皆さんすでに白髪になり、ステージ脇の階段が難所になるお年頃。
なのに、演奏は少しも衰えていない。
日本の音楽界も層が厚くなって、若者だけでなく高齢になっても音楽への情熱が感じられる豊かな実りの時期になったのかと嬉しく思う。

かつて、私が音楽界に船出した頃は、50歳くらいになったプレーヤーは若者に追い立てられるようにステージを去っていった。
それほど日本の音楽界は急速に発展したのだと思う。
あっという間に若い優秀なプレーヤーが輩出してきた。
その頃の日本の弦楽器界は世代交代が著しく、今回のこのコンサートの出演者たちが楽壇に躍り出て海外でも活躍、今に至ってもなおこうしてステージに立って、揺るぎない地位を確保している。
見ているだけでも素敵な光景。
殆ど皆さん後期高齢者かそれに近い。
これはすごいことです。

数日前、都内某所の邸宅の私設ホールでのホームコンサート。
シュトュットガルト室内合奏団の元メンバーである、ボグナーさんというチェリストの演奏を聴かせてもらった。
年代も私と近いか、少し若いくらい?
ヴィオリストの林徹也さんが同じ合奏団で弾いていて、ボグナーさんとはお友達。
私も日本に帰国した林さんご夫妻とは、一緒に弾いたり遊んでいただいたり、それでコンサートのお知らせをいただいた。

ボグナーさんはサンタクロースに似た、恰幅の良い優しそうな方だった。
豊かな音が心地よく、和気あいあいとした雰囲気のステージと客席。
林さんの奥様の通訳で、お話を交えてのひととき。
そこに先日の私達の青葉台のコンサートを聴いたという人がいて、またそれで「あらあら、先日はどうも」と世間は狭い。
ボグナーさんの先生のそのまた先生の先生・・・が、あの有名なポッパーだそうで、なにか急に親しみが湧く。
こうやって小さい会場で聴くコンサートは本当に楽しい。
音楽はどこで聴いても演奏しても、平和な世界を創り出す。
殺伐としたニュースの多い世の中で、こんなに素敵な世界に身を置けて、私は本当に幸せな人生だったと思う。
だったと過去形で言うけれど、もう少し身を置かせていただければ嬉しいです。














2 件のコメント:

  1. 高齢=好齢になりたい。
    けど、無理か?

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  2. そろそろ降霊とか交霊とかのほうが似合うかも。
    ほら、貴方の後ろに誰かが・・・きゃああ~なんてね。

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