2014年10月9日木曜日

梯 剛之ピアノリサイタル

紀尾井ホール
モーツァルト 幻想曲ニ短調
モーツァルト ロンドニ長調
シューマン  子供の情景
ショパン   24の前奏曲

今日のプログラムは私の大好きな曲ばかり。
特に「幻想曲ニ短調」と「子供の情景」は私も自分で弾きたいと思って、いつもピアノの上に楽譜が置いてある。
置いてから数(十?)年経ってしまい、まだ猫にも聴かせられない。

数年前聴いた時、剛之さんは音を模索していた。
ベートーヴェンプログラムだったけれど、絵の具を塗り重ねるように音を重ねて、どれだけ深い音に出来るか、そんな感じで模索している時だった。

恐ろしいほどの集中力と圧倒的な音量に、聴いている方も息をつめていた。
どういう奏法なのだろうか、やはり若いときからヨーロッパに渡って勉強したために、教会に鳴り響くパイプオルガンをイメージするような、深く力強い音がしたのを覚えている。
その時は音を追求する余り、音楽自体よりも響きに陶酔しているようにも見受けられた。

それからどれだけ経ったか忘れたが、今回はその上に更に透明感のある弱音に磨きがかかって、成熟の度合いを深めたことに成功している。
そして音楽も構成が浮き彫りになって、流れも軽くなり、いよいよ大家の風貌を備え始めた。
モーツァルトは元々得意の分野かもしれないが、弱音の美しさとパッセージの鮮やかな転がるように素早い動きは、本当に素晴らしい。
いつも毎回絶対、コンサートで居眠りする私が、全く眠らなかったことからも、どれだけ鮮やかだったか推し量って頂きたい。

特にシューマンは、この世から少し上の世界にいて、空間を漂って・・・もしくは深い地の底で安らいでいるような、そんな感じがした。
私は、深い瞑想状態に入ったような気がした。
コンサートを聴いてこんな体験は初めてだった。
彼の奏法は、一体どういう風になっているのか知りたい。
最弱音から最強音を出す時にも、体の動きはさして変わらない。
特に素晴らしいのはレガートで、まるで弓で弦を弾いているかのような、音色は一体どこから出て来るのか。

これが分かると、私たち弦楽器奏者にも奏法のヒントになりそうな気がする。





















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