2016年1月11日月曜日

ソワソワするおじさん

商店街を歩いていたら、足元に白黒ツートンカラーの子猫が蹲っていた。
こちらを見ているし、逃げないからそっと頭を撫でると、ニャーといってすり寄ってくる。
最近こういう猫を見かけると、今我が家にたった一匹しか猫がいないので、ノラなら連れて帰ろうかと考える。
うちのコチャビは愛想が悪く、抱っこしてもすぐに逃げる。
もう少し猫らしく、スリスリして欲しい。
もう一匹飼えば、そうしてくれるかもしれない。

見かけた子猫を抱き上げると、大人しく抱っこされたまま。
このまま連れ帰れるかどうか考えていたら、目の前の店の戸が開いておじさんが1人、ぬっと現れた。
こちらを嫌な目つきで見ているから、ノラに構うなとでも言われるかと身構えた。
しかし、なにも言わないからそのまま暫く抱っこしていた。
ノミやダニがいるといけないから、家に連れ帰ったら病院でケアしてもらおう。
今日は休日だから明日になるかな・・・と考えていた。

一度地面に猫を降ろして、頭を撫でながら「お名前はなんていうの?」と訊いたけど、猫はにゃあと言うだけ。
「お名前は?お名前は?」と繰り返していたら、又店の中からおじさんが出てきた。
「クロっていうんだよ」
あら、失礼、おじさんの猫でしたか。

あやうく誘拐するところだった。
さっきこちらを嫌そうに見たのは、自分の猫がやたらと愛想良く、他の人に抱っこされていたのが気に喰わなかったのか。
又は、誘拐されないか警戒していたのか。

気が気じゃなかったのだ。

私は黒猫が好きで、一度飼ってみたいと思っていた。
あるとき、全身真っ黒な子猫を拾って、当時4匹の猫がいたけれど、家に連れ帰って飼うことにした。
その子は雌猫だったけれど気が荒く、私は引っ掻かれ、他の猫にも果敢に立ち向かう。
他の猫は大人だったから、相手にもされなかったけれど。
1週間ほど経って、駐車場の隅で遊んでいるのを見たのが、最後だった。
忽然と姿を消してしまった。

心配でたまらず、家の近所中に尋ね猫の張り紙をした。
黒猫のイラストも添えた。
そして数日、おじいさんが訪ねてきた。
「もしかすると今うちに居るのがお宅の猫かも知れません。孫が拾ってきたので」
すぐ近所のその家に行くと、あの黒猫が赤いリボンを首に巻いて、我が家にいた時とは大違い。
ゆったりと幸せそうにくつろいでいた。
小雪ちゃんと呼ばれていた。
おじいさんは心配そうに「孫が可愛がっているので、この子をいただけないでしょうか」と言う。
様子を見ると孫は口実で、本当はおじいさん自身が最大級の猫なで声を出している。
猫の幸せそうな様子と、我が家にひしめいている猫4匹を考えて、手放すことにした。

その後も黒猫には縁がなく、今日見かけた猫も飼い主持ち。
黒猫は幸運を呼ぶと言うから、宝くじに当たらないのも、黒猫に見放されている私の運そのものかも。
もっとも、宝くじはたった一回しか買ったことがないから、今後せっせと買えば黒猫が舞い込んでこないとも限らない。

















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