またやっちまった!
夢の中で電話がなっている。電話に出ようと広いお屋敷の門から車寄せに向けて歩いている。どうやらここはイギリスの上流階級のお屋敷。門を入ると静けさが戻ってきた・・・ところで目が覚めた。夢で電話がかかってきたのだと思ったら、今度は本当に呼び出し音が鳴った。ああ、またやっちまった!
昨日寝る前に隣のレッスン室のセコムを点検しようと思ったけれど、たしかちゃんと外出のセットしたよね?と自分に言い聞かせて寝てしまった。この警報は生活反応の警報。一人暮らしで、万一誰にも知られず意識を失ってそのままになってしまったらいけないので、外出しているというセットがされていず12時間生活反応がなければ警報が届く仕組みになっている。実は前日も夜中に電話がかかってきたばかり。
レッスン室は階段の踊り場を挟んで居住スペースの真向かいにある。だから、ここはレッスンのとき以外は基本的には使わない。昨日は外出したので外出のセットがされている「はず」この部屋は使わなかった「はず」だから外出装置はセットされたままになっているものだと思っていた。思っていたではいけないので、時々夜中に点検しに行ったりすることもある。そういうときにはちゃんと外出セットがされている。昨日も「つもり」だったので寝てしまったら、真夜中の電話が。
外出のセットがされていないで、人が動くことで作動するセンサーが一定時間動かなければ、中で倒れている可能性があるとみなされる。猫が動いても反応してしまうのでは?と訊くと、猫くらいでは大丈夫だそうなのだ。二晩続けてのミスだったけれど、セコムさんは穏やかに対応してくれた。これが家族だったりすると「またほらそんなことばかりしていて」と叱られる。その点うるさい家族がいない分だけ心は平安なのだ。
夢の中のお屋敷は、最近アマゾンのプライムヴィデオで連続で見ているミス・マープルシリーズの影響に違いない。私は熱烈なアガサ・クリスティ~のファンで、すべてのミステリーは読破している。彼女の自伝的な小説などには興味がないので読んでいないけれど。その中でもミス・マープルはシリーズで映像化されているので、何回も見直してイギリスの上流階級のお屋敷に住んでいる気分になっている。
思い出してみると私は若い時からイギリスの映画が好きだった。イギリスの霧の中みたいにもやもやした映像や筋書きやらが性に合っているようなので。アメリカ映画のように色が鮮やかで話が割り切れていてというのではなく、見終わったあとになにかモヤモヤしたものが残る、その余韻が楽しい。フランス物などとも違った皮肉っぽい感じがあって・・・どう言ったらいいかわからないけれど、苦笑してしまいそうになる偏屈なユーモア感があって。
昔「マダムと泥棒」という映画があった。アレック・ギネス扮する銀行強盗と、少しボケていて警察に行っては宇宙人を見たとか言って訴える老マダム。彼女の言うことは誰もまともに取り合わない。銀行強盗団が大金をばらまいたところをマダムに見られてしまう。それでマダム殺害の計画を立てた強盗団4人はお互いに殺し合ってしまい、最後の一人は線路の切り替え装置の腕木に頭を打たれて死んでしまう。大金が残されてマダムは警察に訴えるけれど、まともに相手にされず「それはあなたがもらっていい」と言われて彼女は大金をせしめるという、ユーモラスな映画だった。調べてみたら1955年のイギリス映画、その年には私まだ・・・もう、生まれていた。そうよ、とっくにね。配役の中にピ-ター・セラーズの名前を見つけて驚いた。そんな古い人だったのか。
その映画の中で使われていた音楽がボッケリーニ「メヌエット」。強盗団のメンバーは4人。下宿しているのはマダムの家の2階。そこに楽器ケースを持って集まる。そしてレコードをかけては弦楽四重奏の練習をしていると見せかけて悪事の相談。ところがマダムは親切なのでお茶をいれてくれたりなにかと世話を焼きたがる。そのたびにレコードを止めて言い訳をするときのアレック・ギネスの表情がなんとも可笑しかった。楽器のケースの中には盗んだ大金が入っている。チェロのケースには、いったいどのくらいの金額が詰め込まれるのか、あんなにあったら、野良猫救済の家を建てるための広い野原が買えるに違いない。
子供の時からイギリス映画のほうが面白いと思っていたのは、私がひねくれたユーモアを好む性向があるからだと思う。日本の落語なども一捻りした落ちがあって面白いのに、最近のお笑いは外側で笑わすばかり。たけしなんかは見る影もなく老いて、早く引退なさいとおすすめしたくなる。それって自分もたぶん言われていることかもね。
ところでミス・マープルシリーズ、面白いからおすすめです。なによりもイギリスの田舎の風景がいい。数年前にイギリスへ遊びに行ったときも、映画などで見た昔の景色とあまり変わっていないようだった。この保守的な頑固さも今の時代貴重だと思う。
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