2020年12月25日金曜日

静かすぎるクリスマス・イブ

二匹の猫の仲裁でドっと疲れほんの少し昼寝のつもりが数時間眠った。目がさめたら世の中は日がくれかかっていた。 今日は曇天で少し寒い。それでノラが昼食前にベランダにやってきた。うち猫のコチャが少しずつノラに慣れて来たようで、最初の頃みたいな吠え方をしなくなった。ノラも安全な間合いを学習したらしく、この調子だともしかしたら案外早く仲良くなれるかもしれない。

昼寝をしたのでノラに餌をやるのが遅れた。外でまさか待ってはいるまいとベランダの窓を開けたら、居た。もうすっかり様子がわかったらしく落ち着いている。コチャは私が窓を開けるたびに様子を見にくる。今日は思い切ってご対面!一応コチャは怒るけれど、迫力がない。ノラは長年の世渡り上手が幸いして、だんだん核心に迫ってくる。コチャが自分の餌場で食べている後ろでこっそり自分も餌をもらって食べている。コチャは文字通りの箱入り娘。大勢の猫に囲まれても唯一人、押入れの巣穴の毛布の上で一日の大半を過ごしていた。ノラは様々な猫と遭遇しながらも、持ち前の社交性が幸いしてうまくいきてきた。これはノラの勝ちになるかな。だからといってコチャが意地悪されるわけではなく、ノラは本当に性格が良い子なのだ。私が数日家を空けるとコチャはすっかり神経質になっているけれど、ノラが一緒なら寂しくはないと思う。

夜になって、ああ、今日はクリスマスイブなんだとちょっとわびしい気分になった。いつもの年なら、なんだかんだ口実を作って友達が集まって賑やかに過ごす。今年は全く予定がない。昨日、英語の先生が「七面鳥を焼くので食べに来られない?」と言ってくれたけれど、家と家が遠すぎて少ししんどいからためらって結局行かないことにした。車で行けばワインも飲めないし。彼女は私がクリスマスもお正月も一人ぼっちと聞いて声をかけてくれた。七面鳥は4キロあって、それにクリスマス・プディングも焼くらしい。イギリスのクリスマスいいなあ。4キロというから以前飼っていた猫を思い出した。

4キロの雄猫はカーテン上りが得意で、スルスルと登っていく。上まで行くと両手の爪をカーテンの布地にかけたまま十分すぎる体重で滑り落ちてくる。布はひとたまりもなく縦に裂けてボロボロ。猫を飼う人は、コーヒーの中に猫の毛が浮いているのとか、ソファがボロボロになるのが平気でいられないといけない。うちの椅子は猫の爪とぎに使われて両サイドがフリンジになって垂れ下がっていた。

猫たちの騒動に巻き込まれたあとは静かなクリスマスイブ。今年は私だけでなく、大勢の人が一人ぼっちのクリスマスを送ったと思う。本来クリスマスはどんちゃん騒ぎの日ではなく家族が集って楽しく過ごす日なのだから、原点に戻れてよかったかもしれない。

数年前まで、毎年来日していたロンドンアンサンブルに付き合って、私はいつも12月は忙しかった。彼らと一緒に演奏するだけではなく、車で送迎したり練習の後の付き合いだったり、箱根が好きな彼らと一緒に箱根に泊まりに行ったり。そんなことも中心的な存在だったピアニストの美智子さんが亡くなって終わりとなった。彼女のご主人のリチャードは、いつもイギリスの家族から「クリスマスは今年も日本でなの?」と言われていたらしい。今では彼はご家族と一緒にイギリスでクリスマスを過ごしているのだろうと思う。「美智子のいない家は廃墟だ」と言っていたそうだから、一緒にいられる家族がいてよかったと思っている。外国で日本人が成功するには大変な努力が必要。特に音楽の本場はヨーロッパ。その本場で活躍していた美智子さんは、人一倍の努力をしたと思う。それが彼女の体を蝕んだのかもしれない。

家の冷蔵庫を漁っても、先日冷凍品を片付けたのでほんの少ししか残っていない。その中で正体不明のジップロックを見つけた。なにかの肉らしい。これを解凍して食べよう。解凍したらなんとまあ、どんぴしゃり!去年のクリスマス用チキン残り物だった。つい先日一年ぶりに解凍して食べきれなかった分。すっかり忘れていたのが出てきて一応形ばかりの一人クリスマス。ケーキはないからこれもカチカチに凍ったアイスクリームを食べた。このアイスクリームのカロリーを消費するのにどれだけ大変かと思ったけれど、ま、今日は自分へのプレゼントだと思ってと言い訳しつつぺろりと平らげた。明日の口実はなんにしようかと考えながら。

大家族で育っていつも暮れから正月はにぎやかに過ごしてきて、今こんなに静かな年末を迎えるとは想像もしていなかった。子供や孫に囲まれてにぎやかに過ごせたらどれほど楽しいかとも考えるけれど、これで良かったとも思える。もしたくさん人がいたらうるさくてかなわんと思っていそうで。それでも人間の言葉が話せる生き物と話がしたい。猫ではねえ。

特に今年はコロナのせいで、気のおけない人たちとも中々会えなくて本当に寂しい。いつも合わせてもらっているピアニストとも、なんだかやる気しないよねと電話で話した。今年中には新しい曲を一回合わせようと言っていたのに、年明けにしようということになった。その頃コロナの感染者数はどうなっているのかなあ。空恐ろしい蔓延の仕方で来年はどうなることやら。





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