2020年12月23日水曜日

悲しいノラ

コロナがらみの議員たちのやりきれない特権意識。毎日毎日テレビに向かって怒り狂っていても、ここに怒りをぶつけてもごまめの歯ぎしり。ドヨンと死んだ魚の眼をしたおっさんたちが頭を下げて心にもない謝罪。俺たちゃ運が悪かったよなあ、おい、などと後で飲みながらぼやいている姿まで目に浮かぶ。情けない。書いても書いてもきりがないから気分転換にうちのノラの話をしましょう。

毎日我が家のノラネコ食堂に現れて、最近は朝昼晩と3食のお得意様のノラ。穏やかで優しく臆病な女の子。彼女は数年懸りでやっと 私に抱っこされるようになった。それもほんの一瞬だけ。長い間他の猫や人間に意地悪されていたらしく、絶対に警戒を緩めない。それでも最近は我が家のベランダまで来るようになった。初めてベランダで食事をさせたら喜んで、自分はこに家に受け入れられたものだと思ったらしい。しかし、この家には先住猫のコチャが番を張っていた。

温かい床に足を踏み入れ、ああ、天国と思ったのも束の間、コチャの逆鱗に触れて惨めに外へと追いやられた。ノラがやっと部屋に入ってきたときに、うちの猫の攻撃からすぐに逃げ出られるようにと窓を開けておいたけれどあまりの寒さに耐えかねて閉めようとしたら、私の動向を機敏に察してあっという間に外へ出てしまった。それが2回続いたらもう家の中には入ってこない。野良生活で身につけた悲しい生活の知恵。面白そうに遊ぶのでしばらくかまってやっていたおもちゃ遊びも、もはや効き目がない。可愛そうでならないけれど、万一うちの猫になっても今までの自由がなくなってしまうのは彼女にとっていいことか悪いことか、判断しかねるところなのだ。

それでも毎日ベランダがお陽さまでいっぱいになる頃に、のんびりと寛ぎにくる。決して閉じ込められないので夕方寒くなると窓を締める。それが彼女にとっては私から拒絶されたと思うらしい。寒くなったら窓閉めるっきゃないでしょうが。私は体に毛皮がないから、冷えてしまうじゃないの。外でしばらく足踏みしなら鳴いているけれど、今まで暮らしていたところもあることだから仕方なく締めてしまう。

ある日彼女が部屋にいるときにやっと窓を締めて捕獲したと思ったら、そのパニックたるや恐ろしげに鳴く声に耐えられず結局諦めて外に出してやった。いつも思うのは、こうと決めたら相手に遠慮せず絶対に家から出さなければいい。けれど私は気が弱いから(猫に対しては)、つい見ていられなくて出してしまう。でも出してしまうと猫は警戒心が増大して疑り深くなってしまうのだった。逆効果と知りながらやってしまうのは愚かしいことだと思う。

猫にしてみれば、いきなり家から出られなくされてわけのわからない先住猫に脅され、それは恐怖だと思う。長年かけて築いた信頼関係がすこしばかり後退する。最初の日、彼女はもうすっかりここに住み着く気でいたらしい。しかし、あまりにも警戒が強くて窓が閉められない。私の動きを察知して逃げ場を確保するその機敏さと言ったら、さすが。少しでも私が彼女より前に窓に近づこうとすると、もう外に出てしまう。窓が閉まらないと私は凍えてしまう。閉めようとするとすぐに外に出るノラ。一度まんまと閉じ込めに成功したもののパニクるノラ、結局その日はついに夕方寒くなって外に出してしまったことが彼女にはショックだったのかもしれない。その時私が我慢して出さなければよかったのかな。

こういうときには断固として人間が決めたようにしないといけないと思うけれど、私は人にものごとを強要できない。自分がそうされたくないから。猫といえども多分嫌なものは嫌。そう思うとどうしても引けてしまう、この弱さが人生のすべてにおいて敗因なのだ。

ノラは長年人や他の猫にいじめられながらも天使のように性格が良い。しかも人の気持がちゃんと分かる。この猫がうちの猫と仲良くしてくれたら、私が留守の間コチャは寂しくないと思うけれど、頑なに拒否する。今までたくさんの猫を飼ってきたけれど、たった1匹だけ、すべての猫を受け入れる稀有な存在だったのがニブという雄猫だった。

ニブは我が家の駐車場の車のそばで、息も絶え絶えだった。痩せこけて鼻が鼻汁で塞がれて呼吸困難になっていた。しばらく動物病院のお世話になって我が家へ入った。本当に不思議な顔をしていた。目と目が離れていて、体はテリア犬のように筋肉質でガニ股。性格は穏やかでどんな猫も受け入れる太っ腹。なによりもその雰囲気は、家に来た友人曰く「まるで修行を積んだお坊さんみたい」

新しい猫が来ても絶対にいじめない。しかもうちの猫たちの保護者を自認しているらしく、外で犬がうちの猫に遭遇するとボディーガードよろしく追い払う。外で騒ぎ勃発、犬がニブに吠えている。私は飛び出していって犬の飼い主に言った。

「うちの猫をいじめないでください」すると「でも猫が・・・」と飼い主。「犬はちゃんとリードがあるのだから引っ張って連れて行ってください」すると「でも、猫が・・・」犬も飼い主もなぜか怯えている。するとニブは猛然と犬に飛びかかった。キャイ~ン!しっぽを巻く犬。そして「ほらね」と飼い主。わあ、恥ずかしい、ごめんなさい。

勇敢で男気があって物静かな哲学者みたいなニブ。人間の男だったら私は絶対こういう人がいい。「ニブ、来世でもし人間になれたら結婚しようね」と約束したけれど、来世でもし鼻水垂らした男が現れて結婚を迫られたら、うーん、どうしよう。少し考えさせていただきます。






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