2012年11月9日金曜日

岩崎淑 Music in Style

ピアニストの岩崎淑さんはの主宰するシリーズは36回目。今夜は「バリトンと室内楽の夕べ」と題して東京文化会館小ホールで開催。バリトンの河野克典さん、若手のヴァイオリニストの島田真千子さん、チェロの堀沙也香さんとの共演だった。
シューベルトの歌曲 楽に寄す 鱒など。
ベートーヴェンはアデライーデ 君を愛すなど。
それからスコットランド民謡集

私は故フィッシャー・ディスカーの大ファンだった。子供の頃から毎日学校から帰るとまずモーツァルトのシンフォニー40番を聴く。それが終わるとマーラーの「なき子を忍ぶ歌」を聴くのが習慣だった。フィッシャー・ディスカウは私にとっては音楽の神様。訃報を聞いた時には、心底がっかりした。モーツァルトの歌曲はヴンダ―リッヒを良く聴いていた。とにかく歌が好きで、とりわけこの二人には惚れ込んでいたから、車の運転時にもテープを回していた。もちろんベートーヴェンの歌曲も好きだったから、今日のプログラムはほとんどが私がいつも聴いていた曲ばかり。

後半は委嘱作品の青山政憲作曲「夢幻歌」-夢の中の設計図ー谷川俊太郎詩            
ベートーヴェンのピアノトリオ10番
同じベートーヴェン「連作歌曲集」

バリトンの高橋さんは素晴らしい歌手で声の出し方、音程の正確さ、どこも非のつけようがないけれど、フィッシャー・ディスカーとどこが違うのか考えた。殆ど完璧なのに何かが違う。そして気が付いたのは、日本人の発音はやはり少し浅いのではないかと思った。声にもっと夾雑物が混じってもいいのではないか。日本語の発音は平明で、少し深みが足りない。むしろ東北弁などの方があちらの発音に近いのではないか。青山作品は非常に美しく、絵で言えば水彩画と水墨画を行ったり来たりするような。現実と夢の交差したいつまでもその中に浸っていたいような、不思議な魅力をたたえていた。ヴァイオリンとチェロの二人のこの曲に対する集中も見事だった。

今日のコンサートに誘ってくれたのは東京ゾりステンで一緒に弾いていた吉川さん。彼女はイタリアと日本を行き来して演奏をしている。パワフルでチャーミングな女性で、私とはながーいお付き合い。会場に行く前にイタリアンレストランで軽くワインを飲んで、おしゃべりをして楽しんだ。

今日の淑さんの衣装の素敵だったこと!ローズピンクで、たぶんイタリアのシエナのデザイナーのものらしい。どうしてヨーロッパのデザインはこんなに素敵なのかしら。デコルテのカットの粋なこと。そして何よりも素晴らしいアンサンブルのセンス。本当に楽しいの一言に尽きるコンサートだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿