2012年11月23日金曜日

してやったり

かつて長いこと帝国ホテルの結婚式の披露宴で演奏する仕事をしていた。どの宴会も退屈で長ったらしく、新郎新婦そっちのけの政略結婚のような感じがしていたので、実は今日の披露宴も、もしかしたらそうなるかと危惧していた。友人の息子さんの披露宴。友人は先日イギリス旅行を一緒に楽しんだ美里さん。ご主人はある種の家元というか、江戸時代から同じ職種を代々受け継いでいる家系なので、その息子さんもいずれはその家業を継ぐことになる。結婚の披露と後継者としての息子さんを紹介する意味合いもあるパーティーだから、招待客も政財界の人が多い。なんと350人を超えるゲストが集まった。そんなわけでどちらかと言うと長いスピーチとか、新郎新婦に全く関係のない話が延々続くことを予想していたのが、うれしいことに予想ははずれた。始めのうちに元総理大臣が挨拶を済ますと、あとは余計なスピーチもパフォーマンスもなくて、テーブルに同席した人たちとゆっくりお話とお食事が出来るよう配慮されていた。食事は本当に美味しかったけれど、帝国ホテル一番のお勧めのローストビーフはあまりにもコクがありすぎて、粗食に馴れた舌には負担が大きすぎた。口に入れるととろけるような食感は逸品と言えるのだが、もういけません。半分以上残してしまった。恨めしい、これ以上こんな上等なものは胃がうけつけない。涙を呑んでお皿を下げてもらった。デザートの頃に新郎とその友人たちが演奏を始めた。彼らは慶応のワグネルソサエティーの卒業生で私の元生徒も交えて弦楽合奏を披露した。慶応のオーケストラは実に上手い。そのなかでも新郎はソリストとしてブルッフのコンチェルトを弾いたくらいの腕前を持っている。先日美里さんから昔の写真をもらった。それは新郎が赤ちゃんの時に私が抱っこしているもの。その赤ちゃんがこんなに立派になって警視庁のサツ周りをする新聞記者として活躍している。新婦はJRの幹部候補生として現場研修の最中で、なんと中央線の女性運転手をしているそうだ。一度その勇姿を見てみたい。和気あいあいのうちにお開きとなって、ほのぼのとした気分で帰ってきた。大騒ぎだった私のドレスも、今日のためにがべさんというアクセサリー製作者に作ってもらったネックレスも大好評。周囲のいわゆるフォーマルドレスの美しいけれど没個性的な中で、森英恵のドレスをちょん切ったものと、安いけれどオリジナルのアクセサリーで、してやったりだね。

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