2020年4月22日水曜日

会話

野良猫に餌をやって部屋に戻ろうと階段を登りかけたところで、ドア越しに電話の呼出音が鳴っているが聞こえた。
急いで階段をできる限りの速さで駆け上がった。
電話の着信音は4回鳴るとFAXに切り替わってしまうから、1,2,3,4と数えながら受話器を上げた。
ハアハア息切れがする。

最近かかってくる電話の殆どは、お墓、保険、不用品引取と言いながら色々持っていってしまう詐欺まがいのものなど。
友人たちはたいてい携帯にかけてくるけれど、長年電話で仕事を受けていた習性で、どうしても間に合うように出てしまう。
ぐっすり眠っているときですら、最初の呼び出し音で目を覚まし、ベッドから起き上がり、室内履きを履いてヨロヨロと自分の部屋を出て4回目でもしもし。
家が狭いから可能だけれど、もう少し広かったらできない技。

セコムの安全確認装置を留守設定にしないで寝てしまうと、12時間で孤独死の可能性ということで、確認の電話がかかってくる。
レッスン室のほうを留守設定に切り替えるのをしょっちゅう忘れて寝てしまうので、夜明けに電話がかかってくる。
最近連日やってしまった。
そのたびに平謝りしている。
これでは本当に突然死したときにも、又あの人がと思われてしまう可能性があるけれど、毎回かならずかけてくるのでまだ見放されてはいないらしい。

今日もなんの電話かはわからないけれど、階段を登ってドアを開けてやっと間に合ったら友人からの電話だった。
私の友人たちは必ず、今話しができるかどうかと訊いてくれる。
大丈夫と言ってもテキパキと用件を言って、無駄話はしない。
それは普段なら助かるのだけれど、コロナ孤独の毎日、人と話すのはめったになくなっている。
自宅の近所に姉が住んでいるけれど、このところ一緒に買物に行ったり話をしたりも自粛中。
久しぶりに人間と会話ができる!と喜んだけれど、いつもの通り簡潔な内容で終わった。
少し話を引き伸ばしても乗ってこないで電話は切れてしまった。
ああ、たまには無駄口叩きたい。
ダジャレを言いたい。

だからと言ってこちらから電話するのは遠慮してしまう。
やはり長年の友人たちとの関係で、電話は簡潔にが染み付いているから。
今練習中だったら悪いからなどと気を使う。
電話はかけるタイミングがわからないから、最近は殆どメールになってしまう。
私はぼんやりだから、メールのチェックを怠って返信が遅れることが多い。

レッスンは中止、新しく入門予定の生徒もこの騒ぎが終わったら来るということで様子見。
顎の筋肉が衰えないように、テレビを見ているときと運転しているときには、たいていガムを噛んでいる。
近所の子供達が一斉に消えた。
二世帯住宅の家族は、奥さんと若奥さんが消えて、1階も2階も旦那様だけ。
反対側の家のお孫さんたちも居ない。
コロナ休日の最初の頃には家の外に出て大騒ぎで遊んでいたのに、今はひっそりとしている。
大きな車で出かけるのを見たので、奥さんの実家に避難してしまったらしい。
所在無げに植木に水をやっているご主人とお婿さん。

ご主人はいつも社交的で近所の人に愛想よく話しかけていたのに、最近はつまらなそうに
家の中に入ってしまう。
道端で捕まると延々と話を聞かされたのに、今はそれができない。
電気設備点検に来た人も、手袋越しに点検済の紙を渡してそそくさと帰っていった。
猫が居てくれてよかった。

明日、夏のコンサート用に注文してあった楽譜が届く。
それはもう楽しみで小躍りしたくなる。
私は新しい曲の譜読みが大好き。
こんなときにやることがあってよかった。
待ち遠しい。

北軽井沢はフィンランドに似ているという人が多いので、シベリウス作品のプログラムにしようと思った。
曲数があまりないと言うけれど、調べたら何曲か興味を引かれたので楽譜を取り寄せてみた。
主にピアノ曲、他にはヴァイオリン用、ヴァイオリン・ヴィオラ用、ヴァイオリンとチェロ用、弦楽四重奏用など、早く弾いてみたい。
せめてこのくらい楽しみが無いと、コロナ鬱になりそう。












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