2020年4月3日金曜日

コロナ怖くて花粉症治る

私の実際の誕生月は4月。
戸籍上では3月生まれになっている。
これは私の孟母の陰謀だった。
4月初めの生まれなら3月末の生まれということにしてしまえば、数日の差で小学校に1年早く入れる。
私が生まれた時点で思いつけばよかったのだけれど、学齢近くなってから実行されたので、相当揉めたみたい。
1日2日の違いで、入学が早まれば助かる。
うちにゴロゴロ6人も子供がいて、早く全員学校に入れたい。
親の自由な時間が増える。

いくら戦後のどさくさとは言え全く乱暴な話で、私が晴れて小学一年生となるには紆余曲折があったようだけれど、母は卑弥呼様だから逆らう人はいなかったようだ。
それでも私が1年生のつもりで入学式に行ったら、私の椅子がなかったらしい。
私はまんまと入学したけれど、次の年にも入学案内が届いたらしい。
なんとなく揉めているのは子供ながらに覚えている。
それでも私は我関せずで、兄姉全員が通った学校は自宅のようなものだった。
今なら戸籍を変えるには裁判しなければならないと思う。
当時だって簡単に戸籍を変えられるわけがない。
一体どうやったのか訊いてみたいけれど、母はとっくにお釈迦様のところへ行ってしまった。

それで私の本当の誕生月は4月で、誕生日の頃は桜の花盛り。
素敵な誕生日を迎えられると思いきや、毎年熱を出して寝込んでいた。
まだ花粉症が世の中に知られていなかった頃には、春になるとなぜこんなに具合が悪くなるのか訝しく思った。
今年はとんでもない疫病が流行って、憂鬱なニュースが連日報道されている。
ところが、そのお陰と言ってはなんだけど、今年は風邪をひかない、気管支炎が治るという副産物があった。

去年の暮、風邪の後遺症で咳だけが残った。
毎年のことだけれど、1月にスキーに行くつもりだから、何時までも咳が続いては困る。
珍しく病院へ行く気になった。
健康診断も何年も飛ばすくらいだから、めったに病院へはいかない。
それで私にはホームドクターがいない。
ネットで調べると、隣の街に良さそうな呼吸器内科医院を発見。
私は幼少時は虚弱児だったけれど、長じてからはかなり無理がきくようになった。
少しくらい熱があっても「気合だあ!」と動いているうちに治ってしまう。
けれど、咳だけはどうしようもなかった。
その病院に行くと咳喘息の診断が出て、ステロイドの吸引で治すことになった。
お陰で咳はもう殆ど出ない。

初めて咳に悩まされない冬を送ることができた。
そこへコロナウイルスが猖獗を極めはじめた。
本当に良いタイミングで治療ができたのだ。
しかも手洗い、うがいを今までになく丁寧にしたお陰で、風邪もひかない、花粉症も軽減、春にこんなに体調が良いことは珍しい。

世の中のイベントが中止されると暇になる。
コンサートにも映画にも行けない。
家でちゃんと料理をする。
バランスのとれた献立になる。
毎日公園への散歩をするので、足の筋肉が増えた。
お陰で足首の痛みも軽減。

「人間万事塞翁が馬」「禍福はあざなえる縄のごとし」
昔の人はうまいことを言ったものだ。

歌舞伎座近くの老舗のお弁当屋さんが廃業に追い込まれたと、今朝のニュース。
一方では生産が間に合わないほどの業界もあると思う。
どんな時でも、運、不運は隣り合わせ。
私達の業界は一番割を食う業種で、今、フリーのミュージシャンはどうしているのだろうか。
それでも好きで入ったこの世界で働けるのは、幸せだと考える人が多いのではないか。

私は暇な今、ベートーヴェンの5番・9番・10番のソナタを練習している。
公演の当てがないから、じっくりゆっくり。
今まで殆ど弾いたことがない10番のソナタに魅了されている。
このプログラムで公演予定だった人たちがいて、コンサート目前で中止になった。
そこに付け入るnekotama。
せっかく練習したのだから私に遊びで弾かせて頂戴。
ピアニストにお願いして合わせだけしてもらうことになった。

その前に本人たちの練習を聴かせてもらった。
若手の男性ヴァイオリニストは並々ならぬ実力で、バリバリと3曲、全く休憩無しで弾いていく。
途中で息切れすることもなく、最後まで完璧な音。
この大曲を弾いてケロッとしていられる並外れた体力、集中力には恐れ入った。

彼と話をしていくうちに、意外な人脈の連鎖を発見。
有名なヴァイオリニストのお弟子さんだった。
私はその方の先生とは10年間一緒に弾いていた。
こんなひどい時期に、それでもなお新たな楽しみが発見できるなんて。

普通の人なら、そんな上手いヴァイオリニストの相棒に合わせをお願いするほど図々しくできない。
でもこのチャンスを逃す手はない。
相手はコンサート目前だったから十分弾き込んでいる。
それに便乗すればなにか新しい発見があるかもしれない。
この図々しさが私の経験の源なのだ。
物おじしないと言うか命知らずと言うか恥知らずと言うか・・・
遊びはもう少しあとになりそうだけど。

命は惜しいから、コロナには臆病、お陰で花粉症も無事、喘息も治った。




































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