2010年4月21日水曜日

オーケストラ裏話その1 ゆっくり弾くのは難しい

電車で某オーケストラの若いヴァイオリニストに出会った。 「昨日新世界やったんですよ」「そう」「2楽章で震えちゃいました。僕のまわり皆震えてました。」「恐いからね」    彼は日本のトップクラスのオケマン。それが、なぜ震えるかというと、オーケストラ内の重圧というのは大変なもので、ステージ上のプレーヤーに心電図計をつけてみると、パイロットが離着陸時に感じると同じ位のプレッシャーが、読み取れるそうだ。しかも、それが本番中続くという。「新世界」はいまどきの優秀な若手にとって、技術的には難しくないはず。それが集団の中で、周囲の圧力、管楽器からの視線と、観客の視線にさらされると、押しつぶされそうになる。特にゆっくりな楽章がいけません。弓がいつもはおとなしく弦の上に納まっているのに、なぜか、バウンドしはじめる。そうなると、もうお終い。一人ならなんとかなるのだが、大勢の中でそうなると、どうしようもない。  あるベテランチェリストがコンサートが終了したときに、ため息混じりに言ったのは「ああ、震えちゃったよ。これで後3ヶ月はだめだな」  一度震えると今度は、又震えるのではないかと恐怖にかられる。   以前テレビで能役者のドキュメントを、放送したことがある。 心電計をつけてみると、早い舞の時は比較的平静なのに、遅い舞の時は、心拍数がはねあがった。ビックリしたが、よくわかる。その過度の緊張が、さまざまな悲喜劇を生み出すはなしは、またいつか。

2 件のコメント:

  1. その瞬間、まさに「音が苦」
    音を楽しめていない自分が恥ずかしくなります
    経験はないのですが、大勢の中では大変なんでしょうね。。。

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  2. 「音が苦」がないと音楽に到達できないところが、おもしろいところ。じたばたしている自分を見ている自分は、大笑いしているのです。いつも冷たく自分を見ている、あの嫌な奴は何なのでしょうね。

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