2011年10月15日土曜日
アマデウス
ウイーンフィルメンバーによるチャリティーコンサートを聴きに行った。勝どきの第一生命ホール。プログラムは全部モーツァルト。カルテットで「狩り」「プロイセン王」クラリネットを加えて「クラリネット五重奏」モーツァルトだけのプログラムなんて幸せこの上ない。いつも前半ぐっすり寝てしまうはずの私が、しっかりと起きて耳を澄ました。初めの音から、それはウイーンの音以外の何物でもない。なぜこんないい音なのだろうか。世界中でもウイーンの音はずば抜けている。会場の第一生命ホールは、できたときに内覧会で見せてもらった。このホールはステージも客席もいいけれど、楽屋が素晴らしい。この楽屋を使うだけのために、このホールを借りたいと思うくらい。ただ、地の利が良くない。どこの駅からも歩くには遠すぎる。大江戸線勝どき駅で降りると海風が感じられてそれはなかなかいいけれど、動く歩道を使っても優に10分強。雨が降ったら少し憂鬱だと思う。それはともかく、これぞモーツァルトという演奏に酔いしれての前半、しかし、クラリネットが入ると、どうしても思い出すことがある。今、私の大事な友人ががんに侵され苦しんでいる。彼女は美しいクラリネット吹き。乳がんの手術の時にクラリネットが吹けなくなるのは嫌だと言って、転移しているリンパ節をとるのを拒んだ。数年前から骨に転移し痛みに苦しみながら、それでも私たちと東欧やエジプトに旅行して楽しく過ごしていた。なにかを始めようというときにはいつも私に協力を求めてくる。私もズケズケものを言いながら、なんでも協力を惜しまなかった。一時は大ゲンカをして周りをハラハラさせたこともあったけれど、彼女の病気が進行してから私は一切文句を言わず、すべて彼女の思いを実現させるべく奔走していた。しかし、今病気に打ち勝つべく療養に専念している、その人のことが脳裏から離れない。クラリネットを聞いてハラハラ涙をこぼしてしまった。願わくばアマデウス、あの人をあなたの音楽で包んでほしい。この音を彼女のもとに届けてほしい。少しでも痛みや苦しみがやわらぐように。
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