2015年4月12日日曜日

イザイ ソロソナタ

ベルギーの名ヴァイオリニスト、作曲家のイザイが残した6曲のソロソナタ。
その中でも好きなのは、バラードと名付けられたファンタジックな3番のソナタ。
初めてこの曲を聴いたのは確か、オイストラフの演奏だった。
今まで聴いたどんな曲とも違う。

ツィンマーマンは、この曲を10才の時から弾いているという。
しかもそれは、究極であるバッハの無伴奏ソナタを弾くための前哨戦だというのだから、その天才ぶりに驚いた。
それに遅れること数十年、私もある時やっとこの曲を弾こうと思った。
楽譜だけはオイストラッフを聞いた時に、すぐ手に入れた。
積ん読ならぬ積ん奏で、ずっとピアノの蓋にへばりついて出番を待っている。
時々悲しそうにこちらを見て「まだ?」と言う。
わかったわかった、その内にね。

初めて楽譜を見たときに、これは本当に弾けるのかしらと思ったくらい、複雑で左手の指の使い方がわからなかった。
しかし根気よく譜読みをしていくと、面白いように形が浮かび上がってくる。
せっかく譜読みをしたので、まずは友人のお弟子さん達の発表会で弾かせてもらった。
こういう時に、お弟子さん達に混じって勉強させてもらえるのは、友人のお陰。

当時小学生だった私の生徒が聴いて、すごく変な曲だという印象だったらしい。
母親と一緒に「変わった曲ですね」なんてニヤニヤしている。
弾き終わって楽屋に引き上げたら、出待ちの友人のお弟子さんたちからは「素敵な曲ですね」と持ち上げられた。
決して演奏が良かったと言われたわけではないけれど、曲が素敵だとわかってもらえただけでも嬉しい。
友人のお弟子さん達といっても、殆どが音大出てプロとなっている人達だから、曲の良し悪しがわかる。

その後、その生徒のお母さんから「先生の演奏の録音を何回も聴いているうちに、とても良い曲だというのが分かりました」
「ほらごらん。すごく素敵でしょう。いまに貴女も弾きなさいね」と生徒に言っていたら、今や大学院生となった彼女は私よりも上手くなってしまって、たぶん易々と弾いてのけるのではないかと思う。
まだ彼女がその曲を弾いたという報告は受けていないけれど。

最近、フォーレの「ソナタ」を練習していて疲れたから、気分転換にイザイの楽譜を取り出して弾き始めた。
こういうスッタモンダして譜読みをするのが私は好きで、普段の不精が嘘のように夢中になる。

左手の指は4本しか使えないのに、音は6つ。
さてどうしたものか。
謎解きが面白い。
でも、ちゃんと表紙の裏に、取説が付いている。
ふだん器械類の取説は拒絶反応なのに、楽譜の時はいそいそと読めるのが不思議。
フランス語なのが困るけど、だいたい音楽用語は似通っているから意味はなんとか通じる。

この曲をステージで弾く予定は今の所ないけれど、たぶんそのうちにと言うだけで終ってしまうと思う。
友人達に耳栓してもらって「弾く会」でご披露しようかと思っている。(その内にね)
それはもしかしたら、友人虐待に当たるかもしれない。
彼女たちが急病を装って、逃げ出さないように部屋に鍵をかけておかないと。










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