2015年7月23日木曜日

良い物は身につかない

ハリー・ポッターを原書で読み始めて、幾年月。
未だに5巻の辺りをうろうろしている。
先生はイギリス人のヴァイオリニスト、ルースさん。
先日ハリー・ポッター講読のレッスンの日、その日はルースさんが私の教室に来てくれる約束だったけれど、リハーサルが長引くので30分遅い時間に替えてほしいと連絡があった。
練習場所はサントリーホール。
練習が終って30分ほどで澁谷まで来られるけれど、それでは余計な時間が1時間以上浪費されてしまう。
それで私がそちらに行きましょうか?とメールすると彼女は喜んで、そうしてくれると助かるとのこと。

サントリーホールの近くにいくつかカフェがあるから、その一角で落ち着かないけれど、レッスンを受けようと考えた。
約束の時間よりも40分ほど遅れてルースさん到着。
そして近くのホテルのロビーに行きましょうと言う。
ホテルのロビーとは全く思いつかなかったけれど、良いかもしれない。

カフェを引き上げてホテルに向かう。
ルースさんは「練習の休憩時間に、ロビーでよく本を読む」と言うから、それはいいと喜んでいた。
初めの内は片隅のイスで静かに講読していたのだけれど、その内にドヤドヤと人が増え始めた。
言葉を聞いていると、どうやら中国人の団体さん。

私たちの様子を見れば、静かに本を朗読、それを聞いてだめ出しをしているネイティブがいれば、何をやっているのか分かりそうなものだけれど、全く気にもとめずに荷物をドカンと置く。
目の前でペチャクチャ。

大声で遠くの人と話す。
子供の甲高い声で叫ぶ。
お終いにはツアーコンダクターと思しき人が、大声で説明を始める。

そもそもこんな所でレッスンをしている私たちの方がいけないけれど、あまりの煩さに彼方此方移動して、ようやく潮が退くように大群はバスに乗り込んでいった。
やっと所定のページを消化した頃には、すっかり疲れ果てていた。
それでウッカリ、イスに帽子を置き忘れてきた。
電車の中でハッと気がついた。(ハットとかけたわけではありませんよ)

その時のガッカリ感といったら・・・
その帽子はつい先日、東京駅の「KITTE」での昼食会の時に買った物。
この夏、ずっと帽子を探していた。
中々気に入ったものがなくて、澁谷で間に合わせに買った帽子がまあまあだったので、それを愛用していた。

それでも非常に気に入っていたワケではなくて、いつも帽子売り場があると、良い帽子がないかと探していた。
先日の昼食会の後、バーゲンが始まった「KITTE」の中をぶらついていたら、パッと目に飛び込んできたのが、その帽子。
一目見て、色も形も素材もなにもかも気に入った。
手に取ってみると、しなやかで丈夫そうで、サイズもピッタリ。
その時点で決り!のはずだった。
値段を見ると、この値段の半額かあ、少し高いけどいいか、と思ったけれど、なんと、その値段がすでに半額になった値段だという。

と言うことは元値は表示された値段の2倍の値段だったワケで、たかが帽子にしては高すぎる。
それで、どうしようかと思ったけれど、私の手がその帽子を離さない。
私ではなくて、手がですね。
どうしても手から離れないので、仕方がなく代金を払ってしまった。
それでもかぶり心地の良さは抜群。
なんと心地よいことか。
鍔の広さも丁度良い。
ちょっと高かったけれど、買って良かった。
そう思っていたら、ホテルのロビーに忘れてしまうとは。

きっと、あの後誰かが持って行ってしまったと思う。
もしかしたら、さっきの中国の団体の誰かが、持って行ったかも。
すっかり気落ちして何度も諦めようとしたけれど、諦めきれない。
家に帰って試しにホテルに電話してみた。

帽子の特徴を説明、すると気の良さそうなホテルマンが「その帽子ならたぶん届けられていると思います」と言う。
小躍りするくらい嬉しかった。

私は物欲も金銭欲もあまりなく、あるのは食欲のみという単純人間なので、物を失くした時にはすぐに諦めてしまう。
ところが今回の帽子は、すっかり気に入っていたので、失くしたと思った時は本当に目の前が真っ暗だった。

ズーッと昔の話しだけれど・・・
未だに忘れられないお財布。
スエードのきれいなお財布を買った。
それはそれはきれいな緑色。
お金は大して入っていなかったけれど、そのお財布を日比谷公会堂の楽屋で盗まれた。
私が財布のことを嘆いていたら、口の悪い人から「あなたは、良い物は身につかないのよ」と言われた。
人がガッカリしているのに、なんてことを言うのかと憤慨しながらも、本当に私はそうだなあと妙に感心した。

それからも身分不相応の物を買うと、たいてい失くす。
やはり言われたことは正しかったのだと思っている。
ブランド物などは、持つべき人が持てば良いけれど、そこまでのステイタスのない人が持つと、せっかくの本物が偽物に見えてしまう。
帽子はそれほど高級品ではないので、出てきてくれたのかな。

ホテルに行って帽子を受け取ってきた。
明日からの、志賀高原の日差しを遮ってもらわねば。
志賀高原で万一風に飛ばされでもしたら、どうしよう。




































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