今日やってきたのは以前教えていた女性。
私が13年前にリサイタルをした時に聴きに来て、それ以来会うことはなかった。
つい数日前、電話がかかってきた。
明るい声で「Fです」と名乗る。
声ですぐに分かった。
最近は年賀状のやり取りのみの付き合いだったが、元気にしていると思っていた。
ある時結婚式の素敵な写真付きの年賀状。
まあ、綺麗!
でも、電話でしばらく話していたら「私離婚しました」
そうなんだ、なにが彼女にあったのか。
口調はどうも嬉しそうで、どういう経緯かは知らないが、めでたく離婚?
男性が、パワハラ、モラハラ、マザコン。
女性も自立してきたから、わりと簡単に離婚が出来る世の中になった。
昼過ぎニコニコと現れたのは、ほんの少し大人っぽくなった彼女。
一別以来、ほとんど年をとっていないような雰囲気で。
教えていた頃はまだ高校生だったからお嬢さんだったけれど、今はキャリアウーマン。
小顔で、スラリとした手足。
ヴァイオリンを背負ってきた。
よし、今日は一緒に飲もう!
ちょっとしたツマミを用意しておいたので、ワインを開けて乾杯!
タコとかぼちゃ、大根のカルパッチョ風。
スモークサーモン、生ハム、玉ねぎ、柿の前菜。
ローストビーフと生野菜。
アボカドとクリームチーズのペーストにナッツをトッピング。
去年の11月に解禁のボジョレーヌーボー。
甘いワインが好きというのでドイツの白ワイン。
ゴマとレーズンのパン2種。
冷蔵庫にあるものを寄せ集めたらこうなった。
飲みながら話していると、彼女が高校の文化祭で弦楽アンサンブルの指揮をしたことに及んだ。
Fさんともう一人、彼女の同級生のKさんにヴァイオリンを教えていた。
KさんはFさんより大柄で、目がぱっちりとしたひときわ目立つ美人だった。
それに比べてFさんは、美人ではあるけれど、ほっそりとして地味な感じ。
2人とも文化祭の花形で、交代で指揮をした。
その日私は彼女たちの高校へ行って、二人の登場ををワクワクしながら待っていた。
意外なことに、近くで見ると断然Kさんの方が目立つのに、ステージで見るFさんはそれ以上に輝いていた。
細身の彼女が大きく見えた。
私はテレビやステージの仕事が多かったので、こういう場面に度々遭遇している。
女優Nさんはカメラテストの時の素顔はなんとも生気がないのに、レンズを通すとすごくきれいなのに驚いたことがあった。
越路吹雪さんがリハーサルのときと本番では、まるで別人だったことも体験している。
華のある人というのは内部から光を放つものだと思った。
姿とか顔だけでなく、全身から発するエネルギーがオーラとなって見る人を魅了する。
Fさんのヴァイオリンは随分使っていなかったわりには、綺麗に保存されていた。
ただ最近の乾燥で弦を巻く糸巻きが緩んでしまって、音が下がる。
調弦が難しいので専門家の手入れが必要。
楽器を持ってきて「離婚したので、これからは自分の好きなことをします」と言うから又ヴァイオリンを弾いてくれるかと期待している。
教える側からすれば、せっかくこんな魅力的な楽器に出会ったのだから、生涯どんな形でもいいから弾き続けてほしいと願う。
0 件のコメント:
コメントを投稿