近隣の街に所用があって商店街を歩いていた。
少し歩き疲れたので本屋で立ち読みしたりして足を休めていた。
ちょうど昼ごはんの時間、よく流行っているラーメン屋にでも寄ろうか。
覗いてみると中々の盛況で椅子が空いていないから諦めた。
そして見つけたのはなにを売るのかよくわからない店。
OWL TEAと書いてある。
漢字で耳猫鷹茶店(文字の順番が違うかも)
はい?この家はなに。
紅茶の販売か飲ませるのか、中を覗いてみた。
ガランとしたスペース。
コンクリートの床が寒々しく広がっていて、その広さに合わないテーブルと椅子の数。
店の真ん中が大きく空いている。
隅っこに二つのテーブルセット、そこに女子高生らしい二人連れが居るだけ。
入っていっても誰も出迎えがない。
いったい・・・
OWLはハリー・ポッターによく出てくる単語だからよくわかる。
訳すとフクロウ。
するとここがよく聞くフクロウ喫茶なのかしら。
でもフクロウらしい鳥は見当たらない。
壁にフクロウだかミミズクだかのデッサンが数枚、額に入って飾られているだけ。
耳猫鷹って、フクロウではなくてミミズクでは?
わけが分からないでカウンターに行って中を覗く。
このカウンターがやたらと高くて、私は首から上が出るだけ。
相手から見たら生首が置いてあるように見えそう。
カウンターにメニューが置いてあっても見えないくらい。
しばらくすると奥からきれいな女性が顔を出した。
ここはフクロウ喫茶じゃないの?
最初の質問をすると、ふくろう?なに?と返ってきた。
発音で外国人だということがわかった。
それから後はちんぷんかんぷん。
お互いに相手の言うことがわからない。
雇われ店員が外国人でも、普通は店長らしき人で日本語のわかる人がいるものなのだが。
見回すと他にそのような人もなく、結局ここにフクロウはいないこと、飲み物にはタピオカが入ってないから頼まないといけないことだけはわかった。
タピオカは興味ないから飲み物だけ頼んで、椅子に腰掛けた。
店内を見回すと、店の中央はおおらかに空いている。
店の面積に対して、テーブル数が少なすぎる。
買うだけの余裕がなかったのか、それともこれから発展していくのか。
やっと飲み物が届いた。
店員さんは太いストローで飲み物の蓋を突き刺そうと努力するのだが、刺さらない。
何回もやってようやく通る。
それにしても太すぎるストローで、ありったけの力で吸い上げないと液体が登ってこない。
そうか、ここはタピオカのお店なんだ。
太いストローでようやく納得した。
ストローが太いので、穴を半分唇で塞ぐと吸う力が少なくて済むことを発見。
店員の名札を見ると、女性の名前は劉さん。
中国人?
大きなガランとしたお店を言葉のわからない人に任せて、商売ができるのかしら。
全く日本語がわからないようだし、これでは廃業まで時間の問題。
時々通る人が覗いていくけれど、誰も新しい客は入ってこない。
ここは最近めざましく発展している商店街の一角。
これだけの広さなら、さぞお家賃も高いと見た。
中国人の商売上手は世界的にも有名だから、いつかは超はやりの店になるかもしれない。
劉さんが早く日本語を話せるようになって、お客さんが一杯入るといいけれど、そうなると日本人の店には脅威だなあ。
私には数人の中国人の知人がいる。
みなさん、とても頭が良くて素敵な人達だけれど、考え方が日本人とは根本的に違う。
自分の利害に敏感で、手のひら返しも悪びれずにやる。
それが悪いことではないという価値観だから。
日本人は義理人情、自分のことは後回しで外に良い顔をみせる。
けれど他の国の人達は、まず自分。
根本的な考えの違いで、どちらが良いとか悪いとかの批判はできない。
お互いの利害が一致すれば、本当に仲良くできる。
一歩そこを外れるといきなり手のひらを返されるのさえ我慢できれば、素敵な隣人でいられる。
そんなことを考えながら座っているといきなりBGM。
なんと森進一の「おふくろさん」と来た。
いやいや、あのね、今の日本でおふくろさんはどうもね。
タピオカ、女子高生、ふくろう、おふくろさん・・・ミスマッチの連続に、この場にもっともミスマッチなオババは考えた。
中国人のおおらかさは世代も流行も3000年の時空を超えて、滔々と流れているのよ。
少し残念だけれど、文明発祥の国への尊敬は変わらない。
世代の差なんて良いじゃないの。
3000年に比べれば50年なんて短い短い。
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