2019年10月6日日曜日

ノンちゃんのバーベキュー

私が受け継いだノンちゃんの家は、北軽井沢の森の中。
庭の真ん中に大木が枝を広げ、この木がノンちゃんのお気に入りだった。
寝室は1階もロフトも寝ながらこの木が眺められるようになっている。
真夜中目が覚めて外を見ると、くろぐろと空いっぱいに枝が広がっていて、せっかくの星空が見えないくらい。
木の葉の隙間からかろうじて光るものを見つける。
もっともたいていお天気が悪くて晴れる日はあまりないから、枝がなくても星が見えることは少ない。
湿度が多いから塩などをちょっと外に出しておくと、すぐに固まってしまう。

そう聞くとジメジメしたいやな印象だけれど、そんな事はなくて、私がここを気に入ったのは心を洗われるような滴る緑。
窓から見えるのは木だけ。
柔らかい薄緑色の海の中に漂っているような印象の森に囲まれて、時の経つのを忘れる。

ノンちゃんは去年の夏、突然亡くなってしまった。
本当なら今年も一緒にこの木々を眺めているはずだったのに。
彼女はこの家を建てた時、親しい仲間たちと庭でバーベキューをしたいと思った。
最初にバーベキューをやったときは、まだ私達はもう少し若かった。
庭で大騒ぎして楽しく過ごしたけれど、ノンちゃんはその時にはかなり高齢だったから、1人では準備ができない。
それで毎年のように「私バーベキューをしたいの。nekotamaさんやってくれない?」と言い続けていた。
私もぜひやってあげたかったけれど、まだ仕事が忙しく、時々遊びに行ってもせいぜい2泊しかできない。
とても準備や後片付けはできない。
それで毎年引き伸ばしていた。

やっと時間の余裕ができたら、ノンちゃんはもういない。
孝行をしたいときに親はなし、とよく言うけれど本当のこと。

ノンちゃんがいなくなってからでは仕方がないけれど、私の気が済まないから皆さんに北軽井沢まで来てもらうことにした。
次の水曜日、仕事を休んだり忙しいのでとんぼ返りだったりの仲間たちが集まることになった。
よくまあ、こんなところまでようこそ。
バーベキューの道具はアマゾンで買った。
意外と安いのでよかった。

肉は評判の良いお店があるというので、そこで調達することに。
野菜はこの辺お手の物。
なんたって嬬恋のキャベツって有名でしょう。
お隣さんがおつまみの用意をしてくれるらしいので、お願いした。

当日は雪雀連の会長とお嬢さん、体調が良ければ奥様も一緒に見えるという。
東京からは数人が来てノンちゃんの家に泊まる。
布団足りるかなあ。
それよりも猫がパニックになりそう。
でも慣らさないといけない。
後はお天気が良いことを祈るのみ。

この家を人が集まる拠点にしたい。
志賀高原や草津方面にもすぐに行ける。
浅間は直ぐ側で大きく見える。
嬬恋のキャベツはおいしい。
水は絶え間なく溢れ流れている。
山なので天候の変動が激しいのは魅力でもあり、困ることでもある。

温泉が至るところにあるし、おしゃれなカフェもここ数年で増えてきた。
良いホテルもある。
軽井沢のようにセレブが集まるわけでは無いが、沢山の文化人がここを愛し住んでいる。
大学村もある。
最近はとんでもない気候変動があるけれど、浅間山の噴火以外の心配事はない。
もっとも、それが一番怖いかも!
気温が低く山はなだらかで崖崩れしそうもない。
山の上なので洪水の心配はサラサラない。

交通が不便な分、静けさと穏やかさがある。
良いところです。
田舎暮らしに憧れてではない。
体力もないのに畑仕事なんてできる?
虫も嫌いだし。
近所の直売所で、新鮮で安い野菜が買えるのに自分で働く必要はない。
澄んだ水と美味しい空気のために行くのだから。
人間に最も必要なものがここにはある。































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