2019年10月23日水曜日

食物の力

去年から今年にかけて色々あって食事をおろそかにしていた。
生活のリズムが乱れ、睡眠は気ままに、運動はほとんどしなくなった。
その結果はひどいものだった。

まず筋肉の衰えが顕著で足元がふらつく。
よく転ぶようになって、友人たちの心配のもととなった。
急激に髪の毛が白くなったらしい。
美容院でグレーに近い色にしてもらっても、2週間すると金髪になってしまう。
記憶は遥か彼方に飛んで行ってしまい、昨日聞いたことも覚えていない。
楽譜が読めなくなる。
ヴァイオリンが重く感じるようになって、30分も立っていられない。
その結果は腕の筋肉の痛みや、音が出なくなるなどのもはや末期的な症状となった。

引退の文字がどんどん大きくなった。
そうだよね、15年前にこれが最後と言って自主コンサートをやってから、ダラダラとこんな年まで弾いてきたのだから。
そろそろやめても誰にも叱られない。
もう良いよ、よくやったと褒めてもらいたいくらい。
誰もが私のやることを心配そうに見ている。
スーパーのレジさんから、見知らぬ電車の乗客まで。

少し重いものを持ったり財布からお金を取り出したりすると、本当に親切に扱われるから本当に年を取ったのだと思う。
特に足首の痛みがあるから歩くのをやめていたら、脳みそまで歩くのをやめたらしい。
食事は実に簡素で、作るのが面倒だからフリーズドライの食品を愛用。
結果、作る時間は大幅に短縮。
5分もあればお湯が沸いて食べられる。
5分もあれば食べ終わる。
食事の楽しさなんてこれっぽっちもなくなった。
それでも基礎的な栄養は摂れて、生きていける。

夏の異常な暑さが終わり涼しくなった。
北軽井沢の家の環境も整って、来年、猛暑が来ても乗り切れる準備はできた。
すべてが一段落したけれど、ヴァイオリンを弾く時間は相変わらず少ない。
集中力が続かない。
楽器を持って立っているだけで筋肉が疲れる。
ヴァイオリンを弾くのってこんなに大変でしたっけ?

涼しさとともに食事にたいする欲求がでてきた。
久しぶりで自分で調理して、料理の面白さを思い出す。
野菜も食べ始めると、かつて大好きだったことを思い出す。
果物を摂るようになった。
だんだん、食生活が改善されてきた。

それにつれて、ヴァイオリンを弾く時間が長くなった。
立っていても疲れない。
20分くらいしかもたなかった練習が40分、1時間、そして2時間。
やっとすべてのペースが戻ってきたらしい。
まだまだ油断は禁物。
歳のせいにしていた足のふらつきも、だいぶ良くなった。

食べ物の持つ力は偉大。
バカにしてはいけない、ちゃんととれば力になる。
摂食障害と睡眠障害がセットだった。
片方が改善されると、もう片方が喜ぶ。
今日は久しぶりに2時間の練習。
どうやら自分が戻ってきたようだ。
1年半もかかったうつ状態からの脱却。
鬱といっても元々陽気な性格だから、単に怠けたいのを病気に仕立てただけ。

それでも異常なだるさややる気の無さは、やはり病気一歩手前だったと思う。
今日は久しぶりにプログラム用の写真を撮りに行った。
以前撮ったそれ用のものは、髪の毛がベリーショートで黒く、今の私は大分様変わりしている。
ステージに出ていったら別人と思われそうなので。

今までは渋谷のスタジオで撮ってもらっていたけれど、なくなったらしい。
先日近くを通ったら、看板がなくなっていたから。
ネットで探していたら、なんと我が家からたったの3分くらいのところに写真館が見つかった。
予約をして指定の時間に入っていったら「七五三ですか?」と言われた・・・
というのは冗談。

以前買ったのに着られないドレスがある。
なぜかと言うと、細身過ぎてお腹が目立つ、着物のような袖で楽器を弾くには適さない。
それではなぜ買ったかと言うと、きれいなグレイッシュピンクの厚手の絹で、ドレープが素敵に出る。
これを着るには「多少」ダイエットが必要。
単に体重が減るだけでなく、お腹が引っ込まないといけない。
とすると永久に着られないのではと思って、クローゼットに吊るしっぱなし。

写真は上半身のみで楽器を持つとお腹は全く目立たない。
せめて写真の中だけでも着たい。
それに最近の私の髪色はほとんど金髪。
ピンクと髪の色がとても映える。
撮ってもらうとやはりドレスと髪の色がよく合う。
写真を撮っただけで、もうやる気が出てきた。
ほんの1ヶ月ほどの食事の改善は、生きる力とやる気を呼び覚ましてくれた。
着られないと思っていたドレスも、ここで役に立った。

























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