2020年8月5日水曜日

誤嚥

いつもアンサンブルで遊んでもらっている仲間と長電話。

いつもなら要件のみにて失礼!という間柄なのに、最近はとんと会えないからつい近況を愚痴ったり誰かの消息を聞いたりと、1時間30分にも及ぶ無駄話に花が咲いた。
コンバス奏者のHさんはオ-ケストラ~現在に至るまでのお付き合いでスキーの仲間でもあった。
彼女のスキーブーツが突然壊れて転ぶまでは。

志賀高原で私の後ろを滑っていた彼女が、突然なんの前触れもなくばったりと倒れた。
急ブレーキが掛かったような具合で。
間もなくリフト乗り場という平坦な場所で、ベテランの彼女が転ぶわけはないのに。
見たらスキーブーツが見事に上下2つに別れていた。
素材の劣化で割れたらしい。

それほど古くなくてもヒーターの前に長時間晒したり、長年履いていなくて経年で劣化することもあるから、たまにこういうこともあるらしい。
そこで彼女はスキーから足を洗い、私は今度は彼女の娘さんと一緒に滑るという幸せを頂いている。

Hさんはコントラバス奏者として活躍をしていたけれど、ご主人が難病に罹ってその介護をするようになった。
それからの彼女は介護士の資格を取り、ご主人の介護や施設の入所者たちのお世話もするようになった。
傍で見ていても、本人が体を壊すのではと思うほどの働きぶりで、ご主人を無事に看取ったあと、そのまま音楽と介護の仕事と二足のわらじを履くことになって今に至っている。
考えてみると音楽と介護はどちらも人の体と心のケアという共通点で結ばれている。
介護ができる人は強い。
強い人は心豊かで優しい。
日本のコントラバス奏者ではまだ女性が少なかった頃、さっそうと男性に交じって演奏する姿はとてもハンサムだった。

2年前、私は疲労困憊して寝込んでしまった。
彼女に熱があるみたいと言ったら、突然我が家に乗り込んできて食料を冷蔵庫にぎっしりと詰め込んで、あっという間に帰っていった。
お粥などの喉越しの良いものやスポーツ飲料など体温計も付いてきて、それで私は1週間ほど買い物も行かず安穏と寝ていることができた。

ご主人の介護と子育て、その上自身の病気など様々な荒波を堂々と乗り切って、いつも明るく振る舞って回りに気を使わせないようにしている。
人を頼らない、飾らない人柄は誰からも敬愛されている。
それで彼女と他愛もない話をしていたときに、誤嚥の話になった。

最近私はよく誤嚥する。
昨日はさつま揚げを食べていた。
少し硬めのものなので特に気をつけてよく噛んでゆっくり飲み込んだ。
うまく飲み込んだと思ってホッとしたら、口の中に残っていた僅かな破片がスルリと気管支方面へ。
おいおい、そこは一方通行の出口だよと言う間もなく。
しまった!と思ったときにはすでにひどくむせ返っていた。

その話をしたら流石に専門家、喉の筋肉の鍛え方を教えてくれた。
パッという破裂音が誤嚥には有効なんだそうで、ぱ・た・か・ら・という音を何回もできるだけ早く言うのが有効らしい。
私も以前その話はテレビで聞いていたから、時々やっていた。
口は達者だから簡単に言えるけれど、最近はそれにも関わらず誤嚥が多い。
軽いものはしょっちゅう。

すると口が達者なのと喉の筋肉が強いのとは関係がないと見た。
たとえ新型コロナを逃れることができても、肺炎になる原因の多くは誤嚥らしい。
暇だからなんでもやってみよう。
幸い専門家の友人がいるので、わからないことは訊ける。
いつまでもスーパーばあちゃんでいるには、よく食べよく眠りよく運動して、そして今一番不足しているよく笑うこと、これが最良の薬なのだ。
最近あまり笑っていないことが誤嚥の原因かもしれない。

この頃はメールよりも電話で友人たちと話すことが多くなった。
これもおしゃべりがどれだけ喉の筋肉と心のケアになるかわかっているからのこと。
高齢者でも女性は見知らぬ人とでもすぐに話しが始められるけれど、男性は現役時代のプライドが邪魔して、おいそれと無駄話をすることができない。
現役なんて言うのは幻想だったと思えばいい。
何十年も生きてきて、スーパーの店員に威張り散らしている人を見ると、一体どんな生き方をしてきたものやらと情けない。
昨日も見ました、マスクをつけずにレジ付近で大声で喚いているおじいさんを。
家でも奥さんに威張り散らして嫌われているんでしょうね。
そういう人にHさんの爪の垢煎じて飲ませたい。
それより私が飲みたい。

おしゃべりは百薬の長なんて言いませんでしたっけ?



























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