2012年10月1日月曜日

レジス・パスキエ コンサート

トッパンホールにて。ピアノはリディア・ビジャーク ラヴェル「ソナタ(遺作)」 フランク「ソナタ」 エネスク「ソナタ(ルーマニア民族風)」 ラヴェル「ツィガーヌ」 しなやかな右手、軽々と動く左手。名人芸をこれでもかと聴かされて、あまりの音の素晴らしさにおどろかされた。レイチェル・コリー・ダルバのコンサートの時には名器ストラディバリウスの音に圧倒されたけれど、今回はグァルネリ・デル・ジェス。その音をなんと表現したらいいのだろうか。私には言葉もない。しかもダルバとの決定的な違いは円熟度。たぶんパスキエは彼女の2倍以上の年齢だと思うが、瑞々しさの上にも熟成された音楽は、心ゆくまでの豊潤な時を私たちに味あわせてくれた。めったにないほどの豊かさ(こういう表現を使っていいならば)この上なくセクシー。あまりの官能的な音に心が溶けてしまいそうだった。彼にとってヴァイオリンで表現できないものはなにもないのでは?すでに体の一部なってしまっているとしか思えないヴァイオリンからは、自由自在に音楽が輝き出てくる。近来味わった中でも最上のコンサートとなった。今日の音に恋をしてしまった私は、この呪縛から解き放たれるのはいつになるか。こんなに喜びを味あわせてくれたデル・ジェスに感謝!名器と名人が出会って初めて本来の音が出る。テクニックも音楽性も素晴らしいと思っていたダルバも、年月を経て熟成された音楽の重みにはやはり勝てない。とにかくうれしいひと時だった。

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